検診で寿命は延びない PHP新書 岡田政彦著

「検診で寿命は延びない」 PHP新書 岡田政彦著

 我が国に普及している人間ドックだが、ヨーロッパでは行なわれていない。その成果に疑問がもたれ、無駄な医療費を膨らませるだけだという評価だからだ。アメリカでは総合検診という名目で行なわれ、日本はこれを真似したもの。しかし、アメリカは保険会社が自分のリスクを押さえ、商品競争で,総合検診をおまけに行なっているだけだ。がん検診が行なわれているが、これは何も無い健康な人ががんを見つける為に検査するようなものではない。ヨーロッパではこのような検診は放射線被爆や誤診のリスクから行なわれないし、実際、人間ドックを行なう日本と欧米とは癌の生存率も治療結果も差がないのである。我が国では効果をきちんと測定したものはない。そもそも、医療統計資料など無きに等しいお粗末な医療大国なのである。OECD諸国から、比較資料で日本の欄が空白で困るとクレームがついている。癌統計ですら平成17年の癌対策基本法で始まったばかりだ。また、この追跡調査を続けて行く事は対象者の協力が必要で我が国ではとても困難なことなのである。これまでは欧米のデータに依存していたのである。  

 結核は今新しい抗生物質の効かない種類が出現しているが、以前は大きく減少した。これは早期発見のためなのか、日本人の栄養状態が向上したからかはいまだに分かっていない。胃がんはドンドン減っている。これは食品がかつて、塩分濃度の高いものが多かったが、冷蔵庫の普及でこれが減少し、さらに、ピロリ菌が原因であることも分かったためである。また、子宮頸癌はほとんどウィルスが原因であると言い切っても良い。乳癌は早期に発見しても駄目な種類は再発する。中には癌ではない部類も多い。早期発見して小さいうちに切れば、再発して大きくなるのに時間がかかるから延命できるし、温存手術になったのはリンパ廓清するまで切っても再発が防げないからだ。本書は、世の中で早期発見が全ての切り札であり、人間ドックを受ければ癌にもならないかのような錯覚を与えていることに異論を挟んでいる。

 近藤医師の言うように、癌との戦いは未だに癌に軍配が上がる。医療の進歩は遅い。しかし、癌と癌もどきが区別できるようになり、また、早期に見つかったものは手術や抗がん剤、放射線で治癒するものもある。しかし、完全治癒にはならないものが殆どである。未だ、国民の二分の一が癌になり、3分の1がそれで亡くなっている。むしろ、人間ドックに毎年行く人は、行かない人より癌になる人が多いという説もある。「あの人は毎年人間ドックに行っていたのに癌で亡くなった」という話を聞いた事が誰でもある。不安になったら行くくらいでいい。

 「えっ?会社の人で癌が発見されて助かった人がいますよ!」という声もある。しかし、これは科学的とは言えない。そのうち、本当の癌だった人はその後亡くなっているはずだ。早期発見で助かった人は、かなり限られた種類の癌である。膵臓がん、膀胱癌、肺癌などは殆ど助からないが、延命の期間は延びるだろう。また、実際には悪性の癌では早期発見の効果が無かった人の方が遥かに多い。
早期発見は必ずしも無駄ではないが、無闇にすることは避けるべきである。

 人間ドックが行なわれるようになったのはそれなりに理由がある。かつて結核は企業にとっても貴著な従業員を損失し、職場の衛生にとっても粉ましく無かった。だから、検診で発見に務め、これには効果があったかもしれない。企業の労働安全衛生法による健康診断に取って代わられつつある。企業の人事部はこれが有効であるという企業の意思決定にもとづいて行なっているだけで、何も科学的なデータがあってのことではない。実際、医師がこの人間ドックを受けることは殆ど無いだろう。夫々の検査を自分で行なう事も出来るからだろうが、幾つかの検査には無駄なものもある。

 病気というのは、医師でも、本当はかなり進行しないとわからないものだ。そして、治療もそのような病状の患者に対して症状に応じて行なわれる。しかhし、近年、検査機器も技術の進歩し、これまでは見つからなかった異常も発見されるようになった。そこで、さらなる検査と、早期治療という名目で病院にされ、副作用のある薬を投与される。そえが原因で精神的にも、また、健康が侵されるという現象もある。それでは病気の予防をどうするかということになる。
 
 分かっている予防法で一番確実なのはタバコを禁止することである。タバコは放射線被ばく並みの発癌性があり、その他心臓病などの病気の原因でもある。飲酒とタバコはさらに悪く、発がん性を飲酒との結合で高める。一本半のタバコは1回のマンモグラフィー検査で発ガンする確率に等しいという調査結果がアメリカにある。一本半というのは凄いね。1日3本吸う人は毎日2回放射線の強いマンモグラフィー検診をやっている変な人なんですね。飲酒そのものには食道がん以外には発がん性は無い。タバコを止め、飲酒はほどほど、偏った食生活や暴飲暴食をしない。家族との団らんを大切にし、ストレスある仕事の方法は避ける事がはるかに効果があるのだ。まあ、出来っこないから、心配なんですよね。言うは易く行なうは難し。

 
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by katoujun2549 | 2011-04-15 21:02 | 書評 | Comments(0)