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 今回の多剤耐性菌アシネトバクターは帝京大学付属病院で多くの死者を出した。発見されてから半年、その情報は放置された。この病原菌は新しいタイプであり、帝京大学として報告義務を感じていなかったのだろうか。とにかく、医療人としての問題意識の低さには驚く。今日、多くの医療関係者はこの感染症の多様化に強い関心を持っているからだ。

 20世紀はその半ばでペニシンンが開発され、さらには不治の病と言われた結核に対するストレプトマイシンは医療の新しいパワーを与えた。細菌との戦いは人類が勝利したかのように見えた。長い間人類を悩ませたライ病、ポリオ、ペストなども制圧されつつあある。恐しい天然痘はすでに自然界には存在しない。ポリオの感染は今でもあるのだが、これはワクチンの菌から感染に至ったものである。
 ところが、世紀末から21世紀に入って、多剤耐性菌という新たな問題が発生してきた。MRSA黄色ブドウ球菌、緑膿菌、結核菌など、抗生物質に耐性を持つ株が生まれはじめたのだ。MRSAはバンコマイシンで退治できるが、これも新たな耐性を獲得する可能性がある。ツーリズムの拡大によって、海外から感染者が日本に持ち込むケースは、先般のスーパー耐性菌をはじめ、予断を許さない。NDMといったスーパ耐性菌は健康な人にも感染する。鳥インフルエンザ、SARS、新型インフルエンザなど、21世紀に入って毎年のように脅威にさらされている。日本人は喉元過ぎて、すぐに暑さを忘れてしまう無防備な国民だ。日本は満州の731部隊の人体実験などで、世界1の細菌戦研究のデータを持っていた。しかし,戦後これらは全てアメリカとソビエトに持ち去られ、この種の研究は日本では犯罪的となっていた。アメリカはかつてフレンチインデアン戦争で、天然痘菌のついた毛布を的のインデアンに贈って天然痘を感染させ、細菌戦を実際に行なった最初の国だ。アメリカは最近せん対策に毎年20億ドル以上使っている。

 もう一つの問題はテロや戦争である。細菌が兵器として使われる危険性が増してきたのだ。オウム真理教の事件以来、先進国はこの課題に取り組んでいる。ところが、震源地の日本は全くと言っていい程対策が出来ていないのだそうだ。特に、天然痘は種痘を止めているため、無防備だ。WHOで保管されていた株が一部流出しているという疑惑が有るのだ。かつて人類に多くの災禍をもたらせた天然痘は自然界では絶滅した。WHOで最後の株を廃棄すべきか、研究用に保管すべきかの議論があった。論争の末、1基だけ保管されたものの一部が盗まれているという噂だ。これが万一増殖され、テロに使われたら何千万人もの人が亡くなるだろう。

 天然痘の致死率は4割を越える。罹ってしまえば、対症療法しかない。そうした中で、助かる人もいるというのが不思議だ。これは人間が本来持っている治癒能力だ。血液中の白血球、リンパ球、好中球等の働きだ。こうした、人間が本来持っている治癒力をいかに強化することが出来るかは、癌に対する戦いにも通じるのだ。
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 病院は院内感染には大変な努力をして感染防止に務めている筈なのに。今回、帝京大学病院で、アシネトバクター菌という抗生物質の効かない耐性菌で46人の集団感染が起こり、9人死亡した。おまけに緑膿菌にも4人感染し、1人が敗血症で亡くなっている。一体これはどういう事だろう。担当医は院内感染を認識していたが、抗生物質が効いた患者がいたので報告しなかったという。随分ずさんな病院だ。病院というのはこうした院内感染のリスクが高いことが分っている。どこでもその対策には頭を痛めている。

帝京大学は当初、院内感染はよくあることだし、感染者は恐らく高齢者や体力が弱った患者で、万一入院の原因となった地病でも亡くなるリスクの高い患者だったのだろう。だから、こんなよくある事で病院の評判を落とす事はないと当初は黙っていた。実はどこの病院でもあることで、今回届けを出さなかったから問題になり、明るみに出ただけなのだろうか。

 アシネトバクター菌も緑膿菌も抗生物質に耐性がある困った細菌である。実は緑膿菌はどこにでもいる。患者の体内にもいて、所謂、日和見感染によって増殖するのだ。普通の人で抵抗力のある人には感染しても大事には至らない。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌については今のところバンコマイシンで対応する事が出来る。問題は緑膿菌であり、こうした新種の耐性菌が海外から侵入してくることだ。多剤耐性菌とはいえ、普通は感染力の弱い細菌だし、病院のマニュアルにも無かったから、油断していたのだろう。それにしても警察の立入り捜査というのはいただけない。マスコミに叩かれたからやるのか。彼らに医療が分るのだろうか。

 小生の体験では、心臓手術のとき、回復病室でバンコマイシンの点滴を受けた。感染症に罹った可能性があったのだろう。炎症反応が治まらなかったからだ。しかし、この点滴の使用は自分には知らされておらず、自分から看護師に聞いてはじめて分ったので、不愉快な印象があった。しかし、バンコマイシンは高価な薬で、敢えてこれを使ってくれたことで炎症が収まったのであれば感謝すべき事かもしれない。

 病院には感染症対策の専門部があったというが、機能していなかったことになる。病院というのは医師だけでなく、看護師、他の管理職員などが、きちんと機能しなければ何が起こるか分らないリスクを抱えた施設である。決して安全なところではないという感覚が大切である。
 帝京大学付属病院は病床数1000床を超す大病院だ。大病院程院内感染リスクは高いのかもしれない。組織的な体制のある病院でこの状態では、地域の中小病院の実態はどのようなものだろうか。点滴や経管栄養の管、ポートの挿入などの際、感染リスクが高いのだ。自分の母親も、病院で敗血症になって亡くなったが、人ごとではない問題なのだ。
 
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