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一橋大学の地方創生シンポジウムに出席して

   大学の学び
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 昨日(4月12日)母校一橋大学の新潟での地方創生シンポジウムに参加しました。先は地方創生のためには官、民、政が自分の役割をきちんと果たすことが大前提です。地方創生における政府の構想と対応、地域計画の課題に関する辻副学長の講演がありました。少子高齢化がすすみ、増田レポートで示された人口減少コミュニティの実態に関して、完全な人口消滅コミュニティは少なく、高齢者が残留することが福祉や社会保障の非効率化を生むこと、また、新潟の耕作放棄地の実態と都市計画に関して説明がありました。高齢化した限界集落の集約化には税制と都市計画が連携して初めて新しい社会と都市が生まれる。増田氏は地方都市と東京区部との連携や、二地域居住への環境整備を訴えている。しかし、中国ならまだしも日本ではこれは難しいのではないだろうか。
 また、如水会の会長である住友電工社長の松本正義氏(関西経団連副会長)、蓼沼学長からは一橋大学の教育方針の説明を受けました。松本氏は道州制の問題から、関西経済圏の活性化、さらにはそこにおける人材、変化に対応できる異端者であれ、また、柔軟な思考力を持った人材を育成すべし、といった経営者としての見識を感じさせてくれるものでした。
地方活性化のためには、一極集中になっている首都圏からの本社や工場移転が伴わなければ、掛け声ばかりになるでしょう。地方単独では無理なのです。受け皿になる地方も、人材育成、街づくりをきちんと整えねばなりません。人と企業の移転には住宅税制、法人税に配慮をすることが国の仕事だと思います。 「今回、ひと・まち・しごと」というコンセプトは過去の失敗を踏まえ、良いアイデアだと思う。大学も生き残りをかけてCOCに取り組んでいます。
 一橋大学としては新潟からも多くの学生を迎えたいということで、高校にもPRされたようです。一橋大学は将来のビジネスリーダーを育成するという基本方針をもとに、様々なプログラムが組まれているようで、まことに素晴らしい内容と思いましたが、留学制度や語学、また、学生にビジネスの基礎知識を教育する充実した仕組みに驚きました。でも、自分が大学生のときと比べ、今の学生は大変だなあという印象でした。もっとも、現役学生でも大学の期待どおりにプログラムに乗る学生だけではなく、エンジョイ派、部活派など多様なライフスタイルが一橋にもあって、それなりに自由な学生生活を満喫しているはずです。そこで培った友人と卒業後にさらに勉学にいそしむ層もあるだろう。それらを無視して、一橋の自由な校風にふれずに、がり勉のアカデミズムを強く押し出しても今の学生には受けない。大学も基本的な人間形成をどのように達成するかを学びにおいても組み込んだプログラムが無ければ社会における評価も魅力は半減するでしょう。優秀でも挨拶ひとつ出来ない、人を人とも思わない傲慢な人間を生むことは害となる。エリートほど謙虚であるべきで、豊かな人間性が求められます。一橋の良さは自分の時代は学生数も学年800人ほどでした。ゼミの教官やクラス担任などと知り合ったり、酒を酌み交わす機会も多かった。先生方の学生へのまなざしも温かく、そこがすばらしい雰囲気だったことを思い起こした。如水会を軸とした先輩との交流も多く、部活などで先輩からご指導を受けたし、国立大学として珍しい校風であった。大学の学びの良さはまさにそこにあるのではないだろうか。 
  新潟に来て3年、地域の高校の進学指導教員、若者の心情に触れることが多い今日、高校の受験事情もわかってきた自分としては今回の一橋のPRが新潟の学生にアピールする内容かどうか、心配になった。新潟県の学生は、実学志向が強いが、リーダーシップということにはあまり関心が無く、職人的なプロフェッショナルを志向する印象が強い。だから、司法試験や公認会計士、教員などのプログラムを持った大学に行きたがる。新潟高校などの名門校でも、比較的、東京大学の文Ⅰなどよりは理系や新潟大の医学部に多く行っているのではないだろうか。今年の新潟県の東大合格者は新潟高校8人、長岡、高田が各2人といった具合で、傾向がつかめる程の人数ではない。一橋に至っては新潟高、長岡高で1人か2人といった具合で、県下の学力上位の学生は東北大、北大、新潟大学に行く数が多い。本来、東大や一橋、京大に行くポテンシャルを持った学生も多いと思うが、230万人という県人口の割りには少ない。新潟県人、特に男子は控えめで、出る釘は打たれる意識が強く、何事も目立たぬように振舞う若者が多い。そこで、ビジネスリーダーなどというコンセプトには気持ちも引いてしまうかもしれない。一橋は資格でも結構頑張っている。司法試験の合格者も人数の割には多く、学年150人ほどの法学部から、毎年40人~50人は輩出しており、公認会計士を目指す学生の合格率も高いと思われる。新潟ではそうしたことが評価されることを念頭に置いたプロモーションのほうがよい。専門教育とリベラルアーツ教育をどう整合させるかということである。
 新潟県の若者はむしろ大学において地域に貢献する仕事との関連、医療とか女性は看護といった専門職志向が強く、その分NSGなどの専門学校が栄える傾向。地域の学生の気質、特性は県によって相当違うとみてよく、そこを見ずにプロモーションを行っても共感が得られない。伝えたいことは盛り沢山だろうが、土地のニーズをよく分析して企画すべきである。実学面が強調されたが、一橋のよさは、むしろ歴史学やアダムスミス、ウェーバーなど哲学の学びも盛んで、自由な学風が人間教育になり、特に友人の絆の強い大学である。Cool head but warm heart.な経済人を育てる人間教育が今日ほど求められる時代は無いのではないか。 

by katoujun2549 | 2015-04-13 17:38 | 教育 | Comments(0)