ユーロ危機と超円高恐慌 日経プレミアシリーズ  岩田規久男著

ユーロ危機と超円高恐慌 日経プレミアシリーズ  岩田規久男著

 円高、ドル安、そして我が国のデフレ。これが世界のなかで、きちんと語られているだろうか。日本のデフレに対する政府と日銀の対応は果して効果は上がっているのだろうか。さらにドル安はドルの基軸通貨としての価値が失われる危機をもたらしたのだろうか。そうした疑問に答えてくれるのが、本書である。ギリシャの金融危機がユーロ安と金融収縮、経済の停滞を招いている。欧州金融ファシリティ、欧州中央銀行の機能とは何かについて分かり易く解説してくれる。EUとアメリカは金融収縮による企業の衰退やデフレを警戒し、3〜4%のインフレ目標をもって経済運営している。では、日本はどうだろうか。デフレから抜け出せず、日銀は金融政策による経済活性化をしようとしない。

 本書では通貨に関する基本知識を新書で説明することにかなり分量を割いているのであれもこれもになっているが、結局、彼の主張は日本は2~3%程度のインフレ容認策で、日銀は貨幣供給を増やせと言っているわけで、目新しいものはない。この1年野党が言い続けていることである。デフレ対策に大きな影響があるのが、今後、迷惑垂れ流しで世界を汚染する中国と元の行方である。共産党の支配する一党独裁国家は民主国家を越えるのだろうか。また、消費税、さらには税と社会保障の一体改革がどこまでできるかだ。ココまでアホな政党による改革はかえって病状を悪化するだけだ。底辺層へのバラマキと、一番の問題である中間層や、若者への支援が全くないという。震災復興も政府やマスコミが言っている事と現実の差が激しい。デフレ脱出の目標がが分っていない。

 中国は元高を避けようとドルを買い、元を売ってアメリカ国債を買い続けてインフレや土地バブルなど資産高となった。しかし、金融引き締めについては昨年金利を上げたが、それ以上は行なおうとしない。金融を引き締め元高になると、バブルは崩壊、中国の輸出は打撃を受け、海外の資金が流入する。経済不況が中国経済を襲うだろう。投資マネーが国内に溢れ、金利が上がり、資金の行き場が無くなって産業が活性化しないのに、かつての日本のプラザ合意以後のバブルのように土地が高騰したりする。元の切り上げをしないように中国は懸命に外交努力を続け、EUの支持を得ようと金融支援を行なう。

 最大の輸出国、米国の金融政策が固定相場の為に機能しない。結局アメリカ経済の悪化が中国の輸出に影響し、中国のバブルは崩壊する。中国も変動相場制に移行すべきというのが筆者の考えである。
 共産党独裁政権という実態をどう考えるかだ。この視点が中国を考える場合見落とせない。中国は史上初めて登場した国家と党、企業が一体となった構造を持つ国だ。彼等は貿易黒字で溜ったドルを使って軍備を拡充することを考えるだろう。海外からハイテク機器を買って軍事に活用する。これを使って周辺諸国を恫喝し、アフリカや北朝鮮を軍事支援し、資源確保を企んでいる。彼等は、手段を選ばない。国民が不平等であろうと共産党が維持出来ればいい。3,000万人が餓死しても平気な国。北朝鮮が中国に支えられているのは政体が同じだからだ。恐ろしい国だということを民主党の小澤や鳩山は分っていない。中国のスーパーコンピューターは何に使われているのだろうか。宇宙開発やハッカー、軍事利用に違い無い。流石に餓死や粛清は無くなった。これは鄧小平の功績だ。国民の所得や生活格差などは昔より生活が向上すればそれで国民は抑えられると共産党政権は考えているのだろう。

 ドルが基軸通貨としての権威を昔のようには持っていないかもしれないが、今日も尚、安定通貨としての価値を失った訳ではない。ただ、日本円だけが、ドルに対して極端なドル高なのである。ユーロ危機において、各国はドルに回帰していることが、著者の数値データで示された。ドルはもう終わりという訳ではない。また、アメリカ経済はリーマンショック後巧みな金融政策を行ない、経済は回復しつつあるが、10%近い失業率の回復は遅々としている。国内製造業の復興が課題という事である。

 著者は,日本のデフレと円高の原因が、日銀の金融政策にあるという。日本も3〜4%のインフレ目標を持つべきであり、マネーサプライを増やすことを提言している。しかし、日本のデフレの原因が、社会保障費の増大と、若年労働力の減少などの金融政策を越えた課題を持っている以上、そうした構造改革を並行して断行しなければデフレからの脱出はできない。消費税を5%上げて、GDPが下落し、税と社会保障の一体改革の中身がガタガタだったらデフレも止まらない。TPPで貿易収支が向上しなければ円高メリットも消える。マイナスだらけでは金融政策という治療も効果がない。また、日本のように政治の意思決定が遅く、日銀の対応の硬直した感じからするとインフレを金融政策でコントロールする力がどれだけあるかである。目ざとい政治家がマネーに群がる姿が目に浮かぶ。彼らは選挙の事しか目がないからだ。それを目の当たりにしている日銀はなかなかインフレ政策を取らない。また、円高により国際競争力が低下しては産業の活性化も望めない。特に東日本震災復興による経済活力の再建が急務である。これをバネにイノベーションによる日本製品の国際競争力がどこまでついて来るかが今後の鍵である。


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by katoujun2549 | 2012-02-11 00:12 | 書評 | Comments(0)