2010年 08月 29日 ( 1 )

アメリカ合衆国の健康保険

 アメリカ合衆国では健康保険に入っていない人々が4500万人もおり、これが不況の影響で拡大していることがしばしば伝えられる。しかし、移民を受け入れて来たアメリカにはそれなりに事情がある。艱難辛苦の結果、今日の地位を得てきた二世三世と移住したばかりの国民との政策に対する期待感が違う。移住して来たばかりのアメリカ人や黒人等の低所得者層は保険に入る収入も無い。こうしたグループが日本とは桁違いのスケールであるということだ。エスタブリッシュメント達を始め、中間層はこれらの人々に対して厳しい感覚を持っている。何故、自分達の税金が彼らに使われ、そして、自分達の地位が脅かされなければならないのかということだ。

 自助努力の国アメリカでは個人的な領域である健康という問題に国家が介入することへの嫌悪感もある。アメリカの保険制度では企業のフリンジベネフィットとして健康保険が用意されている。また、マネージドケアという形でHMO制度に個人加入している人もいる。高齢者でればメディケア、低所得者はメディケイドである。さらにPPO,POSという仕組みもあり、100を越える多様な仕組みがある。これが、又膨大な医療事務費を生み出し、非効率につながっている。さらに積み立て方式の健康保険もある。HSAという医療貯蓄口座でブッシュ政権時に作られた。財形のようなもので、医療費に拠出した分は非課税である。しかし、こうした保険負担は企業にとっても、個人にも重圧となっている。また、高度医療は進化するが、コストもかかる。一部の人の高いニーズを満足する為に膨大な医療費が使われている。アメリカの医療費はGDP比世界一であるが、医、命の平等という点からほど遠い。これが更なる保険料の上昇と医療費の上昇を招いていることに手を打つべき時期に来ている。

 企業福祉としての健康保険は戦争中の統制経済の中、給与に差がつけられなかった企業が、健康保険のメリットの違いで雇用確保に走ったからである。かつてクリントン政権が国民皆保険を法制化しようとして失敗したのは、医師会からのロビー活動で、猛烈な反対運動を起こされた。皆保険絵では医療の質が確保できないという理由である。テレビ番組でアメリカの病院が出てくる。ERなどはまさに救急救命室ということで、患者の所得レベルは低く、緊急に駆けつけてきた患者を迅速に処理しなければならず、ドラマの中で見られるが、医療ミスがあるし、患者の方も銃撃で重症を負った人とか、交通事故などで、必ずしも医療レベルは高くはないが、様々な患者に一人の医師が対応する場面が印象的だ。だからそうした所では医療事故も多く、医師はしばしば訴訟に巻き込まれるし、実際その治療にかかわるミスで、年間44,000人〜98,000人が亡くなっているという統計もある。平均的な医療水準は必ずしも高くないのだ。 

 アメリカの病院の医師の数は日本の8倍、看護師の数も多く、その中でも事故が多いの。確かにアメリカの高度医療のレベルに対して、普通の人はこれを必ずしも受けられる訳でもなく、医療保険の査定と、事故の恐怖とも戦わなければならない。それに比べて日本の医療は低い医療費と、一定レベルの医療水準が確保されていると言う点で世界的には高い評価を得ている。ただ、地域格差とか、病院格差、情報公開が進んでいないのである。
 
 ブッシュ政権においては市場原理主義がまかり通っていた。当時の医療政策では薬代の補填措置が社会保障て行なわれるようになった。しかし、アメリカの高度医療はコストも高く、高度医療であるほど費用はうなぎ上りになる。そこで保険財政が圧迫され続けるという悪循環に陥っている。オバマ政権はとうとう2010年4月に国民皆保険の法制化を議会で可決。新しい皆保険制度が始まる。


HMO,POS,PPO
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