人民解放軍の恐怖

 中国というのは、日本のような単一的な世界からは想像を越えた立体構造を持つ国である。新疆、ウイグルのような西域から、南はベトナム、揚子江や黄河の流域、沿海部など、文化や言語、民族も異なる。対日感情が悪いのは、北のかつて日本が侵攻した地域である。軍隊が入って多くの犠牲が出たところが日本を喜ぶ訳が無い。そんな場所を避けても膨大な市場とビジネスチャンスがある。
 また、地理的分類に重なるように、農業、商業、工業が地域的にも集中して産業別の地域特性があり、また、都市とその周辺もまた、様々な歴史と風土が形成されている。先は共産党の行政に携わる集団、商業に巧みな客家とか、知識階層、国際的な世界を活動舞台にしている人々など、夫々が一つの国家を形成できるほどの人的資源を持っている。そのなかでも、中国軍ー人民解放軍も極めて大きな世界となっていることに注目しなければならない。恐らく国家並みの規模と経済に対する影響力がある。
 
 中国の軍事費について困るのは、その実態が他の先進諸国と比較しにくく、実態が明らかにならないことである。中国は軍備に関する直接的な経費や予算を公表するが、兵器を開発する費用や、備蓄、情報機器などの周辺装備など、これらは軍事費の倍はあると見られるのだが、これは産出していない。宇宙開発などは中国は実際は軍備である。中国の軍事費は購買力平価でみなければならない。物価の高い国と比べると、兵器の製造コストも安いし、兵士を何倍も抱えることが可能だからだ。中国の軍事費はあと数年でロシアを上回り、いずれ、アメリカを置き越す事は時間の問題といわれている。これが、国内における共産党支配基盤や国防上の軍備に止まるうちはいいが、今や、海軍力の増強につとめ、空母二隻体制を目指しており、外洋艦隊の整備に精力を傾けている。

「軍事費は軍自らが調達する」という方針が共産党からだされたことにより国の近代化と資本導入が始まったことにあわせ、軍の近代化に伴う人員削減で生み出される失業対策も含めて、各部隊が幅広く企業経営へ乗り出していた。これは1998年に中国共産党が人民解放軍の商業活動を禁止するまで続いた。実際には現在も一般人も利用できる又は一般人向けの各種学校、食堂やクラブなどの飲食店、射撃場など娯楽施設、病院、宿泊施設、食品加工や機器製造等の工場、農牧場、養殖場、炭鉱など鉱山、出版社などあらゆる企業、施設、設備を運営している。一大産軍複合体である。アメリカもそうだが、こうなると、共産党も、そのシビリアンコントロールが効かなくなるという恐怖のシナリオを想定する事になる。

読売新聞はこのことを警鐘として報道している。
その要約を以下に書いておく。
 「軍備増強で広がる利害関係者達」
「共産党が権力を持っている限り、中国の軍事的膨張は続く。我々のビジネスは予測可能な将来にわたり発展し続ける。」と人民解放軍に装備を納入している企業の役員は言う。北京の中心部にある贅をこらした高級ホテルで開かれた国営企業の幹部のパーティーで、フランス高級ワインを傾けながら、言ってのけた。同席していた他社の客の1人がその意味を問うと、その役員は「軍の膨張は我々との紐帯を強めることとなった。この毎年の国防予算の10桁レベルの増加がなければ、困る人達があまりにも多い。民間企業で働く役員でも、また、企業に関連する人は強い軍事的な影響について言及する。企業役員は実際、軍の幹部と関係を持っている。さらに、その企業は表には出ず、国内の活動は秘密裏に行なわれている。先ほどの質問をした同じ客は軍との特殊な関係を持っている企業は実に多いことに言及した。中国の国防予算は2011年で6010億元(7兆5400億円)で12.7%増である。もし、兵器の開発研究費も入れると、合わせるとその倍とも言われる。中国の急速な経済発展のお陰で国防に関する初期投資も拡大し続け、連なる企業も利益を上げている。中国のシビリアンコントロールは共産党であるが、彼等もコミッサールとして、軍に浸透しているが、その仕組みに組み込まれ、利権を漁ることになる。
まさに、産軍複合体が網の目のように官、民、軍というネットワークで形成されている。

 軍の組織拡大と、共産党員の個人的利益は同じ方向であるから、こうした中でのシビリアンコントロールは利きづらい。これだけ軍事力が増強されると、軍の内部では、その実力に過剰な自信を持ち始め、特に東シナ海のガス油田の利権などに軍が関与することが考えられる。こうした開発は日本では民間事業だが、中国ではそうではない。軍と一体である。日本と二人三脚で開発しようと言う気など、さらさら無いと見た方がいい。いまこそ、チャンスがあれば、弱腰の日本を、蓄積された海軍力で目にもの見せてやりたいと思っているのである。

         
 

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by katoujun2549 | 2012-01-27 12:16 | 国際政治 | Comments(0)