デフレとTPP

 
 我が国の経済政策においてはTPPよりデフレ対策が先だということは中野剛志氏がTPP亡国論で述べているが、デフレの解決はもっと大変な事で、これが出来なければダメという論理なら一歩も進められなくなってしまうだろう。何か運ぼうとするときに、右手を使うか左手を使うか議論する人はいない。実行する人が状況に応じて判断出来るかどうかである。そもそも、次元が違う話なのではないだろうか。敢えて言えばこれも例えだが、デフレに大震災復興を家族の病気になぞらえ、TPPは大変な問題を家で抱えているのに、カミさんの反対を押し切って、ゴルフ大会に出かけた亭主=政府だろうか。いや、逆に、いくら家庭に問題があっても、営業マンは仕事の一つである忘年会に出かけなければならない。これを出かける間際になって、大騒ぎする我が儘な女房=反対派では出世出来ない。孤立を恐れている政府はその理由を納得させるにはやはり説得を尽くすしか無い。

 我が国のデフレを解決出来たら、それこそ世界経済においては画期的な事件であり、それほど大きな問題である。各国は我が国を模範とするだろう。未来を考えれば、市場を開放し、国際競争力を強化する道を模索するしかない。未来を見れば保護貿易という選択肢はないのだ。とにかく、この議論は共通の土俵がないまま場外乱闘が続いている。自分は、中野氏は確かに正論を吐いているが、どうも彼の出身と、あのヒネクレた顔つきが気に食わない。何事も理路整然と反対して人の妨害をしたりする割には何もしない、嫌な男ではないか。

 問題は、市場競争と国際金融情勢もデフレの原因である。TPPにおいて我が国の国内事情はその効果を考えねばならないからことは複雑だ。TPPによって海外の労働力や海外移転した企業からの安価な商品の流入はデフレを加速する。競争原理は、下降するときも、上昇する時もその速度を押し上げる効果がある。適正な競争を調整する機能があればいいのだが、それを資本主義経済はまだ見出していない。このことも認識しなければならない。要は行くも地獄、残るも地獄だ。ただ止まっていると、いつか周辺国の狙い撃ちに会い自滅するのであるから、座して死を待つよりは何とか脱出口を探さねばならない。その一環がTPPであると考えたらどうだろうか。

 TPPはこれまで、WTO・GATOのウルグゥアイラウンドやASEANといった国際的な経済協定の流れの中にある。ここにおける我が国のこれまでの主導的な立場とか、集団的な国際交渉の場における我が国の国際的な地位と信用に関わることである。我が国の米作生産が全て失われても1兆7,000億円くらいで、これは、大企業が一つ倒産した程のものである。それに引き換、自動車産業が壊滅したらそれどころの規模ではない。波及効果が巨大なのである。

 TPPに反対する東大の農業政策の教授は一向にこの問題に答えずに農業保護ばかりを叫んでいる。これまで無策だった農業政策を続けろというのだろうか。一方、米作農家の一部は廃業を余儀なくされるだろうが、国民に米を供給している20%の専業農家はおそらく生き残るだろう。今、彼等は懸命の努力を続け、黒字である。問題は兼業農家であって、おそらくは、家族の半分が企業、特に製造業や販売業であって、TPPの恩恵を受ける人達である。また、米作を放棄した農家に対しては米作以外の作物や新しい品種の米、インディカ米、おせんべいや漬け物など、都市の消費者を対象とする多様な商品作物を指導する必要があり、それはまさに農業政策である。そもそも、デフレ対策に対する認識が、金融政策をターゲットにして、紙幣を増刷する人工的インフレを起すことが解決策であるかのような錯覚はあまりにも短絡的である。これによって潤うのは一部の不動産業者とか、投資家である。国の経済を正しい方向に導く議論ではない。

 そもそも、日本のデフレは金融政策だけが原因ではない。円高はドルの基軸通貨としての価値が低下し続けることから来ていて、これはアフガン戦争や湾岸戦争の過剰な国庫支出が最大の原因である。アメリカの財務体質の疲弊から端を発し、赤字の貿易収支が最大の原因である。貿易収支の赤字は、サービス収支の黒字を大きく上回り、利子や配当の支払いも加えた経常収支は大きな赤字となっている。アメリカの経常収支赤字は、裏返しでアジア諸国や欧州諸国の経常黒字となっており、それらの国々からアメリカへ資本が還流している。原因は日本ではないから始末が悪い。米国債の大量保有など、政治的な放漫も円高の原因となっている。

 アメリカがアフガンやイラクから撤退しつつある中、新しいパワーが必ず生まれて来る。これを日本を含むアジアの発展に結びつける役割が我が国の外交政策にある。こうした原因に関する歴史評価からはじまり、我が国がデフレを起こした原因が円高であり、企業の海外展開と産業の空洞化を原因としていることへの正しい認識。これが単なる金融政策では解決出来ないレベルである事。小泉政権時代の市場主義的政策の誤りへの反省も必要である。我が国の若者を苦しめる派遣労働者の低賃金は彼等が未来の産業を支えて行く人材であることを無視している。大学卒は今や58%を越えた。かつての長期雇用は大学のみならず、企業の長期的な人材育成のなかで、安定した雇用を前提に経営を支えて来た。これが何とも心もとない状態だ。今後は女性の雇用や活用、高齢者の再就職など今後の企業経営に貢献する方向をきちんと整備すべきである。派遣や低賃金が都合がよいからと言って、企業がこぞっておなじことをやったら、若者の消費は増えず、需給ギャップは拡大する。若者をもっと育てなければならない。日本企業の美点を見直そうではないか。年金支給年齢の延長が高齢者雇用を必要とし、それが若者の雇用を奪うといった米倉老人のボケ解釈はあまりにも無策を絵に描いたようなもので、そんな経営者でしかない指導者が日本経団連のトップであることが問題である。雇用問題と国内消費の復活をもたらす需給ギャップの解消こそこそデフレ脱出の出発点なのだ。そんなに若者の雇用が大切なら、自分が真っ先に引退することではないか。今のような経済危機下にボケ老人のリーダーは必要ない。
 
 今、日本が地勢的な戦略をもって世界経済にどのような政策を選択するかということと、国内的な事情を優先させようとすることと正面衝突させることは政策意思決定を曖昧にしてしまう。ブータン国王のレセプションに欠席した防衛大臣を問責す時間があるのだろうか。ここに野田政権の政治指導力が評価されるであろう。とにかく、何か意思決定や行動を起す度に、それとは無縁な個人批判などの足がらみとか、背中から殴りつけるような無責任な野党の攻撃は、結局は野党の価値を自から低くする自滅的行動である。

 政府の政策がいかなるものか。次期主力戦闘機(FX)の選定を例にとって考えてみるのもよいだろう。最も性能の高いF35が有力だが、一機50億円以上で価格も上がる可能性のあるF35は今の日本には単なる贅沢品だ。ところが、政府はこれを買いたくて仕方がないらしい。どうも、アメリカの圧力をこれで躱そうというのだ。F35は垂直離陸の出来る優れものだが、日本はその機能を付けるkとが出来ない。攻撃性に重点があるのがアメリカの兵器だからである。これを買えば日本は不要な機能を買うのに莫大な出費を強いられる。アメリカは喜ぶだろうが、我が国の防衛産業の未来を考えるとユーロファイターの方が現実的である。製造過程に秘密が多く、国内生産出来る部分が少ないF35に比べてユーロファイターはライセンス生産が可能である。この部品を武器輸出三原則の枠から除外して、我国が武器輸出国となることも可能なのである。先は最新の技術を我が国が学び、将来はF35を越える国産戦闘機を生産する能力を身につけることも可能なのである。そもそも、我が国が必要なものは攻撃機ではなく、数も必要とする迎撃機である。ステルス性は攻撃時に価値がある。
 合理的判断が何処まで出来るのか。高価な戦闘機を買って購入先に見返りを得ることができるか。最大の高額商品の購入者が政治的に発注力を背景に国益にかなった有利な外交が出来るのか。

 日本が控えている課題はTPPだけではない。EUの金融支援問題もある。ただの紙切れになる危険性のあるEUの金融支援は避けて、ユーロファイターを買う事にしたらどうだろうか。波及効果は多きいのである。何も、戦争をすることはない時に買う高額兵器なのだから、せいぜい外交的な切り札に活用すべきだ。米の自由化をアメリカが強要するならばF35を買わないことで、アメリカに一矢報いればいい。本来はTPPの内容で処して行けばいいのに、どうもアメリカの攻撃を避ける為にMXで調整しようとしている。国防という大事な要素における選択と、貿易はは区別しなければならないとは思うが背に腹は代えられない。野田総理がそうしたしたたかな知恵のある人物とは到底思えない。

 何故、TPPの話から急にFXに話が転じたかというと、日本政府は、苦し紛れに、米を守る為に、アメリカのF35を買おうとする恐れがある。これこそ、官僚が考えそうなトリックだ。我が国にとって大して意味の無い、高額商品を買い、アメリカのご機嫌を取ろうとする姑息な考えだ。先はTPPの例外を交渉で勝ち取り、アメリカが喉から手が出るFXをちらつかせるのは止めるべきだ。米作の保護を勝ち取る代りに、この圧力を躱す為にF35が急上昇している。FXを年内に決めることはない。先に決めてしまえば、アメリカは、FX、米と畜産の全面自由化と3連覇を狙っている。さきほどのFXを交渉材料という手段は禁じ手であるという意見と矛盾しているようだが、国防と農業を合わせてはアメリカは考えてこない。むしろ対中国軍事作戦上は、アメリカが沢山持つであろうF35よりは、別の特性をもった機種があった方が対応を難しくする。米軍はそこは良くわかるから、何もF35を強要することはない。F35購入を敢えて誘発するような交渉はダメだと思う。自分は、FXは先延ばしにして農業にけりを付けたらアメリカのF35ではなく、ユーロファイターを買い、畜産を放棄することが落着点だと言いたいのだ。日本の自衛隊はこのF35が欲しくて仕方がない。それはぐうたらなおボッチャマがスポーツカーをほしがっているようなことなのである。

 

 
 
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by katoujun2549 | 2011-11-23 14:05 | 国際政治 | Comments(0)