北朝鮮と中国の意図 

 今日の産経新聞の正論欄で中国近代史研究家「鳥居民氏」が重要な整理をしている。彼はキッシンジャーが書いた解釈、中国の北朝鮮が崩壊した場合、アメリカが侵攻するのを恐れて、北の核を容認したという短絡的な内容を批判した。北朝鮮が何故、国民の生活を無視して、核開発を推進し、それを6カ国協議の中心国、中国が阻止出来なかったである。このことを中国に気遣いして政府もマスコミも黙って来た。6カ国協議の代表、アーミテージやゼーリックは中国に裏切られ、核実験を強行された。何故か、この論文の最後に重要な説明がある。「北朝鮮を国際的に孤立の状態にしておけば、北朝鮮は中国に頼らざるを得ず、中国は実質的な宗主国になると読んでの事ではなかったのか。それとも、100社以上の子会社を持つ中国の国有企業、核工業建設集団が北朝鮮の核開発に関与して来たからか。北朝鮮が小粒な韓国を目指すことでは我々の利益にならないと思ったのは中国の軍部であったはずだ。軍事費が毎年二桁増し、5年で倍増するという最高に望ましい状況を続けていくには、朝鮮半島と台湾海峡の緊張を醸成し続ける事だと05年、06年に考えたのだろう。5年後の現在はどうだろうか。」というものである。

 いつも6カ国協議が暗礁に乗るのは、こうした北朝鮮と中国の利害を読み違えたり、中国にあらぬ期待をしたアメリカの誤算によるところが大きい。民主主義の力を信じ、国民の幸福、いや、経済発展を国の目標とするアメリカの思惑は、こうした独裁国家を前に常に裏切られる。人民解放軍の縄張りである中国のこの方面に対する政策と金一族の目標は一致している。それは支配そのものであり、経済発展よりは軍事力の方が容易であるからだ。当然、これに群がる国営企業は様々な利権をむさぼっているに違いない。北朝鮮軍は人民解放軍との強固な結びつきで成り立っており、誰もそこに介入できないのである。金一族はそうした利権集団の上にたつというより、彼等とのバランスに気を使う。だから、金正日の息子、金正雲を後継にする場合、先は軍の利害関係人の承諾、利権付与、さらには中国に行き、人民解放軍系列の政治家などにメリットを与え、その承認を得なければならない筈で、その作業に数年を要するのだ。

 アメリカの国務省はそうした関係を無視して、アメリカ市民の顔を見て交渉に望むからいつも裏切られる。北を経済封鎖し、経済的な利点を餌に核の放棄を働きかければ、いつかは北は折れるだろうと考える。しかし、彼等の考えは軍事的パワーバランスしか念頭にはない。アーミテージあたりは分っていても、国を説得出来ない。今は民主党政権であり、基本的にはCIAベースで動くから、結構現実的に対応する。とはいえ、おめでたいアメリカ世論には裏の話は出来ずに、民主主義的な政策しか話せない。そして、甘い期待が裏切られた後は、厳しい敵対関係となるのが、アメリカ国民なのである。TPPはその一歩である

 北朝鮮はかつて高句麗であった。この国の領土は今は中国領の、かつて満州と言われた地域の半分位も支配していたこともある。南朝鮮とは文化も違う。朝鮮ではこれも含めて大国家があったと思いたいがそれは夢想である。高句麗では過酷な支配が続いて、今も金王朝が続いている。この高句麗は中国に取っては属国であり、今も、そうした地勢的な戦略で中国は北との関係を続けている。中国は共産党支配であり、国営企業が利権を握り、そうした内部の権力系列が、地域支配にも及んでいると考えた方がよい。この北朝鮮周辺は、人民解放軍の勢力が強く、それに連なる軍需産業など関連企業が潤っているに違いない。

北朝鮮が、何故、原子爆弾を製造できるかというと、これは自主開発などではない。そんなエネルギーがある筈は無い。パキスタンもそうだが、当然、中国の技術が流れていると見て良い。カーンという原子物理学者はそれを仲介したり、必要な機材の発注先を教えたりはした。そもそも、1人で原爆は作れないのだから。金正日が度々中国を訪問、中国からは故錦濤は訪朝したが、最近の事。朝貢的関係は続いている。

朝鮮戦争の同盟軍でもあり、中国は北朝鮮を絶対手放さない。その為には、北朝鮮は極貧国家でも構わないし、その体制維持の為に原爆開発を容認している。中国は北朝鮮の原爆製造を止めさせ、そのエネルギーを民生に向わせ、国民に楽をさせたいという気持はさらさらない。その理由は人民解放軍である。韓国との緊張、さらに、北が崩壊した時に韓国と米軍が北を支配して鴨緑江まで侵攻する危機感を煽り、その存在をアピールしたい。又、北が、万一崩壊し、混乱を起こして難民が中国領に流入すればただちに、北に侵攻し、その行政を乗っ取り、中国の完全属国にして民生を安定させるという関係を維持したいのである。そのときの人民解放軍はまさに、かつての日本の関東軍の役割になる。金王朝が原爆に執着するのは、これでアメリカと対等の交渉力を持ったと思うばかりではなく、万一、国内でリビアのような独裁者に対する抵抗勢力が金一族を襲ったときには、原爆で自爆し、敵もろとも吹き飛ばす算段なのである。これはイスラエルの原爆も同じ役割である。違うのはイスラエルは自爆を本気で考え、外交手段には使っていない。何とももの凄い国なのだから、我が国はこうした国の恫喝も受けているという事を肝に銘じる必要がある。

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by katoujun2549 | 2011-10-28 11:12 | 国際政治 | Comments(0)