北アフリカと中東の騒乱はウオール街デモとは異質だが

 
1.21世紀の地殻変動
 世界が動いている。動かないのは民主党政権と野党自民党。ウオール街デモはアメリカの衰退を象徴している。それ以上のものでもない。国際基軸通貨としてのドルは巨大なアメリカの債務によって既にその根拠を失った。ユーロもギリシャを支えきれないとすると崩壊するだろう。社会の底辺に満足を与えられない社会は衰退する。ローマ帝国然りである。イギリスの暴動も単なるスマートフォンで呼びかけられた統制されない、非政治的なもので、これらを有効に抑えられない政府の無能を物語っている。民主主義をあざ笑っている中国とロシアが新たな攻勢を仕掛けてくるだろう。世界が政治によって安定と秩序を守れる時代は遠ざかっているのかもしれない。沈滞の続く日本は、世界の変化について行けない。世界中で展開している我が国の産業を守るものは無い。ひたすら平和を祈るしか無いだろう。そこに日本の存在価値がある。

 昨年12月から北アフリカのチュニジアで始まったジャスミン革命、エジプトのムバラク政権の崩壊、リビアのカダフィ政権に対する反政府勢力の政権奪取など、アフリカの騒乱は来たるべきものが来たという感がある。さらには中東バーレーン、イエメンの民主化運動、シリアの反政府デモと21世紀前半の世界を決定する大きな世界史的事件が始まったのだ。アメリカとヨーロッパの後退がパワーバランスの変化を起こした。

 また、ミャンマーでもスーチーさんが釈放され、多くの政治犯が開放され始めた。デモクラシーが社会主義を上回る勢いで力を得、新しい政治勢力がこれまでの人権抑圧国家で芽を吹くようになった。北アフリカの政変はミャンマーや北朝鮮に風を送っている。これらが何処まで成長するかは、戦争とか、内乱の犠牲を伴わずに実現出来るか、国際社会がこれらを見守り、非道な弾圧を監視出来るかにかかっている。イエメンでも新しい動きが続き、大きな地殻変動が始まったと言える。こうした変化に対する我が国民主党政権には何の見識も見当たらない。圧倒的な中国の陰になってしまった。とことが、その中国は、世界中に迷惑をバラまいているばかりで、何も貢献していない。彼等は公平感とか責任感などこれっぽっちも持っていない。単なるイナゴの大群のような連中である。我が国に求められるのは、北欧諸国やドイツのようなバランス感覚だろう。

2.世界には戦争を抑える仕組みが幾つか用意されている

 今年のノーベル平和賞はタワックル・カルマン女史に与えられた。Wikipediaによると1979年2月7日生まれの32歳である。母親は弁護士・政治家であり、アリ・アブドラ・サーレハ政権で法制長官も勤めた。イエメン最大の野党であるAl-Islahに所属し、作家・ジャーナリストとして言論の自由を求め、政権の腐敗やイエメン女性の地位向上を訴えた。暗殺の危険を顧みず、イエメンの民主化運動を続け、アメリカ合衆国国内からは女性活動家として評価され、2010年にはアメリカ合衆国国務省による勇敢な女性賞のノミネート者として名前が挙がったこともある。アラブの春ではエジプトなどアラブ諸国の動きに合わせ活動を開始した。イエメンで政府がアルカーイダ系組織の弾圧を口実にアメリカ合衆国から援助を得ていることから、アルカーイダ系とは異なる独自の民衆運動を呼び掛けた。これらは、かつての革命という社会混乱と大量殺戮を伴わない社会変革を期待させるものである。フェイスブック、インターネットそしてノーベル賞など平和を志向する仕組みだ。しかし、リビアも、エジプトもどれも未だ成功した改革とはなっていない。 テロによる社会改革は失敗するだろうが、実はもっと恐ろしい戦争の足音も聞こえてくる。

3.民主化を妨げる勢力はロシア、中国と部族社会

 民主化を求める若い勢力を政治の表舞台に出そうとする力と、アフリカや中東の伝統的な部族社会との接点がどこにあるかだ。旧勢力は部族社会をコントロールすることで、その存在意義を守って来た。日本が民主化できたのは敗戦によって大家族主義、地域社会の勢力が弱体化したことが影響している。民主化を西欧化ととらえると、旧社会との対立が生まれる。西欧社会の国家的な利権が、旧体制と結びついている場合、石油などの資源利権が絡み、凄惨な内戦に発展する。まさに中央アフリカのコンゴがその象徴である。産油国リビアの石油利権の40%は、反政府勢力の軍事支援を中心的に行なったフランスが手にしたと言われている。民主主義を国家体制として否定している中国やロシアは容易に旧体制を支援する側に回る可能性があり、そこに利権が絡むと欧米と中国、ロシアといった対立軸ができ、内戦の混乱を招くだろう。今、変革が進もうとしている多くの国家は部族社会という現実と民主主義との折り合いがついていない。最大の部族社会はユダヤ民族で成り立つイスラエルである。独裁者プーチンは虎視眈々と中東への勢力拡大を狙っている。

4.イスラエルが恐れる事
 イスラエルの軍事バランスは周辺国の人気の無い政府のお陰である。民衆は真面目にイスラエルを攻撃しようとは思ってこなかった。だからこそ、イスラエルは第3次、第4次中東戦争を凌いで来た。第4次ではイスラエル180台対シリア1400という圧倒的に不利な状況を跳ね返した。ソ連の支援を受けた軍事攻勢を跳ね返せたのはイスラエルの団結と作戦上の巧みさである。軍事バランスが国の境を決定している。ここは未だに第二次世界大戦以前の国家観で成り立っている。
 だからこそ、中東とエジプトの民主化に最も危機感を抱く。部族社会と強権国家の狭間で強力な軍事力を形成出来ないシリア、エジプト、ヨルダンさらにはサウジアラビアなどのイスラム諸国に対して、強力な国民軍を持つイスラエルは軍事的な優位を保って来た。もちろんアメリカの支援があってこそである。国連のパレスチナ国家承認を巡ってパレスチナ暫定政府とイスラエルは話し合いを行なっていない。それが、アメリカの拒否権行使の理由でもある。ヨルダン川西岸のアッバス議長を代表するファタハとガザに地盤を築いたハマスはイスラエルと対話ができない。しかし、世界にはヨルダン川西岸の統治の実態を全く知らされていない。ファタハとアッバス議長は腐敗構造を持ち、特定の部族が富を独占しようとする。だから、民衆から信頼されていない。そこをイスラエルはお見通しだ。暫定政府は税金の徴収も40%しかできず、残りをイスラエルに委託している。徴税も出来ず、産業政策も無い。そこで、イスラエルの西岸地区の住宅建設と移住を手をこまねいて見るどころか、住宅建設という3K作業に従事するパレスチナ人が生活を支える貴重な収入源にもなっている。一方ハマスはエジプトやアラブ諸国の支援を仕切り、ガザ地区の学校や福祉で民衆を支配してきた。未だにイスラエルとの武力闘争を続けようとしている。イスラエルのネタニアフ政権はパレスチナに対する軍事的優位を背景に、対話には応じず、力の政策こそ唯一のパレスチナに対する自らの安全維持に必要であることとして譲らないのである。この均衡を破るものこそ、シリアの民主化とエジプトの動向であり、これらを背後で支援し、資源確保を狙っているのがトルコのエルドアン政権なのである。

5.世界は地殻変動する

 世界は今めまぐるしく回っている。ニューヨークの反ウォール街デモは実は、アメリカの金融世界支配があの9.11とリーマンショックで終わったことに気がつかない、愚民達のデモである。単に金持ち反対と行っているだけのこと。これが、FRB本部に押し掛けたら話は別。これは毎年恒例となっているゲイ達のデモと同じではないか。それとジャスミン革命や中東、シリアの凄まじい弾圧と流血とは異質である。オバマ民主党政権はこのデモを自らの雇用促進法や健康保険法の成立に利用するだろう。
  

 トルコは、欧米の干渉に立ちはだかり、中東は中東の諸国で解決する事を目指し、その仲介の役割を果そうとしている。トルコはオバマ政権の仲立ちで、以前から懸案だったアルメニアとの和解を達成した。近年サルコジがアルメニア人の支援をもらう為にアルメニアを訪問したが、無益であった。勿論トルコはアメリカの支援によって何とか国が維持出来ていることを考えると、中東においてはヨーロッパは後退させ、トルコ、イランそしてアメリカがリーダーシップを発揮する方向によってしか平和的解決はあり得ない。それが失敗すれば、エジプト、シリアによる第5次中東戦争が開始されるであろう。21世紀の中ごろに大きな戦争がこの地域で勃発するリスクは高い。


6.フランスは世界を読み、行動するが、サルコジのやり口は汚い

 いくら何でもサルコジは再選されない。そのリビア介入、ストロスカーン追い落とし、アルメニア訪問やナゴルノカラバフ問題に対する発言は彼の再選を遠ざけている。その汚いやり口はフランスの評判を貶めている。

(フラネット パリ通信より)
 http://franettese.blogspot.com/2011/10/blog-post_08.html
サルコジ大統領はアルメニアのエレバン(Erevan)にある1915年のアルメニア人大量虐殺の記念館を同国のセルジュ・サルキジアン大統領とともに訪問した。トルコに対して歴史を回顧して大量虐殺を認めるように喚起した。「アルメニア人大量虐殺は歴史的な事実である」「トルコは大国であり、他の大国と同様に自国の歴史を回顧すべきだ」と教訓して、フランスとドイツを例にあげて、「我々は歴史を見ているので、常に強力である」と指導を垂れた模様だ。

 これに対しトルコのアメッド・ダブトグリュ(Ahmet Davutoglu)外相は、「(フランスが)自国の過去に立ち向かえないというのは、それは数世紀にわたり植民地主義の政治をやってきたからである」、「それは植民地の市民を第二等市民として扱ってきたからである」「(フランスは)トルコに歴史の教訓を指導することは出来ない」とサルコジ大統領の発言に反駁した。

さらに外相はトルコとアルメニアとの和解交渉は我々がするのであって、サルコジ大統領のやり方では否定的な結果しか出ないと批判した。

サルコジ外交の特徴は歴史的な人間の記憶の土地を訪れて、花束などを献じその機会を利用して政治発言をすることが多いのが特徴だ。そこを捕らえたトルコの外相の指摘は重要だ。死者の政治的な利用であるならばそれは冒涜になってくるだろう。トルコの外相のような頭脳の明晰性と、まず偽善ではない潔癖性こそが今の世界の政治家に本当は求められているのではないのか。



 
 
 

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by katoujun2549 | 2011-10-15 17:24 | 国際政治 | Comments(0)