真剣での戦い
映画テレビのドラマは時間的な制約があるから、仕方なく刀を抜いて数分のドタバタで終わってしまう。カミソリのように鋭い日本刀は当たれば、大怪我である。そう容易に攻め込めない。攻める呼吸、間、気合などが問題になるのはそういった現実から来ている。
会津戦争のときに、農民が、武士同士の切り合いを目撃している。互いに向かい合いながら睨み合いが続いた。刀を構えたまま、長い時間がかかり、互いに息を吸ったり吐いたりしていたが、突然互いが同時に切り込んで、片方が倒れたという。それで全てが終わった。刀で受けたり、払ったりということは無かったそうである。直心影流で、呼吸を大事にして、息を腹式で取り込む稽古が中心であるが、まさに真剣勝負の理にかなった稽古なのである。
証言が残っている切り合いで有名なのが、桜田門外の変であった。突然の事で井伊大老側は相当に面食らったらしく、皆興奮して刀の鍔で撃ち込みを凌ぎ、組み合ったままワイワイやっていた。そのときに、手の指や耳などが削ぎ落されたり、腕を落とされたり、凄惨な感じだったそうである。ある、剣の達人が守る側にいて、上段に構えて威圧していたが、数人の水戸浪士に取り囲まれ、一度にかかられて切られてしまった。
なかなか、時代劇のような殺陣にはならないんだそうで、あれは、ちゃんばらダンスにすぎないということだ。