冬になって東京に帰ると、皆、雪で大変でしょうと同情してくれる。でも、新発田は大して積りませんとか、新潟市内も今年は大した事無いですと言うと、期待はずれな印象を受けるようで、後の話が続かない。きっと、雪かきが大変だとか、2階から外に出るほどですというと、やっぱり、と思うんだろう。そりゃあ十日町とか、新発田でも赤谷あたりは2mは積もる。何も、雪まみれで、気の毒だ、あんな辺境に行って不幸に耐えていることを期待はしていないんだろうが、雪の無い東京の優越感に浸りたい位の悪意はあるかもしれない。ちょっと悪ふざけで、そうですねー、スキーが上手くなっちゃったんですよ、20分も行けばいいゲレンデがあるんで、とか言えば、チェッ!羨ましいと思う人がいるかもしれない。優越感とコンプレックスは紙一重ですからね。新発田でも20分も車で行けば二王字のニノックススキー場があるから嘘ではない。でも、自分も新潟県人は皆スキーをする訳ではないことぐらい分かっているつもりである。スケートリンクだって市内には昨年初めてオープンしたのである。小国では、あの、オリンピックでスノボーで銀メダルを取った平野歩夢君が育ったが、彼は実は村上の人である。新発田はスキーだけではない。温泉もゴルフ場も車で20分県内に4〜5カ所はある。 とにかく、運動不足気味で、体重が増えてしまった。車社会で歩かないからなのである。それを見て、毎日おいしいご飯を召し上がってるんでしょうと言って来るが、確かに飯は美味い。新米なんぞ、香りから違うが、それでも、飯をモリモリは食べないし、東京にいた時より控えめである。今頃になると、ルレクチェなんか最高に美味いですと言っても、何それ?というような顔つきになる。東京には残念ながら売っていない。新潟の人が消費するか、贈答品になってしまう。こちらも、しまった、新潟名産の洋梨ですと解説が必要になる。まともな人は、山形のラフランスも美味しいですな、と返ってくる。自分は、そんなのより遥かに味は上だと思って持ち出したのであるが、きっとこの人は大して美味く無いラフランスも美味しいと言って貰いたいのだろう。そこで、話を変えて相手を傷つけない様に心を配らなきゃならない。
酒の話も最近合わなくなって来た。新潟の日本酒は美味いですねーと来る。千寿万寿とか、越の寒梅とか、気の効いた人は八海山とか、〆張鶴、さらに通人は鶴齢とかうんちくを傾け始める。ところが、新潟の皆様、大体そんな高い酒飲まなくても、新酒とか、製造して間もないのがあって安くて美味い。新発田だけでも、菊水、市島、金升、ふじの井と4酒蔵あって、純米酒、大吟醸、本醸造、純米大吟醸、純米吟醸と製法での分類もある。〆張鶴は村上だが、太洋盛というのもあってこれもいける。上越に行けば糸魚川の謙信、佐渡には北雪とか、奥が深い。90を超す酒蔵、500以上の銘柄が新潟にはある。自分など序の口だ。好みとなると、価格帯から青ラベルだとか、さらに細かい。これが五泉市に行けば、金鵄盃酒蔵とか、津川の麒麟山、自分は村松の「雪影」が大好きとなって、これ又、東京の人とは話が合わん。ところが、新潟では辛口淡麗の似たような酒ばかりで、他県の酒についてはあまり知らない。そんな事は東京の人は知らないから、何とも、新潟に行ったらアル中になったのではないかと疑い始める始末。結局、出来るだけ酒の話題は避け気味なのである。要は東京人は新潟にあまり関心が無いが、多少の知識はあって、恐らく、40年くらい前の新潟とか、たまたま、観光で行った場所や夏の佐渡など偏った知識があるのだろう。東京より暮らしやすく、結構便利だとは夢にも思っていないのである。