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日本剣道形の不思議 教えてください。

 剣道をある程度、初段を取る位続けた方は、誰でも知っている、日本剣道形。必ず、木刀を使う形の試験を受けるからだ。ところが、この形の意味を良くわかって稽古している人は少ない。凡そ、4〜5段くらいの修行を続けた方が、内容を理解し始めるのではないか。それでも分っていない、昇段試験でやむなく、格好だけの順序を間違えなければ合格できるから、そのために練習する人が実際多い。全日本剣道連盟をそれを戒め、厳密な解説書を作って普及に務めているが、読めば読む程、分らなくなってしまう不思議な稽古なのである。というのは、マニュアルの様に手順としての内容はあるのだが、何故このような技があり、どんな状況で使われたのかが、全く理解できないからである。

日本剣道形を学ぶ目的
その1 礼儀ー礼法を学ぶ (姿勢、態度も併せて学ぶ)
その2 刀の特徴を生かした剣の打突を学ぶ
その3  仕太刀、打太刀における理合を学ぶ

 日本剣道形は教育、特に学校教育の為に、各流派の、最も精神的な実際の切り合いからは遠い技を集めたということなのかもしれない。実際、天然理神流や、直心影流、鹿島神當流など、いかにも切り合いで使えそうな技がある。これんなことを覚えたら、教育的ではないし、実際にやろうとする輩も出てくるといけないのだろう。組太刀というのは、めったに他人や、他派に見せる物ではない。分ったら効果が無くなる。現代は映像で見ることが出来るが、昔は口頭か、実際にやってみるしかなかった。日本剣道形はそのなかでも、学校教育でも使える、危険性の無い、理合が分り、見ても分り易い技を選び、さらには、それを順序よく学びやすく、動作を繰り返すよう順序を考えたのであろう。形を学ぶ上で大切なことは打ち太刀打、仕太刀が気脈を合わせ、間髪を入れないやり取りである。この感覚は竹刀剣道にも通じる。しかし、この効用は高段位にならないと分からない。初段から八段まで幅が広い。

 一見具体的で抽象的な内容。分らずとも稽古する事が大事という。竹刀剣道ではあれだけ正眼の構え、中心の取り合いを学ぶが、この剣道形は相正眼は2本目と七本目しか無い。そんな理解だから七段の審査に落ちるんだ。素直に稽古しろと言われるのがせいぜいだ。どなたか教えて下さいませんか。

 しかし、実際には、それぞれ、太刀7本、小太刀3本には生死を分けた状況から生まれた技の意味があるのだろうか。夫々の形は、実際には真剣を使って打太刀、仕太刀の動作があり、上段、中段、下段、八相、脇構え、面、小手、突き、胴の技が形だけ学べるようになっている。さらに理合の妙味もある。鎬の使い方から個々の動作には微妙な意味があり、八段の先生方からは凄い内容が含まれていると説明される。その意味は何だろうかと考えると、絶妙技過ぎて、殆ど実際には不可能な技が殆どだ。いかにもありそうに演じなければならない。

 これらは、皆が熱心に取り組む反面、竹刀で使える技は無い。何故稽古しなければならないかが、全く教えられない。不思議なことである。足の運びも竹刀は摺り足、継足だが、真剣の稽古ではこれは無い。全て歩み足。小野派一刀流の形にはこれがあるが、一般には一刀流の組太刀を見る事は,滅多にない。そもそも、日本剣道形というのは、制定時から、各流派の形を、夫々の代表が議論しながら妥協して作ったものだから、そうした意味では抽象的になってしまい、形だけになったのではないだろうか。その当時は、万一、自派の形が採用されなければ切腹する程の切迫した交渉もあったと言われている。各流派の組太刀はもっと勢いがあるし、まかり間違えば怪我をしそうな強さもある。ところが日本剣道形は「静」的なのだ。この形を1000回稽古したら刀を使えるようになるかというと、到底無理。真剣を使うには、むしろ、居合いの方が実戦的なのである。この居合いでも、一撃で相手を倒す事はできない。二の技でとどめを刺す。初発刀が全てを物語る。坂本龍馬の暗殺でも一撃では完了しなかった。刀の切り合いで一撃で倒すというのは余程の腕前なのである。


 1本目、双方相上段から仕太刀の切り込みを、打太刀は抜いて面を打ち、制圧して残心を取る。これなんぞ、竹刀でこんな技は出来無いし、真剣でも、無理だろう。互いが示し合わせているから出来るだけである。小手抜き面はよくあるが、面抜き面は滅多に無い。記録によると、切り合いでは真正面からの相打ちはあっても、撃ち落とし、抜いて打つなんて、超絶技は無い。もともと、大天才剣士でもなければ出来ない技の連続なのである。制定時に自分の流派の極意を残そうとして、最も難易度の高い真剣の技を集めた為にこんなことになった。二本目の、小手を抜いて面を打つなら分るが、何と小手を切るのだ。そんな難しい技を真剣の切り合いで試みる馬鹿はいないだろう。要するに、真剣勝負ではあり得ないような技だけを、集めてしまったのが日本剣道形なのである。本当はそうしたことは分ってやっている。これこそ、真剣の技だと思う人はただ未熟なだけ。

 くどいようだが、3本目の突き、竹刀でやってみれば分るが、突きをいなして、突き返す難易度の高い技を使えるのは、互角では無理、恐らく、八段の先生が初段か二段の初心者にしか使えないだろう。突いて来た相手は5段クラスであれば、凌ぐだけで終わってしまう。突きをきちんと当てるので精一杯。4本目の八相、脇構えの両者が、同時に切り込み、鎬を削って切り合い、拮抗したところから突きを躱して入り身になって切り込む。こんな事があり得るのか。体当りされて、ぶっ飛ぶか、蹴り上げられるのが関の山だ。何ともリアリティの無い技の連続なのだ。

 5本目は上段から切り込んで来たところを摺上げて面を打つ。上段の相手を竹刀で打ち込んで来たところをこのように摺上げて打った人を見たことが無い。刀なら重たいから可能なのだろうか。真剣で日本剣道形を稽古すれば少しはわかるかもしれない。しかし、高価な真剣がボロボロになってしまう。6本目が唯一竹刀の稽古でもありうる、小手摺上げ小手という技である。ところが、これは真剣では到底無理な動作だろう。小手は摺上げるのではなく、横に払って、踏み込んで相手の腕や首に切り込んだ方が自然で、直心影流の刃挽きではその様な内容になっている。あるいは竹刀の技であるように抜いて打つか、前に踏み込んで鍔で凌ぐかだ。7本目の胴は相中段から、切り込む相手の中段を凌いで打ち込むところに膝を付いて胴を打つ。昔はこのような胴を竹刀で打つ先生がおられた事を知っている。羽賀準一とか、中島五郎蔵先生が見せていたが、こんなことを今の試合では見た事が無い。真剣でも中段からそのまま前に突いて出る人はいないだろう。あり得ない技だ。

 ところが、小太刀の3本は結構ありそうな形になっている。しかし、長い刀に、余程の気合で小太刀は立ち向かわなければ、到底敵わない。それがやっ、とう!とのんびりダンスの様に切り返すだけである。迫力が無い。大体、真剣で小太刀には上段から切り落とす事が最も有利だ。それを二本目の様に下段から脇構えに転じるアホがいるんだろうか。そんな、良くわからない日本剣道形を何で一生懸命稽古するのか、極意を学んで剣聖にでもなりたいのなら別だが。すみません、小生もこれから、昇段審査に通る為には一生懸命稽古するのであります。

by katoujun2549 | 2011-09-03 09:38 | 武道・剣道 | Comments(0)