農協改革の狙い
今、TPP交渉が山場であり、特に米の関税撤廃は難攻不落であったが、これを乗り越えるためには、政府の方針に沿わなければ、外堀を埋めるぞという脅しが必要でもある。岩盤規制といわれる部分に手をつけたことは評価できるが、安部政権のやり口は官僚統制を強めるもので、彼らの競争力強化というのは弱肉強食と責任の放棄であることが多い。要は、日本の農業を本当に強化できるかどうかにかかっている。いくら日本の農業を大規模化しようにも、国土の性格上、山間地も多く、そうは簡単にはいかない。むしろ地域の特性を生かした、それぞれの農業従事者の意欲を喚起し、戦略的な助言や情報提供が大事なのであるが、それが見えない。今農業特区は新潟市だけであるが、なぜこれを一箇所に縛る必要があるのだろうか。各県で作ればいいのではないか。TPPによる国際交渉は全国の米作農家に影響があるのに。
日本の農産物は品質は良いが、国際評価は殆ど無いに等しいのは個別農家の努力が無いからだろうか。今年の米の輸出額は14億円しかない。日本の農産物の輸出は6117億円あって今年は11%も延びている。これらの輸出規模は先進国中最低で、この原因が全中、あるいは農家の後進性なのだろうか。政府はこれまで何をしてきたのだろうか。今後、TPPにおいて米は聖域ではなくなる。ならばこれを産業として守るには輸出しかない。その為には企業、大学、研究機関などが結集し、新しい品種の開発、日本食の普及、国際的に価格の高い品種の取り込みが残された手段ではないか。農業ドシロオトの自分でも分かる。世界で最も価格の高い米は日本の「うるち米」ではない。
「バスマティ(Basmati)」はインダス川両岸のパンジャブ地方(パキスタン北東部からインド北西部にまたがる地域)で栽培されている香り米。米粒は細長い形状で、炊飯するとさらに長くなるのが特徴。最高品質のバスマティは国際的に流通する米としては世界で最も高価な米といわれ、なかでもパキスタンから北インドのヒマラヤ山間部のデヘラードゥーン地方にかけて栽培されるスーパー・バースマティーと呼ばれる優良品種は、バスマティの中でも最も優れた品種である。平成元年度から6年度までの6年間にわたり実施された農林水産省の研究プロジェクト「需要拡大のための新形質水田作物の開発」(通称「スーパーライス計画」)では、バスマティを選抜した品種であるバスマティ370と日本晴を交配した品種「サリークィーン」も育成された。こうした品種を日本の優れた農業技術と意欲のある農家で栽培し、そしてこれを使った料理、さらに企業が世界に広げる仕組みづくを開発することこそ大切である。政府は情報収集や研究はするが、これらを農家に作らせ、所得になるような仕組みを起業と開発する努力をどこまでやっているのだろうか。日本の米が世界一美味いと言っているのは日本人、特にお役人だけである。
先進国の中でも、オランダは九州ほどの面積しかないが、農産物、花やチーズ、園芸作物の輸出では世界有数である。これは国が英知を結集して国際競争力を強化した賜物なのである。もちろん、ヨーロッパという一大消費地を前にした立地やエネルギ−資源は日本とは違うから、農産物輸出大国になれと言っているのではない。オランダは花卉の一大市場を育成して来た。チューリップは歴史的産物である。今日本の政府が力を入れている日本の輸出農産物は、種類は増えたが、ドバイのスーパーでリンゴ1個1200円とかおばかな値段で当然売れない。それを品質の高い日本の農産物といって得意になっている官僚の自称成果を国民は怒りを持って改めさせ、彼らを処罰すべきだ。真に貢献する助言と規制改革こそが農業強化の方策である。
安部政権の狙いは実は、政府の統制機能の強化にあって、大学もCOCプラスとか餌を撒いて、大学の自治権を骨抜きにし、さらに岩盤のような農協を崩しにかかっている。政権の権力強化こそが目的であって、農業のためではないのである。もちろん、その狙いは憲法第9条の破壊である。