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アメリカ合衆国の健康保険

アメリカ合衆国の健康保険

 アメリカ合衆国では健康保険に入っていない人々が4500万人もおり、これが不況の影響で拡大していることがしばしば伝えられる。しかし、移民を受け入れて来たアメリカにはそれなりに事情がある。艱難辛苦の結果、今日の地位を得てきた二世三世と移住したばかりの国民との政策に対する期待感が違う。移住して来たばかりのアメリカ人や黒人等の低所得者層は保険に入る収入も無い。こうしたグループが日本とは桁違いのスケールであるということだ。エスタブリッシュメント達を始め、中間層はこれらの人々に対して厳しい感覚を持っている。何故、自分達の税金が彼らに使われ、そして、自分達の地位が脅かされなければならないのかということだ。

 自助努力の国アメリカでは個人的な領域である健康という問題に国家が介入することへの嫌悪感もある。アメリカの保険制度では企業のフリンジベネフィットとして健康保険が用意されている。また、マネージドケアという形でHMO制度に個人加入している人もいる。高齢者でればメディケア、低所得者はメディケイドである。さらにPPO,POSという仕組みもあり、100を越える多様な仕組みがある。これが、又膨大な医療事務費を生み出し、非効率につながっている。さらに積み立て方式の健康保険もある。HSAという医療貯蓄口座でブッシュ政権時に作られた。財形のようなもので、医療費に拠出した分は非課税である。しかし、こうした保険負担は企業にとっても、個人にも重圧となっている。また、高度医療は進化するが、コストもかかる。一部の人の高いニーズを満足する為に膨大な医療費が使われている。アメリカの医療費はGDP比世界一であるが、医、命の平等という点からほど遠い。これが更なる保険料の上昇と医療費の上昇を招いていることに手を打つべき時期に来ている。

 企業福祉としての健康保険は戦争中の統制経済の中、給与に差がつけられなかった企業が、健康保険のメリットの違いで雇用確保に走ったからである。かつてクリントン政権が国民皆保険を法制化しようとして失敗したのは、医師会からのロビー活動で、猛烈な反対運動を起こされた。皆保険絵では医療の質が確保できないという理由である。テレビ番組でアメリカの病院が出てくる。ERなどはまさに救急救命室ということで、患者の所得レベルは低く、緊急に駆けつけてきた患者を迅速に処理しなければならず、ドラマの中で見られるが、医療ミスがあるし、患者の方も銃撃で重症を負った人とか、交通事故などで、必ずしも医療レベルは高くはないが、様々な患者に一人の医師が対応する場面が印象的だ。だからそうした所では医療事故も多く、医師はしばしば訴訟に巻き込まれるし、実際その治療にかかわるミスで、年間44,000人〜98,000人が亡くなっているという統計もある。平均的な医療水準は必ずしも高くないのだ。 

 アメリカの病院の医師の数は日本の8倍、看護師の数も多く、その中でも事故が多いの。確かにアメリカの高度医療のレベルに対して、普通の人はこれを必ずしも受けられる訳でもなく、医療保険の査定と、事故の恐怖とも戦わなければならない。それに比べて日本の医療は低い医療費と、一定レベルの医療水準が確保されていると言う点で世界的には高い評価を得ている。ただ、地域格差とか、病院格差、情報公開が進んでいないのである。
 
 ブッシュ政権においては市場原理主義がまかり通っていた。当時の医療政策では薬代の補填措置が社会保障て行なわれるようになった。しかし、アメリカの高度医療はコストも高く、高度医療であるほど費用はうなぎ上りになる。そこで保険財政が圧迫され続けるという悪循環に陥っている。オバマ政権はとうとう2010年4月に国民皆保険の法制化を議会で可決。新しい皆保険制度が始まる。




HMO(健康保険維持機構)(Health Maintenance Organization)
医療費抑制を目的に設立された会員制の医療保険組織。
民間保険の一つです。

加入者は一定の掛金を支払うだけで、ネットワーク内の医師や医療組織を
フルに利用できます。
ただし、あらかじめ決められた初診担当医(PCP=Primary Care Physician)
に初診を受けることが決められていて、緊急時を除く全ての診察はPCPで
行うことが義務付けられています。
もし、他の病院へ行く場合には必ずPCPの許可(紹介状)が必要となり、
勝手な判断で他の病院へ行っても保険が適用されないなど厳しい制約が
あります。

比較的安い保険料、医療費の自己負担が少ないため,、HMOは広く普及
しつつありますが、HMOでは医療費を抑制するために、医師に対して、
治療法、処方薬、検査法などの選択を制限するなどしています。
また、患者側にも、専門医にかかりにくいこと、処方薬の選択に制限が
あることなどに不満を感じている人もいるようです。

・PPO(Preferred Provider Organization)
医療費抑制を目的として医師や医療機関がグループ化して設立した
医療サービスを提供する団体。

加入者は保険会社が提携している医師・医療機関(In-Network)で診察を
受ける場合、自己負担が大幅に軽減されるため、かなり安い費用で診療を
受けることが可能です。
逆に非提携の医師・医療機関(Out-of-Network)で診察を受けた場合には
In-Networkと比較して高めの自己負担を強いられます。

HMOとの違いとしては、PPOでは、契約してない医師にかかることが
可能なこと。また、処方薬品の選択幅が広い等のメリットもあります。
その一方、被保険者の保険料、自己負担額はHMOより高額になります。

・POS(Point of Service)
HMOとPPOを組み合わせたような内容です。
あらかじめPCPを決定する点はHMOと同じですが、仮に非提携の
医師・医療機関(Out-of-Network)であっても多少割高の自己負担を
我慢すれば利用可能な点などはPPOと類似しています。

■補足
米国には現在、日本のような「国民皆保険制度」はなく、個人又は雇用者が
それぞれ、Managed Care Organization と 医療保険契約を結んでいます。

医療保険のシステムも、HMO(Health Maintenance Organization)、
PPO(Preferred Provider Organization)、POS(Point-of Service Plan)等、
いろいろあり、これらのほとんどが民間企業です。
保険料、医療費の自己負担割合、保険で認められる治療、医療サービスの範囲
など、それぞれの企業によって違いがあります。

CDHPとHSA

米国では近年、高騰する医療コスト抑制の方策の一つとして、消費者主導型医療プラン(CDHP)への期待が高まっている。CDHPは、一般に、高免責・低保険料の医療保険と、免責額に達するまでの医療支出用の個人口座とを組み合わせたもので、保険加入者が消費者意識を持つことにより不必要な医療支出の抑制が可能という考え方に基づいている。
CDHPの中核と言えるのが、HSA(Health Savings Account)である。HSAへの拠出は非課税で、給付も適格な医療支出であれば非課税である。未使用の資金は翌年に繰り越すことができ、貯まった口座資産の運用益も非課税である。
HSAは高免責保険と医療支出のための口座の組み合わせなので、銀行と保険会社が提携してサービスを提供する形が多い。他方、口座に資産が積み上がるにつれて運用可能な資産となることから、投資対象としての投資信託の提供も始まっている。
2006年12月には法改正により、HSAへの拠出限度額の実質的な引き上げやIRA(個人退職勘定)からの資産移管が可能とされるなど、HSAをより使い勝手のよい制度にするための手直しも続けられている。医療支出の拡大は高齢化社会に共通の悩みであり、わが国でも2007年2月、日本経団連の意見書「持続可能で国民の満足度の高い医療制度改革に向けて」の中に、自助努力の受け皿としての「医療貯蓄口座」の導入が盛り込まれている。米国HSAの試みがどのような成果を出すのか、今後の展開が注目される。
by katoujun2549 | 2010-08-29 11:52 | 医療介護福祉 | Comments(0)