アメリカは悪の帝国になったか


1.アメリカ合衆国は、この70年間に変質してきた
 
 アメリカンドリームは正に悪夢になろうとしている。第二次大戦後のアメリカは民主主義の勝利と世界をリードする産業の力を誇示していた。70年たち、形骸化しつつある民主主義、キリスト教的モラル、大統領のリーダーシップなどどのように変化したのだろうか。変質の原因は戦争であり、軍事力の突出した肥大化である。
 アメリカ合衆国はイギリスから戦争によって独立した時から、暴力的な面を持っていた。独立戦争後、莫大なイギリスの資産を没収、手に入れることとが出来た。自由と平等という影には、南部の奴隷制度が人種差別による抑圧が暴力を伴って機能していた。フランスからルイジアナ、カリフォルニア、テキサスなどの領土を武力でメキシコから奪い、今の国境を確定させた。南部と北部の均衡は破れ、南北戦争という80万人という犠牲を払って、国家の統一を成し遂げた。その時に発達した強力な武器を使って、西部のインデアンを駆逐し、滅亡させた。こうした事を行なわずとも、カナダなどのように緩やかな人種政策も可能であったはずである。西部開拓はさらに暴力性を増しつつ太平洋に向かった。日本の開国はそのあおりである。ハワイ、フィリピンに対する帝国主義的支配に向かい中国の利権を巡り、日本と衝突した。これが第二次大戦である。日本も帝国主義であったから、似た様なものだが、結局失敗した。成功者アメリカは朝鮮戦争からベトナム、また、中米の共産主義勢力との戦いを通じ、長い戦争体験が、次第にアメリカをローマ帝国の様などん欲な支配欲を持った国家に変質させて来た。アイゼンハワーは大統領辞任演説で参軍複合体の危険を訴えた。もっとも、この国の体質は独立戦争以来変わっていなかったのであるが。1920年代は下層90%が全体の16%の富を所有し、上層0.1%は全体の25%を所持していたのですが、1929年の大恐慌(株価大暴落)により、富裕層がいったん崩壊して逆転した。ところが、今や0.1%の富裕層が90%の資産を占有する国になった。平等という理念はこの国には無い。
 ドイツ帝国とナチスドイツからのヨーロッパの解放、東西冷戦という大きな犠牲も払い、アメリカは何を世界にもたらしたか。インターネットは核攻撃に対するPCネットワークの保護から生まれた。物凄い情報の量が処理できるのだが、これが人々に幸せをもたらしているのだろうか。アメリカンライフスタイルは今はあまり人気がない。経営学、ハリウッド映画、マクドナルドもどうも最近は元気が無い。文化的には旧大陸の方がすぐれたものが多い。ミュージカルの殆どはイギリス製だし、テレビ中継はナチスがベルリンオリンピックを中継、ロケット、映画、文学、医療制度なども原理はヨーロッパから来ている。アメリカオリジナルのものは兵器が突出している。
 戦争を常に続けた背景には、この国の暴力的な側面が他国より強く、産軍複合体という大きな化け物、魔物に支配された巨大な帝国になった。民主主義やヒューマニズム、キリスト教的なモラルがその陰に隠れるほどになってしまっている。もちろん、民主主義もヒューマニズムも、宗教も健在であるが、あまりにもその暴力装置の規模が大きくなってしまった。その象徴がケネディ後のベトナム戦争、中東での横暴、ニカラグアなどでの共産勢力との戦いによって帝国化し、民衆と共に歩く大統領から、まるでローマ帝国の皇帝のような専制的な大統領の存在に変質した。その分岐点がレーガン、ブッシュである。この二人の共和党大統領はアメリカを凶暴な軍事国家に変質させた。湾岸戦争とイラク戦争、アフガン戦争という泥沼の始まりである。アメリカは9.11ショックの後、何も戦争をせずに、オサマビンラーディンを暗殺すれば良かっただけなのである。アフガニスタンではなく、パキスタンの安定に力を注げばよかった。オサマもパキスタンにいたのだから。そこでつぎ込まれた膨大な軍事費の代わりに産業や仕事、教育にお金を使えば随分違った世界になったはずである。この戦争によって多くの若者の命と中間層が疲弊し、チェイニーなど戦争屋がぼろ儲けをし、ロッキードなどの軍需産業は息をつくことができた。今後、軍需産業はますます血に飢えて世界に悲惨をもたらすであろう。

2.アメリカの無責任が今日を生んだ

 イラクの混乱の原因を敢えて言えば、イラク戦争の後のアメリカの執政ミスといえる。解任されたが、政治家として凡庸なマリキ首相が多数派シーア派を中心にしてスンニーを弾圧した結果だ。アメリカはフセインの築いた国家機構を解体、それを民主国家として再構築しようとした。その拙速な手法が今日の混乱を生んだ。日本やドイツが崩壊しなかったのは、東西冷戦の対抗策として、旧政権の官僚機構を温存したからだ。権力にあるグループは少数派を立てなければならない。その反対をやって、ことを複雑にした。武装集団のなかにはアメリカによって訓練された軍人が多数いるはずである。あのファルージャ掃討戦のアメリカのやり方、また、イラクの傀儡政権の作り方が悪かったのであろう。そこからすべてが出発し、反省なしには何も出来ない。かつて、フセインは近代国家に見せかけて、実は部族支配国家を作ったのであり、族長のように統治した。民主主義を錦の御旗にアメリカはすべてを破壊してしまった。多くの官僚達が軍人も含め失業した。彼らがISILに流れている。さらにはこれはアルカイダとオサマビンラディンが何故生まれたかと同じではないか。ISILに関しては既に出来たものは一定期間泳がせて、組織的に成長した段階でまとめて葬るということでは遅いことが分かるだろう。アメリカは早く軍事介入すべきだが、イラク戦争や、アフガニスタンの過ちを繰り返してはならない。あくまでも、現政権の支援に徹して、地上軍は派遣すべきでは無い。これはがん細胞のようなもので、壊滅させても、飛び散った分子がまた、どこかに転移する。従って、再発しないような環境づくり、また、新たな集団がコンセプトを変えて生まれたら、早期に叩き潰すしかない。早期発見早期切除である。かつて、アメリカもフォードなどが応援していたナチス。この時ももそうだったが、時機を逸した。出来るだけ、世界が、カルト的グループの共通定義をして、それに類するものをマークし、禁止、殲滅することである。この組織の特徴は、がん細胞やウイルスのように近代国民国家の構築したものに実は依存し、そこから栄養を吸収している。ISILの資金源は健全と思われる国から流れている。サウジ、アメリカも含む一部の偏屈な富の所有者や石油利権、武器産業などが背景にあると見てよいだろう。オサマビンラーディンという怪物が生まれたのと同じ構造である。この連中は、国民国家や民主主義などを無視して闇の帝国を築いてきた。ヘッジファンドなども同類かもしれない。ISILの存在は現代社会のある側面、裏の顔である。

3.アメリカの二枚舌

 スンニー・ワッハブ派のサウジアラビアの中にもISILを支援するグループがいる。ISILの蛮行でやたらに首狩りがニュースになるが、サウジではインドネシアなどから出稼ぎに来るベビーシッターの女性が殺人のかどで死刑になっている。冤罪も多いのだが、一方的な裁判で皆斬首刑である。アメリカはこの超偏屈ムスリム国家のサウジとは大の仲良しなのであるから、アメリカ式民主主義もいい加減である。自分に利する者なら味方、イスラエルに敵するものも含め、敵対するものはテロリストである。かつて、イランコントラ事件というのがあった。アメリカはイランのホメイニ革命に手を焼いたが、その後イランイラク戦争が始まりイランは窮地に陥った。その時期にイランに兵器を売り、また、イラクにも武器を売っていた。実は当初イスラエルが売っていた。父ブッシュ大統領がこれを考えたと言われている。米国政府関係者は、イランに武器を売却した収益を、左傾化が進むニカラグアで反政府戦争(コントラ戦争)を行う反共ゲリラ「コントラ」に与えていた。東西冷戦の時代だった。この事がばれて大騒動になったが、今もCIAは遊んではいない。その謀略が中東で大賑わいのはずなのである。
 これはたまたま、中東や北アフリカの紛争地で発生したが、ドイツに出来ればナチスだし、ロシアなら共産党であっただけなのではないだろうか。アラビア半島から中東、イスラエルの地の風土的な解決の伝統が旧約聖書において語られている。3000年人間は変っていない部分があるのだろう。

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by katoujun2549 | 2015-03-02 20:47 | 国際政治 | Comments(0)