ソ連映画「誓いの休暇」1959年 the Ballad of a soldier
監督のチュフライはスターリン時代の民主化に向けての雪解けを象徴する人で、女狙撃兵マリョートカも、赤軍の女兵士と白軍将校との愛を描いた作品。かつてのソ連映画にはタルコフスキーの「僕の村は戦場だった」といった名作がある。「鬼戦車T34」などもユニークな作品である。
Grigori Chukhrai グリゴーリ・チュフライ
出演 cast
ウラジミール・イワショフ Vladimir Ivashov - Alyosha
ジャンナ・プロホレンコ Zhanna Prokhorenko - Shura
ソ連映画のモノクロ 1959年作品
ー物語ー
冒頭いきなり喪服の母親。ナレーションが彼女の息子は戦争から帰らなかったことを告げ、それからその息子の物語が始まる。つまりこの映画は、戦死した若い兵士の物語、ドイツ軍との戦い、ソ連軍の兵士の群と戦車が前線に向かう。女兵士が、戦車と兵士の列を交通整理する雑踏が印象的。急かせるような音楽が切ない。監視塹壕にいた兵士アリョーシャは急迫してきたドイツ軍戦車に追い掛けられる。独身者や老人は最前戦に送られる現実が見て取れる。放置してあった対戦車銃でニ両を撃破、褒美として6日間の休暇を貰う。帰るのに二日、母親と過すのに二日、戻るのに二日。帰省の途上、片脚になった兵士、シューラという美少女とのひと時の淡い恋、出征した兵士を捨てて他の男と暮らす妻、ウクライナからの家族。予想外の出来事に遭遇し、休暇日数は減っていく。ようやく家に着いても母はいない。農作業で出かけていた母とやっと抱き合うが、もう時間がない。帰りのトラックが待っていた。アリョーシャは母に手を振ってまた戦場に戻っていく。
アリョーシャとシューラとの淡い恋物語、最初は喧嘩したりしているが、だんだん仲良くなり、やがてお互いに恋心を抱くようになる。短い間の出会いだけれども、その中に喧嘩、和解、別離、再会など、ラヴ・ストーリーのすべての要素が詰まっているのである。
戦争という異常時だから起きる唐突な出来事、そして若者らしい恋。
片脚となって妻のところへ帰る兵士のエピソード、兵士の妻に石鹸を届けるがその妻は別の男と豊かな暮らし。さまざまな人生模様が描かれる。背景にあるのは常に戦争だ。そしてタイムリミットが迫って来る。もう30年も前にNHK教育テレビで観て、録画していたが、当時は何とβだった。
素晴らしい映画である。最近の映画のテンポとは違う、淡々とした演出がかえって心に残る。自分が三度観ても飽きないのはこの映画とカサブランカ、第三の男、そしてシェーンだ。