相対的貧困の拡大

 OECDによると、人口の上位10%の富裕層の所得が、下位10%の貧困層の所得の9・5倍に達した。企業経営者ら「スーパーリッチ」の所得が増えたためだ。1980年代には約7倍だったが、「貧富の差」は広がっている。
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 格差を表す指標とされるジニ係数で80年代と直近のデータを比較すると、過去分を入手できる21カ国のうち16カ国で格差が拡大している。係数が1なら格差は大きく、0に近いほど平等なことを示す指標で、格差が小さくなったのはギリシャとトルコだけだった。
 日本のジニ係数は0.3を超え、OECD諸国の中でも高く、高度成長期のような中間層の拡大は過去のものになっている。格差拡大の原因は地方の賃金が上がらず、大企業のベアも出し渋り、そして派遣社員の拡大だ。自由な生き方を尊重するというお題目の中、低所得が固定化されるのである。安倍政権は昨年、派遣業法を改正し、若者の自由な生き方を尊重し、派遣社員の流動化を図ったとされるが、これは派遣社員の固定化と、給与格差を広げるだろう。同じ企業なら人事異動は活性化につながるが、誰でも慣れ親しんだ職場を変えることは苦痛だ。派遣社員を3年で打ち切る職場は経営が悪くなる時以外は少ない。3年で職場を変えるとなると、派遣社員はいつまでもベテランにはなれない。経営側に雇用の継続を制限し、派遣社員は3年を過ぎると派遣会社が派遣先を変えねばならない。自由な生き方といっても雇用は不安定化し、派遣社員の所得は上がらないだろう。同一労働同一賃金といっても、経営側は安い賃金の固定化に流れる。同一労働を誰が判定するのか。言葉だけのかけ声ではないか。終身雇用の労働者が減少し、労働組合の賃上げ交渉によって恩恵を受ける層が減少し、やせ細っている。
 OECDはこうした格差が「経済成長率を押しさげる」と指摘する。親の所得が低くて教育の機会に恵まれない子どもが増え、労働の生産性などが上がりにくいためだという。誰でも知っていることだが、東大や慶応などの難関校には富裕層の師弟が溢れ、低位校には学費をローンで調達する中間層ぎりぎりの家庭の子弟が多い。もちろん底辺は専門学校か高卒就職で、こき使われ、数年で派遣社員で職を点々とする。こんな形が常態になっていることに政治家は目を向けない。経済が活性化しない理由はこうした格差社会に国民が気がついて、意気が上がらないことも大きい。金融操作だけではどうにもならず、黒田バズーカは体力の弱った病人である国民に劇薬を調合したのである。

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by katoujun2549 | 2016-02-12 07:27 | 国際政治 | Comments(0)