映画 赤い靴を見た

 1948年イギリス映画「赤い靴」を久しぶりに見た。バレー映画の最高傑作である。本屋で買った
500円のDVDだった。この映画は美しいカラー映像で有名だった。残念ながら、このDVDは劣化した画面であった。『赤い靴』は、1948年英国映画。監督はマイケル・パウエル。原作はアンデルセンの童話『赤い靴』である。自分はこの映画を今から60年前今は亡き母と市川の松竹映画館で見た記憶がある。思い出の作品だ。
 同作へのリスペクトを公言していた、映画監督のマーティン・スコセッシがオリジナル・ネガ修復作業に着手し、2年の歳月をかけて完成された<デジタルリマスター・エディション>が、2009年カンヌ国際映画祭で世界初公開された。自分は5年ほど前、テレビで再現された映像を見て、テクニカラーの美しい色合いに見入ってしまった。

(赤い靴のモイラシアラー)
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 買ったDVDは残念ながらこの版ではなかった。色ぼけしたものだったが、安かったから我慢して見た。やはりカラー映像の美しさと、バレー映画の躍動感は一体のもので、この安物のDVDではいまいち感動は無かった。主役のビクトリア・ペイジ役はモイラ・シアラーであった。マイケルパウエルはこのモイラシアラーを使って、もう一つ「ホフマン物語」を製作している。ところが、ホフマン物語では、赤い靴の最初のシーンに出ている名バレリーナ役、ボロンスカヤ役でリュドミラ・チェリーナも使っている。ホフマン物語のベニスの舟歌のジュリエッタ役であり、ホフマン物語では彼女の方がモイラシアラーより光っていた。人形オリンピア役のモイラシアラーよりリュドミラ・チェリーナの方がずっと魅惑的に撮られているように見えたのである。映画女優としてはモイラシアラーは赤い靴の成功のお陰で有名になった。リュドミラはバレーは殆どなかったが、まるでVOGUEのモデルのような美しさであった。恐らく、パリ・オペラ座のプリマであったチェリーナのほうが格上だったはずである。彼女はフランスでは最高のバレリーナとしてレジオンドヌール勲章をもらっている。ホフマン物語もデジタルで再編集されている。

 赤い靴はバレーに命がけの興行師と恋人オペラ作曲者ジュリアンとの板挟みになったバレリーナ、ビクトリア・ペイジの悲恋ものだが、そこで踊ったモイラシアラーは最高の踊りを見せている。ただ、肝心の赤い靴の音楽にほとんど感じるものが無かった。そして、劇中、後半、リュドミラ・チェリーナの白鳥の湖がシーンとして数秒あったのだが、風格も、スタイルも全く、モイラシアラーより格上なのであった。たったの数秒で感じさせるのだから凄い。

 (ホフマン物語のリュドミラ・チェリーナ)
 
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アンデルセンの赤い靴は魔法にかけられた赤い靴を履き、死ぬまで踊り続ける少女の物語である。それと興行師レイモントフの野望を重ね合わせた作品であった。モイラシアラーは赤い靴だけではなく、白鳥の湖、コッペリア、ジゼルなども踊るシーンが盛りだくさんで楽しませてくれる。しかし、マイケルパウエルはどうしてもリュドミラ・チェリーナを入れてもう一作作りたかったに違いない。それほど彼女の気品のある美しさは抜群で、子供の頃見たホフマン物語の中で、何と美しい人だろうと思った記憶がある。マイケルパウエルは恐らく、リュドミラに入れ込んだに違いない。そんな監督の心が見て取れた。その証拠に、彼女を使った映画をホフマン物語の後3作も作っている。 (1961年)ハネムーン、(1956年)美わしのロザリンダ(1954年)異教徒の旗印などである。モイラシアラーはサイコスリラー「血を吸うカメラ」以外は無い。かつてのフランスの映画女優は、演技ならアルレッティといったコメディフランセーズの女優、オペラ歌手、リュドミラチェリーナやジジジャンメールのようなバレリーナなど、その道のエリートだった。ところが、戦後、映画から生まれたスターによってこの傾向は塗り替えられた。フランソワールアルヌール、ブリジット・バルドー、の登場であった。(驚いたことに後の3人は今なおご存命である)肉体美と個性が売りの女優である。ルイ・マルやトリュフォーなどヌーベルバーグの監督達が活躍、しかし、その後、フランス映画はハリウッドに吸収されたかのごとく衰退する。

チェリーナの素晴らしいバレー(瀕死の白鳥)を写したものを最後にご紹介
http://www.youtube.com/watch?v=Eo3d-DtYYvI

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by katoujun2549 | 2014-05-08 22:12 | 映画 | Comments(0)