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 教会のHさんから突然電話がかかってきた。杉並で胡同の理髪師という映画の券があるので見ないかというお誘いを頂いた。以前、岩波ホールで映画を見た時に予告編にあった映画だ。日本女子大の婦人平和団体のイベントである。二つ返事でお誘いに乗ることにした。
 ハスチョロー監督06年中国作品、北京の下町、胡同を舞台にした人情物語。90歳を超えた一人暮らしの理髪師を主人公に、庶民の日常風景が静かに描かれる。主人公を演じるのは、実際の理髪師チン・クイ。出演者はほとんどが映画初出演ながら、チン老人の豊富な人生経験からふと語られる味のある言葉の数々。チンさんは今なお健在で、この映画を機に日本にも来ている。
 世界ふれあい街歩きというNHKのレポート番組がある。等身大の街の表情が伝わってくる。これを思わせるような、ドキュメントタッチの作品。普段の、主人公の目線で胡同の町並みと、日々の生活が味わえる。胡同は元の時代に始まり、700年前からある。チンさんの人生の8倍もの歴史を持った街が今解体されようとしている。4年前、オリンピックまで1000日前の北京である。そこで暮らす人々の人生。そして、猫や鳥も描かれる。街とともに人々の暮らしと人生がある。チンさんの家も解体の対象になっている。
 93歳の理髪師チン爺さんは、北京の700年前から続く庶民の街、胡同に住む。狭い部屋に質素な家具。単純で欲のない生活は長生きの秘訣だ。日課は朝6時に起床し、午前中に、昔なじみの顧客の家を三輪自転車で訪問して散髪すること。午後は友人たちと麻雀を楽しみ、夜9時には就寝する。朝は毎日5分遅れる時計の音で目を覚ます。何十年も変わらない日常。辛亥革命、日本軍の進駐、共産革命から文革、そして資本主義化と歴史は移る。しかし、この街は変わらなかった。しかし、その胡同も市の開発で解体される運命にある。長年の習慣も、得意客が次々と亡くなる中で少しずつ変化していく。訪問した家で高齢の顧客が亡くなっていた。そこにいた黒毛の猫を引き取る。お得意先の老人は息子の家に引っ越したが、チンさんのひげ剃りを忘れない。その老人のところに訪問理髪にいくが、息子夫婦との介護生活に寂しさを感じる。嫁との折り合いが悪いのだ。息子は金持ちだが礼金を受け取らずに帰ってしまう。チン老人は体も弱っているが、まだ、麻雀仲間もいる。モツ料理の店主とも友人だ。いつも決まった席で食事をする。仲間の話題も葬儀のこと。そろそろ自分の葬式のことも気になって、葬儀屋に電話して準備も始める。20年有効な身分証明書に切り替えた。葬式用の写真と遺言もテープにとる。そんな中で、長年愛用の時計が止まってしまう。朝、チン爺さんは目が覚めない。そこに、いつも金を無心にくる息子がやって来てびっくり。曾孫が生まれたことを報告に来たのだ。チン爺さんは寝坊しただけだった。悠久の時間も残り少なくなる中、人生を振り返り、緊張感のある時が流れていく。

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