人種・民族ーナチス japanese only

 サッカーのJ1浦和レッズサポーターがJapanse onlyという垂れ幕を掲げ、人種差別的とされ、無観客試合などの制裁を科された。世界の常識を知らない日本人はびっくりしたことだろう。アンネの日記を破る馬鹿男の逮捕が本当に日本人の無知から来るとすれば困った事である。というのは人種や民族にかかわる言葉は今はよほど注意しないと国際社会からつまはじきになる領域になっている。それはやはり、第二次世界大戦のドイツの国家犯罪と植民地の解放と関わった問題だからである。ドイツのみならず、植民地支配のあったところでは状況次第で、インド人とか、中国人といっただけで、人種差別的な受け止め方をされることがあるだろう。

 20世紀最大の不思議は、あのカントやヘーゲル、マックスウェーバーといった哲学の巨人、ゲーテやシラーなどの文豪文化人、さらには多くの作曲家を生んだドイツがナチスという蛮行を行なう団体に支配されてしまったのかということである。ナチスが行なった人種政策や優生学がどんな惨禍を引き起こしたかということが日本ではあまり重要な事として教育されていないことも問題である。今や、ドイツも多くの国際活動を行い、世界の一員として生きる道を選んでいる。国民の意識や世界観が、結果的に間違った、しかも惨禍を生むという事を世界は知ったのであった。
 
 ドイツは第二次世界大戦と悪名高い様々なナチスの蛮行をヒトラーやナチ党のせいにして、国民を免罪にしたいところだが、そうはいかず、ワイズゼッカー大統領の世界に向けた懺悔の演説でその地位を回復する道を得た。実際ナチズムや人種差別を生んだ事はドイツ国民全体が背負うことだからである。ブラウニングは「普通の人々(1992)」で
「普通の人が普通でない状況に置かれただけでサディストでも何でも無かったし、普通のドイツ人兵士はナチスではなかったとしても強くナチ的な世界観を持っていた。」とする。ドイツ人の第一次世界大戦後の歴史的体験がナチスを生んだ。それは国民全体が受け入れた事であった。今は一部の命がけで抵抗した人々がいた事も明らかにされているが、それは発掘されるべきかくれた事柄であった。

 あのユダヤ人強制移送の責任者で、南米に逃亡し、逮捕され、イスラエルで処刑されたアイヒマンの部下達:全員1905年〜1913年の間に生まれており、幼少時に第一次世界大戦を経験し、第一次世界大戦後に成人している。彼らはヴァイマールの危機で足元ががらがらと崩れ去った世代の典型的な例であった。彼らはヒトラー国家と自らを完全に同一視した。彼らの多くは1930年〜33年の間にナチ党に入党したビジネスマンであった。日和見主義と社会的地位の欲求が混ざり合いこれが党加入の主たる理由
であった。彼らが後にユダヤ人殺害に加わるようになるのは。権力、尊敬、社会的上昇を渇望したからである。ゲシュタポ指導部の3分の2は中産階級の出で、人文的な教育を受け、半数は法学博士の肩書きを持っていた。驚きの教養人であった。
 何故ホロコーストが起きたかである。多くの研究があるが、あまりにも大きな世界史的事件だけに、その理論的通説も、確定的な説明も今なおなされていない。ウィンディ・ロワー著「暴力の加速」によると、彼らだけではあのホロコーストは実行出来なかった。 国家の指導者がもっと多くユダヤ人を殺すように直接部下に圧力をかけた投入可能な殺害部隊がこの地域に集中増強されたことや後に有能な殺人者であることが判明する国防軍や親衛隊・警察の指揮官の協力があって初めてなし得たことであった。ホロコーストという二十世紀最大の悲惨な事件が何故起きたかに関しては数多な研究や著書、論文があり、これらを何処を切り口に伝えるべきかは極めて複雑であって、結果が意図しない方向に進む事もあるだろう。

フリートレンダー『抹殺の年月」とロンゲリヒ「ホロコースト」によるとモムゼン、ダン・ディナー「殺人者があたかも目的があったかのようにふるまったこと」殺害プロセスの連続的な激化の背景に、命令を下した人間を特定出来る様な明白かつ政治的に有効な決定があったかは疑わしい」という。国民全体がある種の思想的空気に支配されたのであった。「ホロコーストが、宣言された行動への意思が牽引する綿密な計画であったというより、独立した、しかし互いに関連する一連の行為であったとしても、熟考された後が認められ、かつイデオロギー的な動機があった事は一目瞭然であった」

 ナチは合理的な手段を合理的とは思えない目的のために使った(アラン・ベヤチェン)。それは人種というパラダイムであった。そこで機能したのがドイツの優生学と人種衛生学:文化的なものを生物学的に還元し前者を後者に依存させる試みであった。ジョナサン・リテル「悲しみの女神達」によると「人種科学者達は変人ではなく、最前線の科学者であると見なされていた。今でこそ人種理論から世界を理解する等という試みは「えせ科学」もしくは神秘主義であると断言できるが、ホロコーストを理解するには人種科学と人種神秘主義の区別を維持する方が有効だろう。」と述べている。間違った思想、思い込んだ偏見を利用し、国家犯罪が生まれたのであった。民族とか、人種という言葉がどれであけ多くの惨禍を生んで来たかである。近年では「ユーゴスラビアの解体ーボスニア紛争での民族浄化」、アフリカでのツチ族フツ族の構想等おぞましい惨禍を引き起こすのである。

[PR]
by katoujun2549 | 2014-03-14 11:13 | 国際政治 | Comments(0)