中東が今動く; リビア・シリア・イスラエルとトルコ

 
1.リビア反体制派をトルコが支援

 日本が大震災と原発事故でてんやわんやしているうちにも、世界は回っている。トルコのダウトオール外相は7月3日、リビアの反政府勢力の拠点ベンガジを訪問し、同勢力の連合体「国民評議会」を「リビア国民の正統な代表」と認めると述べた。ダウトオール外相は評議会側に2億ドル(約161億円)の支援を表明するとともに、最高指導者カダフィ大佐の退陣を改めて要求。一方で、内戦の終結に向け、反政府勢力とカダフィ大佐側との仲介努力を継続する意向も示した。この動きに敏感なのがイスラエルである。イスラエルはガザに支援物資を送ろうとしたトルコのボランティアの船をコマンド部隊が急襲し、9名の死者を出した。これをトルコは海賊行為として非難し、イスラエルと国交を断絶した。一方、リビアの騒乱はイスラエルのモサドが仕掛けたという疑惑もある。産油国リビアはその石油資源とともに、カダフィ後を狙い、フランス、イギリス、アメリカ、ロシアやトルコの草狩り場となっている。シリアも民主化要求の嵐が治まらず、アサドの弾圧による混乱を避け、トルコに5千人以上の難民が流入している。トルコは当面難民対策に奔走せざるを得ない。

リビヤ反体制派軍部と握手するトルコ外相
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 一方、リビア反体制グループへのフランスの支援は限界を迎え、ドイツはこれから引き上げた。メルケル政権は軍事行動を続ける政治的基盤が無い。自国の景気維持と社会保障費の圧迫で身動きができない。アメリカはアフガニスタンから撤退をはじめたところで、紛争に介入する気はない。そこに積極的に動いているのがトルコだ。その狙いは、EU加盟である。

2.イスラム穏健派のトルコ

 政治と宗教を分離したトルコは大学生のスカーフ禁止など、むしろイスラムに厳しい規制をもうけてきた。エルドアン首相もギュル大統領もイスラム主義で、国内の宗教活動を自由にするべく憲法を改正する動きに出ている。これはフランスなどイスラム教色を牽制し、そのためにキリスト教の十字架のアクセサリーを学校教育で規制する。イスラム教徒には「ブルカ」や「ニカブ」などイスラム教徒の女性の全身を覆う衣装について、路上など公共の場所での着用を禁止し、違反者には150ユーロの罰金を科す。ドイツやフランスのイスラムへの嫌悪感からくる陰湿な政策とは反対にトルコは宗教を自由にすればするほどイスラム化が進む。

 今後、トルコのイスラム色は強まって行くだろう。そのために、周辺のイスラム諸国との関係が強化され、穏健なイスラム、政教分離を支持する民衆も増え、北アフリカ、エジプト、シリア、イランなどの原理主義に対する圧力は増す。これはむしろ欧米諸国が期待していることでもある。

3.イスラエルの海賊行為

 トルコはEUへの加盟を諦めてはいない。しかし、国民は自国に対するEUの姿勢に、半ば諦めと、失望感を抱くようになった。今のギュレ大統領やエルドアン首相、与党公正進歩党はイスラム主義であるが、軍の権力も掌握しつつあり、イラク国境でのPKKゲリラ拠点の攻撃も実行して国民の支持も得てきた。トルコ国境付近のクルド人問題はイランも、シリアも、頭痛の種であり、この面で共同歩調を取ってきた。更に、イスラエルのコマンドがトルコ人篤志家のガザへの救援船を攻撃し、その為に国交断絶に至った事は中東の新たな対イスラエル勢力の目が生まれた事になる。今のリビヤやエジプトがトルコ的な政教分離による穏健なイスラム国家像を提示し、北アフリカとパレスチナが部族社会から国民国家に成長する事が、イスラエルにとって恐怖のシナリオとなる。これを、アメリカの民主党、オバマ政権は妨げる事ができないだろう。何事も国益優先の共和党に比べ、民主党はデモクラシーには弱い。今のイスラエルは第4次中東戦争以来の危機にあると神経を尖らせている。エジプトの民主化がはじまり、第4次中東戦争後以来の平和条約は破棄され、イスラエルガザ封鎖も失敗に終わるだろう。イランはハマスのようなテロリストグループを支援、トルコは原理主義とは相容れない。しかし、ガザ攻撃には批判的である。これはエルドアンの絶妙な国際感覚である。トルコは西欧社会にも正義の味方でなければならない。

4.イスラエルの危機感

 イスラエルのガザ封鎖はハマスがガザを支配する限りは続くだは挑発行為として自己正当化している。今年、ファタハとハマスは連立政権を構成し、イスラエルは警戒感を高めたが、実際にはアッバスは汚職と独善的なやり方でアッバスは評判が悪い。パレスチナの若者は、ハマスを支持するが、イスラエルは相手にせず、この政権は上手く行かない。

 イスラエルは自国の安全のためにはどんな犠牲も厭わない。パレスチナの不幸はイスラエルの幸せ。イスラエルはこの状況に黙っている訳は無い。意表をつく思い切った行動に出るだろう。いきなり軍事行動に出るような愚かな行動は彼等はしない。これは最後の手段であり、勝てる状況でなければやらない。では何かというと、一つはロシアとの連携、もう一つはトルコを仲介者にすることだろう。オバマ政権のイスラエル政策いかんによる。トルコは国交断絶しているから、これはトルコ移民を200万人受け入れているドイツを通じ、国交を回復しなければ出来ない。これは充分に可能だろう。実際、トルコにはユダヤ人は多く、交渉ルートが無い訳でない。実質的な交渉をすれば後は国民に対する面子の問題だけだ。こうした、国際的な貢献の結果、トルコはプライドを持ってEUに加盟することが出来るようになる。トルコの狙いはここにあるのではないかと思う。



 

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by katoujun2549 | 2011-07-04 09:05 | 国際政治 | Comments(0)