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ソ連映画「誓いの休暇」1959年 the Ballad of a soldier

『Ballad of a Soldier(原題)』 「誓いの休暇」という邦題である。中学生の時に予告編を見た記憶がある。最近はこうした沁みいる叙情のある映画が少なく、懐しい。戦争映画として傑作だと思い、紹介したい。先日「戦火の馬」を観たが、戦争映画で最高は何かを考えたとき、自分は、やはりこの「誓いの休暇」ではないかと思った。プライベートライアンとか、僕の村は戦場だった、禁じられた遊びなど、戦時の市民生活とか戦場がテーマになった作品は多い。コッポラの地獄の黙示録も凄かった。しかし、この誓いの休暇は戦場から戦時下の町や村をひとりの少年兵士が漂いながら、通り過ぎて行くそのストーリーの流れはとても素晴しい。今は、DVDでしか見られないし、あまり画質は良くないらしい。
監督のチュフライはスターリン時代の民主化に向けての雪解けを象徴する人で、女狙撃兵マリョートカも、赤軍の女兵士と白軍将校との愛を描いた作品。かつてのソ連映画にはタルコフスキーの「僕の村は戦場だった」といった名作がある。「鬼戦車T34」などもユニークな作品である。 
Grigori Chukhrai グリゴーリ・チュフライ
出演 cast
ウラジミール・イワショフ  Vladimir Ivashov   - Alyosha
ジャンナ・プロホレンコ   Zhanna Prokhorenko - Shura
ソ連映画のモノクロ 1959年作品
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061.gif物語ー
 冒頭いきなり喪服の母親。ナレーションが彼女の息子は戦争から帰らなかったことを告げ、それからその息子の物語が始まる。つまりこの映画は、戦死した若い兵士の物語、ドイツ軍との戦い、ソ連軍の兵士の群と戦車が前線に向かう。女兵士が、戦車と兵士の列を交通整理する雑踏が印象的。急かせるような音楽が切ない。監視塹壕にいた兵士アリョーシャは急迫してきたドイツ軍戦車に追い掛けられる。独身者や老人は最前戦に送られる現実が見て取れる。放置してあった対戦車銃でニ両を撃破、褒美として6日間の休暇を貰う。帰るのに二日、母親と過すのに二日、戻るのに二日。帰省の途上、片脚になった兵士、シューラという美少女とのひと時の淡い恋、出征した兵士を捨てて他の男と暮らす妻、ウクライナからの家族。予想外の出来事に遭遇し、休暇日数は減っていく。ようやく家に着いても母はいない。農作業で出かけていた母とやっと抱き合うが、もう時間がない。帰りのトラックが待っていた。アリョーシャは母に手を振ってまた戦場に戻っていく。
アリョーシャとシューラとの淡い恋物語、最初は喧嘩したりしているが、だんだん仲良くなり、やがてお互いに恋心を抱くようになる。短い間の出会いだけれども、その中に喧嘩、和解、別離、再会など、ラヴ・ストーリーのすべての要素が詰まっているのである。
戦争という異常時だから起きる唐突な出来事、そして若者らしい恋。
 片脚となって妻のところへ帰る兵士のエピソード、兵士の妻に石鹸を届けるがその妻は別の男と豊かな暮らし。さまざまな人生模様が描かれる。背景にあるのは常に戦争だ。そしてタイムリミットが迫って来る。もう30年も前にNHK教育テレビで観て、録画していたが、当時は何とβだった。
素晴らしい映画である。最近の映画のテンポとは違う、淡々とした演出がかえって心に残る。自分が三度観ても飽きないのはこの映画とカサブランカ、第三の男、そしてシェーンだ。

by katoujun2549 | 2012-04-21 18:25 | 映画 | Comments(1)
Commented by PineWood at 2015-10-27 08:48 x
渋谷のロードムービー特集の名画座で見て感銘を受けました。何度か見ているのですが、名作ですね!!