リビア政変

 リビアで政変が始まった。産油国だけに世界経済に与える影響が大きい。原油価格はふたたび100ドルの大台に達し,さらに上昇するという推測だ。日本は幸いに円高、ややダメージは少ないが、結局世界の影響を受ける。貨幣安を演出したEUは痛いだろう。産油国はにんまり。今回の騒動の源がフェイスブックということだから、アメリカの陰謀という見方もしたくなる。価格高騰は産油国にとって長期的には需要が減ってしまうから損ということで、OPEC諸国は増産とか備蓄分で対応するから、あたふたすることはない。しかし、産油国の富が、世界の投機マネーになり、食料資源などの投機につながり、それが石油の恩恵にあずかれない自国のインフレで食料も買えなくなる貧困層を直撃、このような事態を招くのである。

 ジャスミン革命によってチュニジアの独裁政権が倒れ、さらにエジプトのムバラク大統領の30年にわたる圧政に終止符が打たれて、これがさらに、リビア、バーレーンに飛び火し始めた。リビア東部はカダフィ体制から離反したという情報もあるが、実際は分からない。彼らは部族社会でこれがどう動くかが全く見えないからだ。これは大変だ。両方とも産油国で、これらの国の不安定な状態はアラブ首長国連邦やサウジアラビアの介入を招きかねない。エジプトのムバラクが海外で蓄財した資産は5兆円という。日本では考えられない国家の富の横領だ。パレスチナのアラファトでも、2600億円を越える蓄財をなしていた。一部の独裁者や王族が国家の富を独占する傾向は皆同じである。オマーンもイギリスから独立した国。昔はこちらも、海賊の基地があり、今のイエメンのような状態だった。イギリスがその海軍力で海賊を制圧し、支配下に置いたのである。イスラム世界では軍事的に支配することで地域の安定をはかることは歴史的な定石である。我々のように何でも平和に解決しようにも、歴史が違う。血を見なければ何事も決まらない地域の悲劇が予想される。遠くは慣れた地域であるが、軍事的緊張は日本に何の益ももたらさない。リビヤはいずれ内戦になるだろう。まことに残念であるが、早くカダフィ体制が崩壊し、平和が戻ることを祈るばかりである。

 これらの北アフリカ諸国とアラブとは宗教こそイスラムだが、民族的にはハム族系で、アラビア半島のセムとは違う。ところが、宗派面からはイランやイラクに多いシーア派が多数派であり、この連鎖がイスラエル包囲網を強める効果になる危険性があり、これを最も恐れるのがアメリカである。スンニー派の宗主はヨルダンのフセインである。フセインは第二次大戦前はアラビア半島の支配者であり、メッカを抱えていた。それがサウジアラビアに乗っ取られた。もう一つの名家ハーシム家ファイサルはイラクでクーデターによって滅亡した。中東支配は第二次大戦後のアメリカ世界戦略である。この一角が崩れるかどうかで,アメリカはアフガンから撤退してでも維持したい体制なのである。
 
 産油国であるロシアはチェチェンやアゼルバイジャンに波及しなければ当面は高みの見物で、石油の値上がりを楽しみにしていればいい。アメリカはこうした独裁政権を支えることで効率的な外交を進めることができ、石油資源の利権を獲得してきた。イギリスもフランスも同様だろう。フランスはムバラク政権に賄賂で取り込まれ、その見返りに一族に便宜を与えて来た。子弟の教育にはじまり、一族のパリやロンドンの別荘、社交界など、彼らの文化戦略で取り込んで来たのである。

 北アフリカの民衆は莫大な資源を一部の人間に支配され、極貧と因習の社会から抜け出すことができない。特に、そのしわ寄せが女性に寄せられている。例えば、北アフリカでは何百万人もの女性が割礼を強制されている。強制ではないと彼らは言うが、我々には想像の出来ない風習である。
 アメリカは目下アフガニスタンで金縛りだが、そろそろ、本当に重要な北アフリカの権益確保に乗り出さなければ、ベネズエラも反米政権を抱えている今日、その経済基盤も心もとなくなるだろう。リビアのカダフィとの関係改善がアメリカにとっては渡りに船であったが、これが揺らぐということである。これを機にアフガニスタンからの撤退が実現できればアメリカに取っては好都合だが、北アフリカに出兵ということは避けたいだろう。できれば、イスラエル支援のため、地中海に空母を集中させて、軍事的なプレゼンスを高めることになるだろう。イランはスエズ運河を艦隊が通過することで、イスラエルを圧迫したいので、これも封じることができるのである。
イスラエルを台風の眼として、北アフリカが変わり、アラビア半島も動けば、今後の21世紀の世界は大きく転換するかもしれない。

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by katoujun2549 | 2011-02-24 17:22 | 国際政治 | Comments(0)