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コバニ陥落とクルド人女性兵士の活躍

クルド人女性兵士とISIL


 

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トルコとの国境にある都市コバニがISILによって包囲され、90%が支配されようとした。この地域はクルド人が多く、シーア派の彼らはスンニーのISILから敵視されてきた。昨年の10月以降形成は逆転。今年の1月にクルド人の軍事勢力YPGによって奪還された。この戦いの状況を分析すると次のISIL壊滅に向けての手がかりが得られるかも知れない。イスラエルには昔から女性兵士が徴兵されていたが、これは必ずしも人員不足が理由ではなく、アラブ人は女性兵士との戦闘を嫌うことからきている。
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ISILの戦闘員は死を恐れぬ勇敢な攻撃でこれまでイラクやシリア政府軍と戦ってきたが、信念だけで強いわけではない、イラク軍やアメリカの捕獲兵器はじめ、戦力の予測が付かない中、戦闘員も麻薬を使ったり、逃亡兵を処刑、恐怖で支配した結果でもある。イラク軍はとにかく、マリキ政権には全く忠誠心が無かった。ISILに攻撃されれば司令官が真っ先に逃げ、自分達の兵器を破壊もせずに放棄してしまう。兵士は司令官が逃げるのに何で戦う必要があるのかと戦意喪失。アメリカが供与したM1エイブラム戦車まで取られてしまった。ティクリート攻防戦では流石に変わったようだが、とにかく、形勢不利となると情けない状態に陥るようだ。
 これに対して、コバニのクルド人達は約10万人が街を脱出し、トルコに難民として受け入れられた。クルド人達は民兵としてコバニ奪還のために戦い、アメリカも空爆で支援をし、一日に6回を越える空爆を行った。特に、女性兵士達の貢献が大きかった。主力はペシュメルガ(クルド自治区の治安部隊20万人)であるが、彼らはイラクからの独立を目指しており、自治区の人口も800万人を超える。

 クルド人はイランからトルコ、イラク、シリアにわたり、4000万人がいるが、国を持たない。彼らは、不思議なことに石油の取れる所に多い。おそらく、緑の多い、オアシスには住めず、石油やガスの噴出する荒地に追いやられた結果だろう。それが、逆転した。イラクのキルキークなどにも多い。クルドYPG兵士は14,000人ほどだが、その40%が18〜20才の女性兵士であり、彼女達の勇敢な戦いは戦闘の結果に大きく貢献した。その理由は、イスラム原理主義では女性の地位は低く、常に保護されるべきもので、黒い衣を着ている姿が見られる。彼女達が戦闘に参加することは考えられない。それどころか、彼らに撃たれて死ぬことは地獄に堕ちることも意味する。そこでISILの兵士は彼女達と対峙することを嫌うのだそうだ。そこをアメリカなどは利用し、武器を供与して軍事訓練をして前線に立たせている。山岳地帯に住むクルド人達の女性の地位は決して低くない。かれらにとって、女性は命の源なのだそうだ。

 ISILからのイラク諸都市の解放は将来、これまで国を持たなかったクルド人達の独立も後押しすることになるかもしれない。彼女達の貢献がISILからのイラク、シリアの解放をもたらしたという功績を認めざるを得ない状況になれば、クルド人国家の成立がこの数年のうちにあるかもしれない。アメリカにしてみれば、ISILに油田を支配されるよりは、もともと、彼らの地である場所の石油は彼らに支配させ、イラクをクルド地区と政治が機能しないイラクと分離した方がましなのかもしれない。クルド人は世界史上、多くの役割を演じてきた。一説によるとモーゼもクルド人ではないかといわれている。あるいは、十字軍と戦い勝利した、名将サラディーンもクルド人であった。

  
 

イラン、イラク、アフガニスタン、イスラエル、コーカサスと冷戦構造終焉後、大きな変化を余儀なくされた。アメリカの石油戦略と覇権、ロシアの後退と民族対立と、21世紀の動乱の目玉となる情勢である。昨年末のイスラエルガザ攻撃、グルジアの北オセチア紛争、米軍のイラク撤退からアフガニスタン増派、パキスタンの北部での戦闘など、この地域は不安定度と混乱を増している。6月にはイランの大統領選挙後の混乱とアフガニスタンでのテロ下での選挙等波乱は続いている。このことは日本とどんな関係があるのだろうか。昨年の石油騒動も忘れかけた今日、1974年の第4次中東戦争でのオイルショック混乱から、全てつながっているこれらの地域情勢を学びたい。アメリカのオバマ大統領から遡って、ブッシュ、クリントン、ブッシュ、レーガンと何を残して来たのだろうか。


by katoujun2549 | 2015-03-21 17:56 | 国際政治 | Comments(0)