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健康保険組合の赤字問題

 大企業の健康保険はその仕組みからかつては黒字体質であった。終身雇用制の企業において、病気になる人は一般人よりは少なく、また、銀行やIT企業は従業員構成においてはピラミッド型になるように経営される。特に新興企業においては高齢者や医療費のかさむ難病にかかるような人は社員になれない。だから、高齢者や慢性病を持っている人も多く入っているため赤字体質の国保に負担金を拠出している。08年決算では高齢者医療等に対する負担が、保険料収入に占める割合は、何と44.3%にも上っている。高齢者医療に対する負担金総額は2兆7461円である。08年の高齢者医療改革によるもので、負担額は前年に対し4242億円増えたためである。この赤字になった健保組合は1030組合、全体1497組合の68.8%に上る。赤字総額は3060億円であり、初めて巨大赤字に転じた。(2009年9月12日朝日)

 この事は、高齢者医療制度が発足する上で当然予測されたことであったから、驚く事ではない。むしろ、驚くことは既に46%の組合が赤字であったことである。これだけ赤字だったところに高齢者医療費の負担を2兆円も乗せたところが問題なのである。これは、一種の悪平等主義である。この組合数と赤字総額の内訳が実は大事であって、高齢者の多い大企業の方が赤字であることである。例えば東芝とか、東レといった大企業の組合である。各組合は保養所を売却したり、様々な合理化を迫られ、実行している。組合員の拠出金を法律で勝手に赤字にすることは本来財産権の侵害である。拠出は仕方が無いにせよ、赤字にする事は無い筈である。赤字になった組合は、組合員の健康管理に関する活動費にも支障を来すだろう。また、この状態が続くと政府管掌保険に移行した方が組合員に取っては有利で、解散するところも出る。健保組合がこれからの医療費の節減に果す役割は大きい。ドイツではこの医療保険組合が、厳しく医療費の内容をチェックし、必要な医療行為に合理的な配分をするような役割を担っている事が、その医療費の安定化に貢献している。健康保険組合に対して財政負担のみをあてにするのは将来の禍根となるだろう。健康保険組合が持っている医療費の適正化、国民の健康維持、生活習慣病の抑制機能に支障を来すような赤字財政に追い込む事は結果的に将来の医療財政全体に負のスパイラルを招く要因である。

 昨年施行された医療保険改正において、前期高齢者の保険資金は健康保険から補填される。そのとき、2012年から現役納付者のメタボリックシンドローム割合が、組合健保からの補填金額い±10%の幅で調整される。現役勤労者のメタボ比率が多い組合保険は拠出額が増えてしまう。このことは、現役世代にとっては不満だろう。確かに、不摂生すれば病気になる確率は上昇するから、そのような人は保険料が上がっても仕方が無い筈だが、これを個人に賦課するのではなく、全体に連帯して負担するわけである。高齢者の医療費上昇から組合健保からの拠出金は必要になるというのは、実は高齢者とは関係のないことで、財源があるから拠出を求められているに過ぎない。さらに現役のメタボと前期高齢者の病気とは関係ないのだ。しかも、日本メタボ基準は世界で一番厳しい。これは始めから、メタボ割合が減らせない事を見越して、基準を設定しているに違いない。

 健康保険というのは日本のように逆ピラミッドの人口構成になる国では、もう成り立たない。だから、後期高齢者の後期は健保から切り離され、75才以上の後期高齢者保険に切り離されたのである。本当は税負担でなければ国民皆保険は理論上成立しない。では何故保険にこだわるのかというと、厚生労働省の利権と関連している。もしこれが、税法式になれば、厚生労働省の保険に関する縄張りは、財務省に移ってしまい、事務処理機関に過ぎなくなる。また、これは国民不在の議論である。国民は必要が税負担は本当に医療介護の財源になるならば、消費税の上昇になる事に耐えるだろう。しかし、この点に関して政府の信用が乏しい。消費税で集められた資金を政府が適正に活用しているかどうかは分るまでに時間がかかる。社会保険庁の体たらくを見ていると政府に信頼感が乏しい事が問題だ。

by katoujun2549 | 2009-09-13 21:50 | 医療介護福祉 | Comments(0)