「通貨」を知れば世界が読める (PHPビジネス新書) 浜 矩子

「通貨」を知れば世界が読める (PHPビジネス新書) 浜 矩子 著

複雑な通貨論を、分かり易く、その歴史に沿って解説している。1ドル50円という大胆な予測が面白い。構造転換を考える時には大きな目標設定が必要である。現状を維持するためのアイデアでは変革は生まれない。骨太な仮説に好感が持てる。何も1ドル50円を預言しているわけではない。氏は、近い将来50円に近づくのは予測不能なことではない。何時でも起こりうる事であると言っている。通貨の価値はその国の経済の繁栄であって、金融政策だけが景気や経済を動かしている訳ではない事を訴えている。むしろ必要なことは、かつて前川レポートが作成されたにもかかわらず、産業改革をせずに金融政策で乗り切ろうとした過ちを繰り返してはならないという。その結果起きたことがバブル崩壊であり、停滞の10年であった。金本位制の崩壊からポンド体制の崩壊とドルの台頭、ブレトンウッズ体制、ドルの基軸通貨としての衰退を物語ったプラザ合意、そして、リーマンショックと基軸通貨を巡る経済変動と通貨への作用を歴史的に説明する。次の構成である。

第1章 我々はなぜ、通貨の動きに一喜一憂するのか?
第2章 基軸通貨を巡る国家の興亡
第3章 通貨の「神々の黄昏」
第4章 こらからのドル、ユーロ、そして円と日本
終 章 来るべき「二十一世紀的通貨」のあり方とは?

通貨の価値は世界大戦などの戦争、天災、恐慌といった歴史変動によって大きく動いた。国内事情でも同様だが、国際的にはその時代の覇者が通貨の価値を支配してきた。ベルリンの崩壊。中国経済の台頭、日本のバブル経済などもドルの行方に影響を与えて来た。ユーロという実験通貨がギリシャの国家財政危機によって困難に直面している。中国の元は基軸通貨になり得ない。それはやはり、今後の経済に不安があるからだ。特に、国内格差、将来の高齢化によって中国経済は不安定になることが予想されている。通貨は経済の裏付けにおいて位置づけられる。元が基軸になることはない。日本の円は国際化されつつある産業の位置づけによって、国際的な必要通貨である。そのために、常に投機の対象になり易い状態である。円高を悲観するのではなく、いまこそ、この現象を活用して我が国の産業構造を転換し、中国や韓国、さらにはアジア諸国と我が国の経済が同一の土俵に立って不利な役割を果さないようにするべきである。エネルギー、環境、都市開発、自動車産業などの国際製品の形競争力、さらには先端性が新しい日本の仕組みを築く。高齢化も克服の仕方によって国際競争力の強化につながる。医療や製薬などである。輸出偏重の経済によってドルにお相場に一喜一憂する時代は終わろうとしている。浜氏の元気の良い提言を受け止めて国家の新しいビジョンを構築する良い機会であり、考えていきたい。

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by katoujun2549 | 2011-10-05 17:57 | 書評 | Comments(0)