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ジムトンプソン失踪事件を推理する 今だから解明できる

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東南アジア美術に囲まれ、東洋趣味の極地のようなインテリアのジムトンプソン邸
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上段;キャメロンハイランドの茶畑 下段;ジムトンプソンが失踪した月光荘
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ジムトンプソン失踪を推理する
1968年タイのシルク王と言われたジムトンプソンはマレーシアのキャメロンハイランド、タナラタの丘にある月光荘という別荘から忽然と姿を消した。日本ではニュースにならなかったが。彼はタイシルクのブランド化に成功し、西欧ではジムトンプソンブランドとして、ヴォーグ誌に取り上げられ、また、映画「王様と私」の衣装やデザインにも使われた。プリンストン大学を卒業後、第二次大戦中は諜報機関OSSに所属したが、この組織は戦後CIAになった。東南アジアの美術に造詣が深く、シルクビジネスの成功により大富豪になったことで有名だった。戦後もアメリカの東南アジアの情報通として諜報員との役割も続いていたと言われる。彼の失踪にはあらゆる事件を想定した大捜索が行われ、米軍も支援し、一民間人に対するものとしては異例で話題になった。それだけ彼はアメリカの重要人物であった。
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今なおジムトンプソンのビジネスはタイ経済に貢献している。彼の屋敷は美術館として観光名所になっている。
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失踪当時はアメリカのベトナム戦争が泥沼化しつつあり、マレーシアの山岳地帯、特に北部からタイ国境、ラオス、カンボジャのあたりは共産ゲリラが跋扈していた。だから、CIAとも関係のある彼は共産主義勢力のターゲットになったかもしれない。また、今日も混乱を繰り返すタイの政治家にも人脈があり、アメリカに繋がった彼の存在を邪魔と思うグループもいた。今確かなことは、ジムトンプソンは生きていないということだ。ベトナム戦争が激化する中、タイの国境では麻薬の生産が行われ、タイシルクの生産に必要な桑の栽培を農民に勧めたジム・トンプソンに麻薬組織が危機感を抱いたことも噂になっていた。彼の美術品発掘には遺跡の盗掘も絡み、裏社会の敵もいただろう。彼の失踪の推理上はアメリカのベトナム戦争も捨てがたい関係であるが、これまでに上げた誘拐動機のすべてが絡み合っていたかもしれない。謀略は幾つもの顔をもつことが多い。彼はタイの農村に出掛け桑や蚕の増産や絹糸の製造に力を注ぎ、情報通の彼がケシの栽培を知らなかったはずは無い。諜報機関にとって麻薬は資金源である。中国戦線でも児玉機関などの闇社会が仕切り、岸信介も背後にいた。その甥、安倍晋三を中国は絶対に許さない。今でも多くの人が麻薬の密売に絡んで消されているではないか。オーム真理教のナンバー2村井秀夫も消された。これはイニシエーションに覚醒剤を使ったからで、逮捕されることが明らかになった時点で口封じされた。
戦争の影には諜報やゲリラの資金源として麻薬が結びつくことは歴史の常なのである。戦争においてむしろ麻薬は積極的に使われた。モルヒネは負傷兵の鎮痛剤
だし、かつてはヒロポンが日本軍兵士の眠気を防ぐために使われた。ドイツでは電撃戦で疲れきった兵士を限界まで使うために覚醒剤が使われた。ベトナム戦争ではヘロイン、LSD、覚醒剤が開発された。戦闘の恐怖を乗り越えることも出来る。軍は麻薬の供給源でもある。黄金の三角地帯は今尚健在である。現代も中東の紛争の裏で、アフガニスタンは大きな麻薬拠点であり、ルートである。政府側だけではなくゲリラ側も負傷者にモルヒネは必要だし武器の購入にも資金源となる。
貧しさと戦争、人の不幸と麻薬は結びついている。ネットワークには大抵、軍の輸送ルートが絡みやすい。大量の物資が輸送されるし、横流しされるものは軍需物資や武器にまで及ぶ。そんな中で、麻薬は普通の税関や港湾の検疫などの目を逃れやすいと思われる。

ジムトンプソンは散歩中に虎に食われたという説もあるが、捜索範囲からはそうした痕跡は無かった。しかし、当時は軍事と共産勢力、麻薬は必ず繋がっており、彼がそうした落とし穴に嵌ったかもしれないことは想像できる。松本清張の熱い絹という推理小説もその線で書かれており、なかなかの着眼点である。彼を始末したのは意外にも、身内かもしれない。何故なら、その後、5ヶ月後にマサチュウセッツ州にいた彼の姉も誰かに殺害され、迷宮入りになっているからである。日本の下山総裁事件もそうだが、アメリカという国の裏側には暴力が潜んでいる。ケネディの暗殺もロバートケネディの暗殺も記憶に新しいころである。タイの政敵がわざわざアメリカ在住の姉を殺害しに行くとは考えにくいからだ。CIAのルートを活用してタイシルクの大産業を築いた彼がベトナム戦争の背後にいた産軍複合体や麻薬を資金源とする別のCIA協力者の邪魔者になったことは推定できる。彼はCIAの中で成功し、結局CIAの謀略の中で人生を終えたのではないだろうか。謀略に育てられ謀略の中で死んだ。人生は連続し、栄枯の中に死の理由も存在しているのである。
『ジム・トンプソン――失踪の謎』
   1998年 ウィリアム・ウォレン著という書物も機会があれば、探して読んで見たい。


シルク王ジム・トンプソン失踪の謎解きに終止符? マレーシア共産党による殺害説

2017年12月7日(木)18時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)
https://www.newsweekjapan.jp/amp/stories/world/2017/12/post-9068.php?page=2。





小説熱い絹に登場するスモークハウス
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by katoujun2549 | 2016-09-19 23:21 | 国際政治 | Comments(8)
Commented by kazuyo at 2020-08-04 13:26 x
はじめまして。
「熱い絹」「ジム・トンプソン失踪の謎」を読んで興味を持ち、こちらのブログにたどり着きました。
「CIA」による身内の関与という推理は、ウォレンも訳者の吉川勇一も触れることのないあっと言わせる発想で、正直驚きました。
ウォレンは、トンプソンがCIAに所属していたということさえ一笑に付していますし、
リチャード・ヌーンというトンプソンの友人は、「生きているにせよ、死んでいるにせよ、トンプソンはジャングルにはいない」と言い残して亡くなっています。
ウォレンの著書は、トンプソンの伝記的要素を下地に、彼の人生に置けるさまざまな背景を描いており、それだけでも一読に値しますし、吉川氏のひねりある文章も一気に読ませる力量のある訳となっています。
ぜひご一読されてください。
Commented by katoujun2549 at 2020-08-06 01:06
> kazuyoさん
ありがとうございます。「ジム・トンプソン失踪の謎」は是非読みたいです。自分はジムトンプソンがCIAとは思いませんが、むしろその設立にも関わる当時の工作員の大先輩だったと思います。彼の養蚕事業や古美術の収集は当時の麻薬ビジネスとは相容れないものだった。背当時のベトナムやラオスの紛争と麻薬は結びついています。自分は麻薬のビジネスの陰には軍が利権を持つに違いないと思っています。今のアフガンも麻薬の産地です。中村博士の銃撃死事件も彼の真面目な灌漑事業は裏社会には邪魔だったのかもしれません。オピオイドは荒地でもよく、灌漑でまともな悪物ができるようになると裏社会は困るのです。
Commented by kazuyo at 2020-08-06 20:10 x
メッセージをありがとうございます。
おっしゃる通り、彼はOSSの工作員として活躍し、抗日本対策としてタイへ潜入する1945年、セイロンを飛び立ったまさにその途中、日本が降伏したのでした。
政治的背景説(タイの中枢を知りすぎて消された)も、CIA説もある程度説得力はあるものの、著書の中ではこんな疑問が投げかけられています。
あの日、トンプソンがピクニックを共にした3人と、その後別行動をとるのがなぜ分かったのか?
ピクニックから帰ってリン夫妻とマンスコー夫人は午睡したのに対し、トンプソンはベランダで過ごすことを選択した。
拉致しようと狙っていた相手は、たまたま偶然にそんな好機に恵まれたのか??
そもそもマレーシア旅そのもが「行き当たりばったりの旅」で、計画的ではなかったと云われています。

katoujunさんご指摘の裏社会との利権問題というのも興味深いですが、いずれにしろ、誘拐説は、ここを説明できないと若干説得力に欠けるように思います。

では、ジャングル事故説か?
これも、アメリカ軍が加わってかなり徹底的に捜索したし、ジャングルを知り尽くすサカイ原住民も見ていないと明言、結局何ら痕跡は見つからなかった。
行方不明になって、未発見でも、何年かのち、ハイカーが偶然に服の切れ端とか見つけてもよさそうなのに、それもない。

61歳のトンプソンは、その少し前に事務所を移転させたり、写真集の出版も進めていたなど、相変わらず意欲的で元気、気力の衰えはなかったそうです。

一方、松本清張の「熱い絹」は「ジャングル密室」の背景を生かし、ピクニック写真をアリバイに使うなど、こちらの方はしっかり起承転結し、改めて清張の着眼の素晴らしさ、構成力に、何度読んでもワクワク感が止まらないです。

1967年からすでに53年、もうこの事件は解決しないのでしょうか。
彼の残したブランドが、今なお隆盛なだけにいつか真相が分からないかなと思います。
Commented by katoujun2549 at 2020-08-06 23:25
> kazuyoさん
Amazonに今日、中古本を注文しました。4年前、自分はキャメロンハイランドの月光荘にいってみました。タナラタから車で10分ほどの人里離れた丘陵の上にありました。タクシーの運転手は場所を知っていましたがあまり人が来ないようでした。建物は侵入禁止になっていて、管理人の女性がいました。今は宿泊も可能だそうですが、行ってみてとても寂しい雰囲気で、霊能者なら何かを感じたかもしれない。勝手な推測ですがジムトンプソンの遺体は建物のどこかに埋められているような気がします。
Commented by kazuyo at 2020-08-07 12:34 x
katoujunさま
読了後の感想、ぜひ教えてくださいませ。
楽しみにしております。

私もいつか、月光荘に行ってみたいです。
Commented by katoujun2549 at 2020-08-08 10:04
> kazuyoさん
ご返信有難うございます。
昨日本はAmazonから届き、今読んでます。立派な内容ですね。読後感は後日送らせていただきます。勝手な憶測ですが、ジムトンプソンは散歩から帰って来たところ誘拐され車で運ばれたと思います。リン夫妻は不思議な人物だと思います。3人のうち誰かが嘘をついていると思います。月光荘が昔ゲリラのアジトになっていて、何人も人が殺されていたとは知りませんでした。そんな家をよく買いますね?
Commented at 2020-08-13 17:49
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kazuyo at 2020-08-17 17:09 x
katoujunさま
毎日暑いですね。
楽しく読書を続けられてることと思います。

月光荘は、殺人のあったいわくつきの家で、戦争などの影響もあって安く手に入ったのでしょうね。
お盆休み、清張の方をまた読み直しました。何度読んでも面白いです。
やはり、トンプソンは「ジャングルで迷ったのではない」「自分の意思で、行方不明になったのでもない」と改めて強く感じます。
何がしかの陰謀に巻き込まれた可能性が大きいのではないかと。
その上で、長い年月が経っても関係者から何の情報も漏れて来ないのは、相当強固な組織が関与したのかとも推測されます。

それにしてもなぜ殺されなければならなかったのか。

OSS引退後(多少の繋がりはあっても)、20年もタイシルクと古美術という、自分の仕事と興味に邁進、貫徹した人がなぜ?

これだけの人物だけに、全うされた一生涯を見たかったと、つくづく残念に思います。
katoujunさんおっしゃるように、月光荘のどこかにひっそりと埋められているのかもしれませんね。