竹中平蔵の見解:TPP論議の妙な展開

 産經新聞の正論欄で竹中平蔵慶大教授が正鵠を得た見解を述べている。TPP参加が的外れな議論に終始し始た事についてである。そして、TPPが政争になってしまったことである。先は、APECでTPPの交渉に入る事すら議論を呼び、民主党内部で山田元農相を中心とする反対グループができ、これをまとめようとする為に取った野田総理の優柔不断な態度から来ている。本来、交渉に入るかどうかは、総理の専権事項で決断すればいい事である。条約というのは国会で批准することで議論が行なわれるべき筋合いであるにもかかわらず、始めから話し合いすら反対という奇妙な状態になった事である。
 
 野党自民党は、反対が多数となり、民主党内部と、野党が反対という中で、野田総理はAPECに向ったのである。総理の権限を犯して手足を動かすたびに攻撃すれば自分の存在感が増すとでも思っているのか。野田総理のリーダーシップはそんなところか。小泉進次郎の主張だが、自民党は民主党のそうした体たらくと、野田首相が決断を遅らせていることこそ批判するべきなのに、その機会を失い、野党としての争点を民主党と合わせてしまったことが大きなダメージである。自民党はTPPに反対する立場ではないのだ。自由貿易や自由競争、市場経済を建前にして、民主党の曖昧な社会主義と、労働組合に支配された議員の実態を明らかにすべきところ、それにも失敗している。野党自民党が、何の世界観も無い、ただの既得権益集団の代弁者であることを露にしてしまった。

 反対論者は、奇妙な問題も持ち出して、仮定に仮定を積み重ねた空論を使って危機を煽っている。彼等の予測は何ら実態を踏まえていない空論なのである。例えば、混合診療導入で国民皆保険が崩壊するとかである。TPPの初期メンバーであるシンガポールなどはメディカルツアーを外貨獲得の手段として推進しているから、そこで、医療分野が入っているが、何も、日本の医療を狙って国民皆保険を非関税障壁として解体させようとしているわけではない。そのことも、参加した中で議論出来る事なのに、議論すら阻止しようと言うのである。
 既に医薬品は自由化され、しかも、日本の研究開発の遅れで、日本が特許を持っている医薬品自体2011年で殆ど無くなってしまったという現実こそ憂慮すべきである。今の日本に国産の医薬品があったら教えてもらいたい。エーザイのアリセプトとか、第一三共のメバロチンは既に特許切れ。医薬品でもないリポビタンとかアリナミンくらいではないか。混合診療もいろいろな工夫で実態としては行なわれている。医師が金持ちの為だけに効果のある薬や手術を行い、貧乏人は取り残されるというアメリカを例に警告しているのであるが、これも間違っている。確かに、アメリカは6000万人の医療保険非加入者がいる。それは収入や保険のレベルに応じて医療サービスの違いがあるということで、何も6,000万人の無医村があるのではない。全く無収入の人はそれなりに症状や怪我の状態に応じて高度医療も受けられるよう、行政がセーフティネットを用意しているのである。何もかも平均的で、医師は保険のガイドに従って医薬品を決めるだけで、3分間診療で終わってしまう日本の医療の実態をどうするのか、既得権益をもった医師会などの言いなりである。アメリカの健康保険議論は、国民全員に税金のように保険料負担を課して破綻寸前のメディケア、メディケアをから皆保険に拡大することで社会主義であると批判されている。メリットを受ける殆どのグループが黒人とメキシカンであって、一般の国民は現行制度でやっていけるからだ。こんなことも、無視して、アメリカ並みはダメだとか、見当違いもはなはだしい。もちろん医師会は反対ではなく、保険制度を維持するようにと言う注文をつけただけだが、反対論者は鬼の首を取ったようにこのことを取り上げるのだ。
 
 アダムスミスが国富論で述べて以来、重商主義から経済を開いて世界貿易を闊達に行なう事が国家の未来を切り開くという大きな目標のもとに世界は動いて来た。WTOやGATTの趣旨を全く理解してい無い人がが反対論を展開している。APEC,ASEAN+3、ASEAN+6などの枠組みに向い、世界が動いている。日本はその中の重要なメンバーである。我が国の産業は既に空洞化が進み、先般のタイの洪水でも400社もの企業が進出していた。大体、アメリカは日本の医療など狙っていない。アメリカだけでも医療資源は精一杯である。我が国は戦後アメリカ経済と共に歩んで来た。そしてその中で企業も鍛えられ、今やトヨタ、日産、ホンダはアメリカに取っても重要な雇用資源である。アメリカは今大きな世界戦略の中でアジアを位置づけ、ビジネスチャンスを求めている。極めて真っ当な戦略であるし、我が国は、体制の違う、中国や、日本を閉め出そうと日本の足元を狙う韓国に入れ込むのは止めにすべきである。政府の指導力がそこに問われている。アメリカに追随するとか、従属すること、あるいは食い物にされるとか、危機を煽って国士面をするのは止めてもらいたい。何故、これまでのようにアメリカと市場経済を軸にアジアの発展を共に切り開こうという論調を持つ勇気を持たないのだろうか。

 アメリカはそんな日本をパートナーとは思わない。アメリカが国益にもとづく提案を陰謀といい、米軍が出動しても護衛艦一隻もだせない国をアメリカは守るだろうか。協力し合うという関係のない国を守る為に、自国の国民を戦場に送る国は無い。国家と国家は人間関係とつながっていることを全く理解しない人がいる。台湾と中国が緊張した時のことだ。韓国をむしろ評価し、日本の企業は既にアメリカでは苦境に陥りつつある。アメリカが狙っているのは、ミャンマー、インドネシア、タイ、インドである。この大きなアジア戦略に集中した方が、ヘトヘトになったEUより遥かに大きな市場となるからである。アフリカはヨーロッパの牧場であって、アメリカはあまり立入りたくない。アメリカは中南米で充分なのだ。

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by katoujun2549 | 2011-12-02 12:01 | 国際政治 | Comments(0)