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マレーシア便り 原住民と縄文人

マレーシアの原住民オランアスリーの世界を探る

現代のクアラルンプール
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1.人類史から

マレーシアにはマレー人、中国人、インド人、韓国人が多い。しかし、彼らに先行して、原住民オランアスリーがいた。MM2Hでクアラルンプール滞在中の松川先生によると、彼らの起源は古く、アフリカで生まれた最初の人類が、チベット、ヒマラヤを境に、インドから海伝いにタイやカンボジア、ミャンマーを経由してマレー半島、インドネシア経由で、更にオーストラリアまで何万年もの旅を続けていく。その後、チベットの北を経由して、中国、シベリアを目指していたグループが、マレー半島にもやってきた。彼らが今のマレー人である。マレー人は原住民と共生しつつ、次第に新石器文化と新しい土器や青銅器によって、採集経済であった原住民を駆逐し、森に追いやり、又、海にいた部族は北のフィリピンや更に沖縄、そして、日本列島に渡り、2万年前の旧石器時代から新石器時代、又、縄文時代と縄文人の起源となったと見られる。氷河期には、シベリアやカムチャッカからも凍結した海を渡り、日本列島にやってきた部族もいた。縄文人はそのような北と南の原住民の結合した民族であり、後の弥生式土器をもたらした朝鮮半島からのグループより遥か以前に1万年に渡り栄えた縄文文化を形成したのであった。

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キャメロンハイランドでオランアスリーの土産物屋のおじさん。吹き矢を買えと勧められて買ってしまった。

2人類学


このあたりの歴史は遺跡の発掘より、分子生物学のDNA解析により推定され、中高生の歴史の教科書には出てこない。日本で黄河文明やインダス文明、メソポタミア、エジプトに先立ち縄文文化が1万年も続いていた。弥生式土器や青銅器に代表される時代は中国では紀元前三千年、日本では1400年ほどである。現代の日本人は周囲の世界から渡来した部族や人々の子孫である。オランアスリーのDNAも日本人には入っている。特にボルネオの彼らの中に、日本人にそっくの人相の人がいるのは驚き。彼らはマレー人より日本人に似ている。

北のアイヌや南の熊襲は大和朝廷が日本を形成する時代まで、弥生式土器時代の日本人と緊張が続いていた。日本の神話はその歴史を物語るし、神社の由来にも残されている。

縄文時代は文字の無い文化で遺跡の発掘以外にはその様相は解析出来ない。かつて、アイヌの神話ユーカリが研究されたが、日本では残念ながら、原住民の世界への関心は低い。しかし、一方で、マレー半島やボルネオの原住民の世界から石器時代の生活を想定出来る。

オランアスリーの仮面
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コタキナバルの民族村でオランアスリーの女性と

縄文人は竪穴式建物に生活していたが、マレーシアの原住民は森の材木や竹で高床式住居を、又、食器を作り、縄文人同様循環形の環境に適応した生活を送っていた。彼らの生活は身近な素材を基盤に彼らなりの発展した文化やコミュニティを築いていたことが容易に推測できるのだ。当時の自然に適応して暮らしていた。工業化社会の我々も一種の環境適応の結果であって、もちろん技術の差はあり、社会の発展や文字による文化的恩恵がある。しかし、いったん孤島や森に放り込まれたら彼らのような知恵も創造力も発揮出来ない。火すら起こせない。彼らの生活は途中、13世紀に中国の膨張の影響で青銅器や鉄器が入ってきたが、それ以外は縄文時代と変わらない生活を今に至るまで伝えてきた。彼らによって縄文時代の生活が類推できる。オーストラリアのアボリジニにはもっと古い旧石器時代の生活が残されていると思われる。


.今回の旅行で学んだこと


クアラルンプールのメソジスト教会
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コタキナバルの聖ミカエルカトリック教会
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(1)オランアスリー

今回のマレーシア旅行でマレーシアの山岳部族の生活、ボルネオの4部族のオランアスリーの生活に触れることが出来た。クアラルンプールのオランアスリー博物館、コタキナバルのMari Mari cultural vijlage によって、日本人の我々もオランアスリーを知ることが出来た。

今の政府が彼らの姿を保存し、生活の支援まで行っているのに感銘を受けたが、彼らなりの理由がある。マレーシアやインドネシアではかつて、共産党が彼らを支配し、ゲリラなどを構成し、更に都市部を支配しようとした。世界を知らない山岳民族をゲリラ化し、彼らにユートピアを語り騙すのである。マレーシアもインドネシアもそれを阻止すべく、原住民の共産主義を徹底的に排除、また、イスラム化やキリスト教もそれを支えて、今やマレーシアもインドネシアもアジアの資本主義社会の先進国となり、日本さえ凌駕しようと意気込んでいるのである。


オランアスリーの生活実演で驚きだったのは、彼らの火を起す技術だ。竹の表面に切り込みを入れて竹の棒で擦るだけで1分もしないうちに火を起す。竹の表皮を糸状に削り、綿状にした発火物に火種を作り、息を吹くと擦り落ちた火の粉にから一気に燃え上がる。これを見ると、日本の教科書やテレビのアウトドア番組のサバイバルシーンの火起こしを縄文人が行なっていたとは到底思えない。日常の生活では、もっと簡単に火を起すのだと思う。

オランアスリーの文化はイスラム化とキリスト教によって破壊された。マレー半島では彼らはイスラム教に改宗された。政府は彼らに金をばら撒き、イスラム教徒として住民登録させ、住宅を与えて定住させる。マレーシアではイスラム教徒は一旦ムスリムになると改宗出来ない。改宗した連中には今までの生活を急に変えることを強制しない。ところが、2代目には学校教育を通じて徹底的にイスラムの規則を教え込み、家庭の中でイスラム化を進める。彼らは本来、精霊信仰なのだが、今や彼らの儀式や精霊を崇拝した生活は消えつつある。キリスト教もオランアスリーへの布教は熱心で、特にサバ、サラワクでは教会も多い。キナバル山に行く途中、カトリック教会の看板が実にたくさんあり、こんな山奥に何故かと思ってしまう。カトリックは医療や学校により、彼らの子供達を教化する。精霊信仰はジャングルの中で病気になったり、死んだり、男女の関係に浸透し、それなりに生活の困難を解決してきた。しかし、医療においても人間関係においても不自由な部分をキリスト教会は圧倒的な力で解決する。彼らは山奥で野ブタを食べなければ生きにくいが、豚がタブーなイスラム教とは違って自由だから、親しみやすい。それを狙ってカトリックは熱心に布教する。政府も共産化するよりもましだから、宗教自由の原則で黙認しているのです。かくして、精霊信仰はどんどん廃れ、それを支えたオランアスリーの芸術である仮面などは古道具屋で売られている。欧米の好事家が高く買うので5万円から数十万円で取り引きされている。


(2)マレーシアの移民政策


マレーシアは多民族国家。移民の流入には神経を尖らせる。日本人にはMM2H政策で金を目当てに寛容だが、インドやミャンマーからの難民受け入れには厳しい。近年、ロヒンギャ族の難民問題には彼らを攻撃したミャンマー政府に世論も同情的だ。

世界は困難に直面したロヒンギャ族に同情的、何とか元に戻そうと国連も問題視している。しかし、アジア諸国は彼らには冷ややかだ。ロヒンギャ族も何故か戻る様子が無い。 それは彼らの歴史から来ている。彼らはイギリスが東南アジアを統治するには社会を不安定にする必要があると陰謀を企て、ベンガル地方の最低生活をしているロヒンギャ族をミャンマーに送り込み、泥棒などの犯罪行為を引き起こし、英国無くては治安が保てない社会構造を作った。日本の江戸時代の部落や非人問題よりもっと酷いことを企てた末の部族がロヒンギャ族なのである。そんなことは知らず、泥棒やテロに走る彼らを取り締まった警察署を焼き討ちにしたロヒンギャ族への怨みが今日の問題を起こしているのです。マレーシアではこれが通説となっており、自分は彼らの言い分を聞くしかなかった。





by katoujun2549 | 2018-09-10 00:10 | Comments(0)