里山ビジネス 玉村豊男著 集英社新書

 ワイナリーとフレンチレストラン「ヴィラデスト・ガーデンファーム・アンド・ワイナリー」のオーナー。こんな生活は誰もが描く夢である。お金が出来た芸能人とか、スポーツ選手が飛びつく話だが、あまり成功しないだろう。こうしたビジネスの厳しさは中途半端ではないからだ。全身全霊で打ち込まねばならない。著者はそうして成功させた。そしてこの本を書いた。玉村氏は何も、全くの無知の素人からレストランを始めた訳ではない。彼はフランス文学を学び、パリに留学した文化人である。しかし、ビジネスには素人であった。 里山の森の一角に個人で立ち上げたワイナリーとレストランが大成功した。その道のプロの誰もが無謀だと断言した理由は、その店の立地の悪さであろう。しかし、フランスにはこうした所に三ツ星のレストランが存在する。素人ビジネスとはいえ、全く日本には無かったコンセプトのお店をクリエイトしたのである。何故客を呼び寄せ成功に導かれていったのか?彼も、当初東京で小物を売る店を経営し、失敗している。ビジネス上の計算は本当に無かったのだろうか。ビジネスはやはり採算である。当時の失敗から、仕入れ、コスト意識と言った商売の基本を身につけたのであろう。やりたいことのコンセプトが明快であっても、これだけでは成功しない。里山の自然の恵みとともにある仕事をやりながら暮らしを成り立たせる、それが里山ビジネス。彼のコンセプトでユ二ークなのは拡大しないで持続するということであろう。そのためにはやはり、ある程度の利益を得なければならない。愚直で偽りのない生活とビジネスとは両立することを証明している。
 
 ワイン栽培は、日本のような風土では本当に大変な作業である。フランスやイタリア等、ワイン文化は単なる消費者のみならず、産業構造が出来上がっている。そして、ワイン作りには初期資本が5000万円以上無ければできない。酒造には様々な規制がかかっている。この本でも、様々な規制を乗り越え工夫した奮闘の跡が見られる。新潟では「深雪花」とか、カーブドッチのワイナリーなどワイン作りも近年盛んになってきたが、全て自家原料で作っているのだろうか。自分は、最近、地場産愛用を心がけているが、やはり、若い感じがして、時々フランスやイタリアの銘柄を飲みたくなる。そんな時には中野のプチ小西に行って旧交を温めている。

 今、大都市のみならず、地方都市の郊外にある中山間地が過疎化し、崩壊の危機にある。ではどこでも、里村氏のようなスタイルで取り組んだら成功するだろうか。新発田市も中心市街地が衰退し、シャッター通りである。これをシャッター通りになった店の人達に元に戻せと言ってもそれは無理だ。そうなった原因は彼らにもあるからだ。もちろん、交通網の変化、大規模店の進出も大きな原因だが、これはもうどうしようもない、所期条件である。そこで、中山間地の農産物の6次化というコンセプトが生まれた。安倍政権もしきりにTPP対応策として提唱している。中山間地の休耕地を使って、蕎麦、野菜などを市街地のレストランに直接買ってもらい、レストランは新鮮な取り立て野菜の、オーガニックなどの付加価値をつけてレシピも開発する。その土地ならではのライフスタイル、その土地でなければできないものは何か、そこに行かなければ食べられない料理などで観光を組み立てる。農業高校や、大学が市場を調査したり、マーケットの動向を情報収集するなど、高齢化した中山間地の農家の出来ない事をサポートする。もちろん、農協も関心を持っている。

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by katoujun2549 | 2013-07-31 00:06 | 書評 | Comments(0)