ロシアという国は実はよくわからない

 冷戦時、我々はロシアというより、ソビエト連邦として、共産主義国家の代表として、マルクスレーニン主義を学べばわかったような気になっていた。しかし、ロシアというのはロシア人自身もなかなか定義しにくい複雑な構造を持っているようだ。広大な国土、多様な人種、民族、言語、宗教が混在し、国民国家として統治することが難しい構造だ。しかし、今や、プーチンの支持率は85%を超え、今後混迷が予想されるEUやトランプ政権のアメリカよりはむしろ安定した国家ではないか。これをまとめたプーチンはかつてのツアー体制を作ったイワン雷帝やピョートル大帝に匹敵する指導者かもしれない。レーニンやスターリンは国民に人類史上まれな大悲劇をもたらしたリーダー。にもかかわらず二人は歴史的功績も認められている。同様に彼がチェチェン紛争を弾圧し平定したこと、さらに、クリミアを奪還したことは大きな支持につながっており、日本の北方領土に付け入るすきを見せないのは歴史的な経緯があることを日本のマスコミは報道しない。今の時点で北方領土の話が全くできる状態ではないことを安倍総理は分かっているのだろう。プーチンの日本での記者会見でロシアの記者が、ウクライナ問題について質問したことは、ロシアの事情を日本社会に知ってもらいたいというロシア人の願いが込められていたのだ。ロシアを理解するにはキリスト教との関係を先は頭に入れねばならない。
「古儀式派の人々と教会」
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ロシアは共産主義政権時代の唯物主義無神論の経験があるが、実はこの中にもキリスト教の影響は大きく残っており、ロシアの無神論者は今や純粋なキリスト教徒になっているという。歴史的に見て、ロシアの基督教はイスラムのコンスタンチノーブル支配で1453年によって東方教会が崩壊し、その後キエフでキリスト教に改宗した時代からロシア正教として東方教会を引き継いだのである。東方教会は第二のローマであるコンスタンチノーブル、エジプトのアレクサンドリア、シリアのアンティオキア、エルサレムに主教を置いており、988年にキエフのウラジミール大公が改宗したことでロシアに広まった。その後、モンゴルに席巻されたりしたが、イワン三世(1462年~1505年)がモスクワの大公として全ロシアを支配する位置を得たときにモスクワに東方正教は中心を移し、ロシア正教となった。それまで、聖書がギリシャ語で書かれ、守ってきたギリシャ正教が東方教会では中心的な地位を占めていたが、オスマン帝国に支配されてからはロシア正教によって国家と宗教が合体した。そのころ、ヨーロッパでは宗教改革が行われ、プロテスタントが生まれたが、ロシアではこれは無かった。このロシア正教も地域的にも幾つかの派がある。ロシア正教としてニーコン総主教が改革をしたときに反発があり、ロシアでも古代回帰の運動が起きた。プロテスタントもそうだが、キリスト教の改革というのは全く新しいものを作るというより、むしろ原始キリスト教のような創設期の過去に回帰しようという形で行われる。ニーコンの改革に反発し、古代キリスト教に戻ろうというグループが古儀式派と言われ、彼らの改革運動は19世紀まで国家から弾圧された。ロシアというのは3つのルーシーからなり、それぞれが宗教と政治を一体のものとした。ベリコルーシー、ベラルーシー、マロルーシーである。キエフルーシーの末裔としてマロルーシーがあり、コサックが中心であった。ロシアにとって重要なのは、カトリックポーランドと抗争していたフメリニツキーとペレアスラブ協定が1654年に成立し、ロシア帝国の基礎が作られた。その後、300年目にクリミアをウクライナ共和国にフルシチョフが譲渡し、今日のウクライナ紛争の種が植えられたのである。ロシア人がコサックの反乱の物語として隊長ブーリバ、タラスブーリバの物語をゴーゴリが書いたことを記念し、一大スペクタクル映画をその没後100年に制作したことも関係している。
 古儀式派というのはヨーロッパのプロテスタントに相当し、長い間、弾圧を受けてきた。その古儀式派は正式な教会としては認められなかったがゆえに、地下にもぐり、ロシア革命のソビエトの基礎となったと下斗米伸夫氏は「宗教地政学から読むロシア」という著作で述べている。この古儀式派がどのようなサクラメントを行っているかは自分は知らない。しかし、今も、この古儀式派信者は1924年時点で3500万人いたといわれている。唯物論無神論の共産党政権下、こうしたロシア正教の信徒はロシア民衆に根付き、独ソ戦においてもスターリンは彼らを弾圧することはできず、軍事的には利用したのである。ドイツ軍のモスクワ包囲を解放したシベリア師団はシベリア開拓に追われた古儀式派が主力だった。ソビエト崩壊ごロシアでのキリスト教が急速に復権したのだが、信仰は全く失われず、連綿と引き継がれ、プーチンなど現政権においても多くがキリスト教徒なのである。こうした現実は日本のマスコミは全く触れず、朝日新聞を中心に親ソ派が無神論ソビエトを報道し続けたのである。政治と宗教が一体となっていることは今回トランプの大統領就任いても教会で礼拝し、式典で聖書の上に手を置いて宣誓した姿が見られる。キリスト教がどれだけ政治と一体となっているかを日本のマスコミは報道しない。ウクライナやクリミアはロシアにとっての歴史的生命線、これらにNATOが食い込んできたことは約束違反でもあり、耐えられない国民感情といえるのだ。
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by katoujun2549 | 2017-01-23 12:05 | 国際政治 | Comments(0)