新戦争論;文春新書ー池上彰と佐藤優の対談集を読んで

 ジャーナリストの池上彰さんと元外交官・作家の佐藤優さん。『新・戦争論』を読んだが、お二人の国際政治知識の幅の広さに驚いた。戦争論と言うより、今日の国際問題を分かりやすく解説してくれる。佐藤さんは大変な読書家で、ムショにいた時を使って猛勉強をされたから、単なる情報通だけではなく、東西の古典にも詳しい。池上さんは一般情報、新聞雑誌等を丹念に整理し、分析する事で相当の知識が得られるという。佐藤さんは、同志社大学の神学部で学ばれただけあって、今の評論家には無い、宗教の視点をきちんと押さえている。これがなければ、イランやイスラム国の問題は分からない。一方、池上さんの手法は、かつて、スターリンが世界の情報は新聞から得られると、各国の大使館員の仕事は新聞の切り抜きとそこでの情報をくまなく拾う事で、むしろ、特殊なスパイ情報よりも有益であると言っていた事にも通じる。
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尖閣諸島、北朝鮮、イスラム国、オバマ大統領のレームダック化、イングランドとスコットランド、ベルギーの問題など民族問題も含め、今日の世界の課題が第一級のジャーナリストによって分かりやすく語られているのは有り難い事である。新聞情報、政府発表には無い独自の視点である。というより、新聞も、政府ももう少し歴史に学んだり、独自の分析とか、国民に分かりやすい説明があっても良いし、一国の総理大臣や政治家が見識を示してもらいたい。
 ロシアのウクライナに対する強硬な態度をなぜ取るのか。ウクライナの複雑な民族事情等、流石、佐藤優氏のロシア通の見識が光っていた。
 中国が海軍力を増強して空母を軸に外洋艦隊を編制している事の脅威を国は声だかに言うが、実態として、あの空母は張り子の虎である。ロシアはカタパルト技術が無く、空母は先端が上に上がっていることで揚力をつけて戦闘機は出撃するのだが、ここに無理があって、何度も事故を起こしているのだそうだ。さらに、たった一隻の空母では
単なる大きな標的に過ぎない。数隻の空母が連携し、敵の航空攻撃を牽制しながら周辺には空母を守る艦隊が無ければ全く機能しない。
 さらに、中国が開発したステルス戦闘機は価格が高く、また、メンテナンスのシステムも無いから世界でこれを買う国は無い。結局莫大な無駄遣いなのである。航空機と艦隊の運用で戦闘した経験があるのは世界の歴史では日本とアメリカだけである。日本の自衛隊とアメリカ海軍が連携したら敵うものは無いのである。特に、日本の対潜水艦技術は世界一である。こんなエピソードも交えながら、北朝鮮の拉致問題にも触れている。彼らの視点は、日韓基本条約に遡って、在日朝鮮人の北朝鮮帰還や帰還者の高齢化によって、日本に対して、彼らの帰国を交渉カードに使う可能性等、東西ドイツの歴史を引き合いにして説明、北朝鮮はそうした過去の事例に基づき、巧みに外交交渉を行なってくる。まさに世界は地理的にも歴史的にも繋がっているのである。

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by katoujun2549 | 2014-12-17 10:02 | 国際政治 | Comments(0)