太平洋戦争最後の証言 大和沈没編 門田隆将著 小学館

太平洋戦争最後の証言 大和沈没編 門田隆将著 小学館

これで、証言シリーズ3部作は終了した。門田氏が全国の当時の生き残りの方々を訪ねて書き下ろした力作である。小説ではない。とにかく、証言をひたすら集めた結果の作品である。大和の巨大な主砲が発射された時はどんな具合だったのだろうか、興味が湧くところは全て抑えて書いて頂いた。
今、第二次大戦を生き抜いた人々は急激に少なくなっている。この試みは、太平洋戦争を戦ったアメリカからみた証言、さらには、戦場になった土地の人々へと展開することが出来ないだろうか。

戦艦大和のプラモデルを中学生の時に作ったことがあった。現代の兵器として見事なまでに完成された姿に魅了されたものである。大和が沖縄の海に海中に眠っている姿は、かつて、潜水調査で撮影されている。あの力強い姿は、今の日本人の心おも揺さぶる力がある。戦艦というのはその国の象徴でもある。宇宙戦艦ヤマトという漫画もあったが、やはり日本人にとって大和は永遠である。

自分が学生時代は、先輩の中には学徒動員で戦地で過酷な体験をした方々がいた。合宿の打ち上げの時など、先輩が来られて当時の話を聞く機会があった。その中で、T先輩は戦艦大和の最後を目撃した方であった。大和の僚艦、冬月に乗艦しており、機銃士官として防空戦を体験したのであった。
米軍のパイロットが、大和を雷撃し、僚艦の真横を反転して猛烈なスピードで通り過ぎて行く。その時、横を向いたパイロットが機銃座にいたT先輩と目が合ったんだそうだ。若いパイロットで少年のような顔をしていたのが印象的だったという。

大和は、最後に大爆発を起こして、沈んで行ったが、その時、びっくりしたのは、天から人がバラバラになって降ってきたという凄い経験をされたといっていた。海に放り出された大和の乗員を、必死で救出したが、最後はいつまでもいられず、現場を離れなければならなかったのが辛かったと言っておられた。吉田満氏の著書、「戦艦大和の最後」で駆逐艦「初霜」が大和乗組員を救助する際、軍刀で生存者の手首を切ったとする部分については、現在も論争の原因となっているのだそうだ。しかし、T先輩は海で浮いていた大和の乗り組員を探して、懸命に救おうとしたといっていた。彼等を放置して行ったというのは噓だと憤慨していた。
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 戦争の真実というのはなかなか伝わらず、無責任なフィクションや、言い伝えが主流になってしまうことが多く、困った事である。大平洋戦争の証言には段階がある。最初は将官や参謀が回顧録を出す。そ彼等は、当時の年長者であった。次第に将官、兵士とそれぞれの階層に下りて来る。今、実際に戦った当時の若者が既に80歳代〜90歳代と高齢になり、次々と鬼籍に入っている。門田隆将氏は、それらの生き残りと直接インタビューをし、証言で全てを構成する。

 この大和篇は「大艦巨砲」主義の象徴、戦艦大和の体験者の証言である。要するに役に立たない無用の長物ということである。しかし、3,000人を超える兵士がこの船に乗り、日本の未来を守る為に出撃した。航空支援もない中、無謀な特攻だと批判することは簡単だ。しかし、そこで死と直面した人々にそんな説教は無意味である。
 沖縄特攻に参加した人ばかりではなく、最初に建造したときからの体験をまとめている。さらに最後に海の墓場となっている現在の海底の大和から遺物を引き上げた時の話も最後を語っている。圧巻はやはり最後の姿、大和と運命を共にした時の多くの兵士の姿である。

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by katoujun2549 | 2012-04-21 09:07 | 書評 | Comments(0)