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がんとの戦い

1.癌治療最前線報道の限界
 癌の治療手法は日進月歩で進むが、最先端のものが実際に適用されることはむしろ、少ない。医師の選択は以前から行われ、定評がある方法を選択するからである。選択肢がこの10年飛躍的に増えた事は事実であり、かつてのようにがん宣告が死刑宣告に等しい状況ではなくなった。しかし、毎年30万人が癌で亡くなっている事は事実である。この点には新聞報道とは大きな情報ギャップとなる。このことが又、医療への不信を招くのである。患者と医療側の情報非対称の傾向は癌治療では大きく、さらに、医師間においても情報格差が存在する。8割は同意見になるとはいえ、セカンドオピニオンが行われる理由もそこにある。がんの治療は闇夜の手探り状態である事は医師も良く分かっているのである。癌を完治できるのは初期の場合であるし、進行がんで治れば運が良かったとしか言いようはない。

2.放射線先端治療
 放射線先端治療である炭素イオン重粒子線、陽子線、は先端治療として脚光を浴びている。しかし、その費用が300万円を超えること、副作用が無い訳ではないこと、既に放射線治療がなされている場合、転移がんに関しては適用が難しいことなど様々な制約要員がある事はあまり報道されない。保険適用であるガンマーナイフや分子標的型抗がん剤なども効果のあるケースとそうでない場合も明確に存在することなども報道されない。

3.抗がん剤
 抗がん剤について考えてみよう。日本は抗がん剤天国である。進行性乳癌の抗がん剤ハーセプチンはHER2陽性という抗体反応の患者に適用されるが、それ以外の患者には効果がない。近年大腸癌に認可された特効薬アバスチンは1年程度の延命効果だが、費用は乳癌では保険外で毎月40万円もかかる。腺癌の特効薬リツキシマブは保険適用だが毎月20万円程かかる。こうした事がそれを選択されない患者の不安や医療への不審感を助長する。医療の現場では、常に選択と効率、費用効果も大きな要素であり、治療コードもそうした点を考慮した上で構成されている。要は、同じ効果であれば、従来型の抗がん剤や手術の方が選択の幅が広がるのである。ところが、一般にはそうした治療方法採用に関する判断基準はほとんど示されないまま、効果だけが喧伝される。

4.認可基準
 実際抗がん剤の効果は20%で認可され、確率的には効かない人の方が多い。何種類も試す事ができ、うまくヒットすれば運が良いというものであるし、国立がんセンターでは末期がんでは3種類効かなければホスピスを勧められる。ガン難民が生まれるわけであるが、3週類の抗がん剤を効果測定するには1年以上かかり、末期がんではその内に亡くなってしまう事が多いのである。1種類しか薬の無い種類の癌もある。これも何年かイレッサは問題になったが、効果のある人もいるので、死者を出しても使われる。すると耐性が出来て効かかなくなる。進行性の場合フィットする薬にあたる前に転移が進んで対応できなくなったケースもあり、抗がん剤の副作用も合わせリスクがそれぞれにある。膵臓がんといった難しいものでは効果のある抗がん剤も無い。TS1の効果はまだ実際には確立されていないが、大腸癌には使用されている。抗がん剤を3回投与して、腫瘍のサイズが半分になれば有効と考え、その程度の中途半端な薬が厚生労働省から認可され、投与されているのが臨牀の現実。これじゃ、患者の命を救えるものではない。
 日本で承認されていない薬の認可が急がれるが、実は日本程抗がん剤の種類の多い国は無い。先進諸国の倍が使われているが、効果について少ないものも多いのである。藁にすがる気持ちで高価な治療を求める患者は多い。きわめて短期的な効果しか無い免疫療法等も医師ですら親のためには収入を使い果たしても試みる。

5.神のみぞ知る世界
 命の問題は金次第だろうか、でも、莫大な資金を投入するような状態では選択肢が無い状態だから結局は助からない事が多い。悲観的な事ばかりではない。一方、進行がんで、抗がん剤がヒットし、10年以上延命できたケースや食事療法で延命できたこともある。がんの治療は患者単位で考えても良い程多様なのである。命のことは神のみぞ知るである。

by katoujun2549 | 2009-08-28 13:19 | 医療介護福祉 | Comments(0)