2017年 08月 15日 ( 1 )

元外務省次官の薮中氏がトランプ政権になってからの半年の経緯、トランプ氏というこれまでの大統領と異なる個性の持ち主がどのように行動してきたのかを整理している。日米関係の20年史といった内容になっている。正直なところ、退屈な内容。官僚の講演会がそうだが、どうしても私論が少ない。教科書を読んでいるような感じ。とはいえ、藪中氏はかなり踏み込んだ意見を述べている。日米関係のルールといっても庶民の関わるような内容ではないからだ。太平洋戦争だってアメリカとどんな交渉があったかなど、当時は知るよしもなかった。それが、とんでもない結果となった。
トランプを支える政権内部のスタッフについて解説してくれる。ホワイトハウスの権力者たちの興亡、トランプ流のやり口、トランプを産んだ国内事情、1990年代の日米構造協議など著者が外務官僚として歩んだ日米関係を振り返る。この20年の変化に驚くばかりである。変化というのは日本側の変化であり、アメリカはそれほど変わっていないのではないか。トランプ政権と中国の習近平との関係は実は緊密である。 中国人のアメリカ国内人脈 は日本の比ではない。
バノン首席戦略官やクシュナー大統領首席補佐官マクマスター、コンウェイといった耳慣れない権力内部の人物像が紹介されている。一方、ティラーソン国務長官、ペンス副大統領、マティス国防長官などの人物については語られない。マクマスター国家安全保障問題補佐官がNSCの中心として、今回の北朝鮮ミサイル問題で、日本の小野寺長官と会見している子から、彼とマティスとの連携が注目される。ロシアゲート問題ではFBI長官の解任が話題になった。そもそも、共和党はCIA.民主党はFBIを情報源としている。このあたりは構造的なヘゲモニー争いが水面下で行われているのだろう。

この辺りが外務省事務次官や北米課長を勤めた薮中氏の見方なのである。しかし、この本の題名のような新ルールといった提言には至っていない。最後に日本人として文化を大切にしようとか、藪中氏の私見述べられている。もっと外務省のの内幕を知りたいところ。この半年の新聞報道を整理した内容である。

「大統領が就任して半年、先週はヴァージニア州で白人至上主義者のデモに反対するグループとの衝突で死者が出たことや、北朝鮮の金正恩とのミサイル実験に関する応酬などで、世界に衝撃を与えている。アメリカは州によって風土、社会、経済、さらに歴史や道徳も異なる。民族構成も様々で、これらは昔からのことで、トランプ政権への反応も様々である。

6月末にはサンフランシスコ郊外のフェアフィールド市に住む友人を訪問したが、彼はトランプ大統領をアメリカの恥と言って、いつか弾劾され、4年は続かないと言っていた。西海岸はハイテクやバイオで海外との交流も盛ん。東海岸のニューヨークやマサチューセッツなどは金融や学術などで国際化が進んでいる。ところが、中西部やメキシコ国境の諸州は国内問題に悩んでおり、トランプ支持の地盤である。これらとサンフランシスコとは全く雰囲気が違うのであろう。人種平等とか、アメリカンドリームの現実も実態と理想とは異なり、格差がある。今に始まったことではない。それでも、アメリカには自由とか、合理的な生活、個人の尊重といった、アジアやヨーロッパには無い価値観が独特の暮らしやすさ、また、進取の気性を生んでいる。これが国家発展の原動力である。ところが、こうした公平、公正、自由が時に濫用や、不利益の元になっている。トランプ支持の背景にはそうしたアメリカの国家理念の恩恵を受けていない人々も多くいるということである。
西海岸に行ってみて、日本人の影の薄さには驚かされる。それに引き換え、中国人、韓国人はやたら目に付くのである。習近平とトランプの関係もこうしたアメリカの中国人人脈の層の厚さを基盤にしている。国家的な経済力、軍事力をみると日本は影が薄い。アメリカにとって25%を占める中国との貿易赤字や北朝鮮の核問題は大きな関心事だろう。それに引き換え日米の新ルールなど、仮にあってもアメリカにとって重要ではないだろう。アメリカファーストであり、アメリカ側の対日本シナリオを書く人がいないことがことが今後の問題であろう。
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アメリカファーストというのは今に始まったことではない。しかし、トランプから日米関係の構造は変わった。彼は全て自分本位、そして「反オバマ」なのがトランプ流。これまでリチャード・アーミテージ氏とジョセフ・ナイ教授が作成したレポートが日本の政策に大きな影響を与えていたが、今後日本はトランプ氏やペンス副大統領との関係を維持しつつ、新たな指針を掲げなければならない。かつてのシナリオは消え、新しいシナリオを誰が書くのか。かつて日米貿易問題や六カ国協議を担当、誰よりもアメリカを知る元外務省事務次官が、当時の経験からの教訓も交えながら日米や世界の情勢を読み解く。現実はどんどん進み、北朝鮮問題についても、中国に関しでも新しい知見を感じなかった。
【目次より】●ホワイトハウスの権力者たちの興亡 ●トランプ流喧嘩作法 ●麻生・ペンス協議メカニズム ●一九九〇年日米経済摩擦に学ぶ ●トランプ政権に対北朝鮮戦略はあるか? ●なぜ六者会合は失敗したか? ●アメリカ頼みの一本足打法からの脱却 ほか


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