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マリア・カラス

 
  世界三大テノールというのがあった。ドミンゴ、カレーラス、パバロッティだ。しかし、三大ソプラノというのは聞かない。というのは20世紀最高のソプラノ、マリア・カラスが群を抜いているからではないか。また、ソプラノの絶頂期はおそらく、それほど長くはないのだ。20年以上も続いたソプラノはシュワルツコップくらいだろう。とにかく、1950年代のマリアカラスは、まさに伝説の人。you-tubeでマリア・カラスの歌声を聴いたのだが、録音の悪さをものともしない迫力。

 世紀の歌姫と言われた彼女の歌声を聴いてみようとyou-tubeを検索。最初に聞いたのが1973年に、来日し、NHKホールで収録されたものだった。げつ!これがマリアカラス?という感じだった。4年後に彼女は亡くなっている。いやはや、日本も当時は高度成長期最後のバブルで、ふんだんにギャラを払って、死ぬ前の彼女を2度も呼んでしまったのだ。50年代は日本はまだ、腹ぺこで貧乏な国、パリやNYでオペラを鑑賞する人は少なかったし、彼女の声はレコードでしか聞けなかった。実際に彼女のオペラを聞いた日本人は殆どいなかったのではないか。オペラは欧州社交界の華、外交官ですらそんな余裕はなかったと思う。彼女の偉大さはオペラにあり、その既成概念を覆し、そこに演劇の要素を注入した。彼女程多くのオペラをこなした人はいない。

  日本公演でも、期待があまりにも大きかったために、その落差に驚いただけで、これはロンドンカムバック講演でも同じだったが、大喝采は受けていた。そのオーラは残っており、鯛には変わりはなかった。一番苦しんだのは彼女だ。残念ながら彼女は離婚悶着やオナシスとの生活とかで9年近くブランクが生まれ、日本に来た時は50才を過ぎ、鍛え抜かれた声は失われて、既に老後の生活に入っていた。しかし、我々はあの30才台の歌姫、虚像を聞いていた。彼女にしてみれば我々の誤解だった。

1956年頃のマリアカラス
マリア・カラス_e0195345_9161877.jpg

 かくも高名なマリア・カラスだが、彼女の声の絶頂期は1950年台〜65年の間。しかしその最盛期、30歳代前後の彼女の素晴しさは、やはり、歴史に残るものだ。やっとLPが出た時代の寵児だった。長期間の訓練に裏付けられて安定していた彼女の声は、不規則なプライベート生活や、ベルカントの難役を歌い続け、声を酷使した為に急速に失われてしまっていたのだ。結局1965年の『トスカ』の舞台を最後に事実上の引退だった。何と、引退して8年も経ち、日本に来て4年後の1977年に彼女はこの世を去る。このNHKの収録はカラス最後の公演だったようだ。その意味で貴重だが、確か、自分が中学生のころレコードで聞いたカラスの声はこんなもんじゃなかった。彼女の声は、大空に突き抜けるような、力強く、透明なソプラノだった。you-tubeではその絶頂期の歌声にふれることができた。勿論今なお多くのCDが売られている。you-tubeではNHK特集番組、夢伝説~世界の主役たち 1:55.30 「永遠の歌姫(ディーバ) マリア・カラス」 黒柳 徹子 なかにし礼 などの対談が邪魔だが、彼女が12歳の時最初にNYの放送局で歌った録音が聞ける。
(http://www.youtube.com/watch?v=gB63Y69yr8c)
また、1952年の絶頂期の歌声がyou-tubeに入っている。(http://www.youtube.com/watch?v=CmcG8fcVWkk&feature=results_video&playnext=1&list=PL79DCFA2ED7F9FE8A)

you-tubeが凄いと思ったのは、彼女の1947年のスペイン公演も収録されている。1947年イタリアのフェニーチェ座で『トゥーランドット』他の上演でデビューしたわけだから、その直後だろう。もう一度検索したいが残念ながら出てこない。録音は技術的にも良くないが、その力強い音量と、頭の上、いや、天に抜けるような声の力が伝わって来た。何といっても、1962年NYのカーネギーホールでのカルメンのハバネラと、73年のNHKホールでの声とはまるで別人であった。しかし、あの偉大な歌手の最後の歌声という意味に於いてNHKの記録は貴重である。
海外のドキュメンタリーでは
http://www.youtube.com/watch?v=SmuCHVzK9aA&feature=relatedが画像もきれい
彼女を描いたドキュメンタリーは数多い。
2003年に見た映画で「永遠のマリアカラス」というのを思い出した。華やかな舞台から姿を消し、パリでひっそりと隠遁暮らしを送るマリア・カラス(ファニー・アルダン)。美声を失い、愛するオナシスを失い、失意のどん底にあったカラスを救おうとかつての仕事仲間ラリー(ジェレミー・アイアンズ)は一枚の企画書を手に彼女を訪ねる。それは、果せぬまま・・・・・・

ペール・ラシェーズ墓地にあるカラスの墓碑
1977年9月16日、ひっそりと暮らしていたパリの自宅にて53歳の若さで短い生涯を閉じる。とある。

by katoujun2549 | 2011-10-23 00:21 | Music 音楽 | Comments(0)