日本会議 山崎雅弘著:オリンピックの陰で行われている憲法改正運動 

 日本会議という不思議な集団が、安倍政権の陰となってうごめいている。安倍総理の頭は憲法改正の仕組み作りでパンク寸前だ。日本会議は何も圧力団体というわけでもないのだろう。それほど恐ろしい動きをしているわけではないかもしれない。しかしながら、現政権の表向きの姿と違い、投影されているのは奇怪な影である。戦前の国家神道回帰の怪物の影。全くの驚きである。日本会議の価値観はきわめて古臭く、政治の世界で権力があるわけでもない。ところが、現実の政治ー憲法改正はこの思想に沿って行われている。櫻井よしこはその巫女のような存在で会を盛り上げている。山崎氏によると、日本会議と神道政治連盟との結びつきが鍵である。日本会議は38,000人の会員構成だが、300人を超える国会議員が会員である。これだけの議員が保守政治家として行政に影響が無いわけがない。彼らに共通しているのは今の日本国憲法を嫌悪し、東京裁判を否定し、戦後の歴史を自虐史と捉えている。そして、彼らが向かう方向は、何と、戦前の政治への回帰である。大東亜戦争を肯定し、敗戦の原因に対する反省が全くない。人権の尊重を国家の下に見て、個人の権利から生まれる自己主張を批判し、弱者への配慮に無神経である。ナショナリズムの世界的な潮流にベクトルが合っているようにも見える。日本人をダメにした憲法。日本人の価値観に合わない。嫌な人間像を生み出した憲法。戦後のダメな部分は全て憲法と東京裁判史観のせいであるときめつける。
 日本会議のメンバーは戦後の日本をそれほど憎むべきものと考えているのだろうか。今日我々が平和で繁栄を享受しているのは英霊のおかげだという。だから、彼らは靖国神社に参拝する。戦後日本の繁栄と平和を築いたのは英霊であろうか。戦後の焼け野原からの復興に従事した人々、戦前の軍事偏重の政策を拒否して戦後の日本国憲法下で経済発展に尽力した人々ではないか。英霊と戦後日本の平和や繁栄を結びつけるのには論理的に無理がある。もし、敗戦がなければ、北朝鮮のような偏屈な国家で貧困に苦しむ国になっていただろう。
 そんなにも、戦前の第日本帝國は素晴らしい国だったのだろうか。彼らには憲法について誤解があるのではないか。憲法は一国の法律の指針であり、国民が尊重すべき政治的価値観でもあるが、同時に、政府の暴走や専横を抑制する。戦前の人権感覚の希薄な政治リーダーが招いた敗戦や、戦時の「戦陣訓」「捕虜虐待」「民族差別」に関する反省は全くない。東日本大震災で多くの国民が困難にある同胞を支援し、若者がボランティアに駆けつけたのは日本国憲法の成果ではないのか。彼らが酷評するゆとり教育のおかげで勉強をしないでスポーツに専念できる若者が増えた。そのおかげであれだけの金メダルが取れた。戦前ならせいぜい4個がよいところではないか。
 200万人もの軍人を餓死と戦病死させ、無謀な作戦に駆り立てた東条英機が裁かれた東京裁判を国民は容認したのだ。彼らが合祀された靖国神社のような複雑な内容を持つ慰霊の場がそれほど尊重されなければならないのだろうか。天皇陛下は戦犯たちが自分を騙し、苦悩の淵に立たせたことを怒っていることを感じないのか。
自分は集団的自衛権についても容認するし、憲法も改正すべきと思っているが、このような思想と政治的背景を持つ連中の手によって改正されるのは誠に不愉快である。そして、その改正案にしても危険な香りが発散している。日本国憲法は確かにGHQが戦前の日本に戻らないようにがんじがらめに組み立てた仕組みである。だから、今日のような国際的にも重要な役割を果たすようになった我が国には不都合なことが多く見られる。ところが、彼らの改正の狙いは、国体=天皇を中心とする政治と戦後の政治は間違いというムード作り、靖国神社の国家護持、教育基本法の改正、道徳教育を通じての国家意識の高揚、個人の権利の抑制などであり、極端な歴史観、大東亜戦争の肯定、反政府活動の抑圧、軍事行動の円滑な決定の仕組み作りである。戦前の日本はその国家経営に欠陥があったからこそ、敗戦という日本の歴史が始まって以来の悲劇を生んだ。彼らの発想はそれを生み出した仕組みに回帰しようというベクトルを持っている。マスコミに対する口封じや、第二次、三次安倍内閣の成立にも関連し、今後の安倍総理の政策にも影響を増している。
 彼らに言わせれば、今の日本人は精神的に堕落しており、GHQの戦略によって腑抜けになり、家族は崩壊し、滅びの道に向かっている。戦後の平和な社会や、高度成長、世界で信頼される国としての日本はどこかに飛んでしまっている。彼らのメンタリティを理解出来ない。極論を訴えることで存在感を示したいのだろう。日本会議は神道政治連盟につながっている。山崎氏はGHQが国家神道の解体を決定づけた神道指令が日本国憲法の政教分離の根幹であり、これを骨抜きにすることが日本会議と神道政治連盟が一体になっている理由であり、彼らの運動が戦前の暴力装置の回復が狙いであることを看破しているのである。span>


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by katoujun2549 | 2016-08-15 19:13 | 書評 | Comments(0)