「憲法改正」の真実 樋口陽一  小林 節  集英社新書

憲法改正」の真実 樋口陽一  小林 節  

北朝鮮のミサイルや核、尖閣や竹島問題、国際テロなど果して日本の法制は対応できるのか、疑問点が多い。自衛隊の位置付けも憲法の課題である。しかし、改正はすべきという議論において念頭に置くべきことは、どんな勢力が、何を狙って、いかなる手段で、憲法を改正しようとするか、また、国際的、歴史的、国内問題の背景があるのかである。その答えをこの対談は明らかにしている。日本を取り巻く危機に乗じ、憲法を改正しようとする連中の目指すところは何か。
改憲派の中で、一大勢力は日本会議に加わり、自分の正体を明らかにしない怪しい人々である。彼らの中には戦中に権力側にあり、戦後もエスタブリッシュメントであった連中が多く含まれる。安倍首相の一族や、国民の感覚とは遊離した、権力に繋がろうとする、森友学園の籠池氏、加計学園のオウナー、一部の官僚たちである。彼らの目指す変革は日本の歴史上最悪だった、終戦までの10年間の体制を目指している。最悪の思想なのである。これより、自由民権運動や大正デモクラシーの知識人より遥かに無教養で過去の失敗や敗戦を容認しない、とんでもない頭の持ち主たちである。
「護憲派」・「改憲派」に国論を二分して永らく争われてきた「憲法改正」問題。安倍政権が国会の主導権を握り、着々と進めてきた安保法制、憲法解釈、新自由主義が実は国民の不安を利用し、国民の願いとは別の方向性を持ったものであることを明らかにする。自民党による憲法改正草案には、「改憲派」の憲法学者も驚愕した。これでは、国家の根幹が破壊され、日本は先進国の資格を失う、と。自民党のブレインでありながら、反旗を翻したのは「改憲派」の重鎮・小林節。そして彼が、自民党草案の分析を共にするのは「護憲派」の泰斗にして、憲法学界の最高権威、樋口陽一。
 ふたりが炙り出した、自民党草案全体を貫く「隠された意図」とは何か? 一体なぜこのような奇妙な憲法案が出来上がったのかが明らかにされている。安倍首相の背後にあるものが、近年、日本会議、森友学園の籠池氏、稲田元防衛大臣の起用、また、加計学園問題への首相の関与などを産み出している。それは、戦前の日本を破滅に導いた軍部を軸に長い歴史の中で育まれてきた。地方の格差、国際化や情報社会の流れを無視。今の平和や経済の繁栄を戦後の平和、個人の尊重、平等な権利と結びつけたくない戦前のエスタブリッシュメント達の子孫が回帰しようとする世界の再現である。回顧趣味のような家族主義。個人より公益。公正より、競争。公平より情実。彼らの攻撃の対象であり、活動の原点が現行憲法であり、東京裁判であり、権威の原点が天皇制である。日本がポツダム宣言を受け入れたことは忘れている連中。自民党の改憲案は必ずしも総意ではないかもしれないが、選挙の票が絡むとなりふり構わない。小選挙制によって党の支援が無ければ生きて行けない。安倍首相を取り巻く人々が驚くほど戦前の思想に懲りかたまり、教育勅語や個人の尊重の否定、家族主義が共通項である。既に日本はテロ対策の名のもとに共謀罪を成立させ、治安維持法を復活させた。ヒトラーがシャハトを使って軍事資金を確保し、ゲーリングが軍事費を湯水のように使ったことを想わせるように黒田日銀を手先に、国家資金を安陪首相の政権維持や外交に使おうとしている。オリンピックなどはその一部である。自衛隊はアメリカ軍の下請け、二軍に従属させ、稲田を使って情報を操作し、あ支配下にしようとしたのである
。どっこい、そうはいかない。安倍一強支配の実態が明らかになった今、彼らの改憲は壁にぶつかっている。
彼らが自衛隊を国軍に位置付けたいなら、徴兵制の問題も出てくる。変革の延長戦を無視した主張は出口の無い、日米開戦と全く同じ無責任な政策である。
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by katoujun2549 | 2017-08-10 20:32 | 書評 | Comments(0)