エジプトの未来

エジプトの混乱は沈静化するが、自由な社会はほど遠い

 今回のような民衆蜂起がフェイスブックとかグーグルの情報力によって起きた事は否定できないだろう。閑な若者が多い程威力を発揮する。こうした、パーソナルなメディアがムスリム同胞団からさらにイスラム原理主義者に乗っ取られたりする危険はあるのだろうか。スエズ運河の安定とイスラエルのイスラム諸国からの安全を第一に考えるアメリカにとっては、民主化が全アラブに広がり、イスラエルが二正面作戦を強いられると、これまでのシナリオが全て崩壊してしまう。アメリカという国は民主主義を要求するが、これが単なる方便である事は明らかだ。露骨なダブルスタンダードである。自分の都合が良ければアラブの独裁国家は容認する。ここを中国から指摘されると弱い。とはいえ、民主化という潮流はこれまで圧政下にあった国民には魅力的であり、大きな流れである。これを圧迫する政治的手法は北朝鮮とか、ロシアにあるのだろう。リビアやイランも、こうした流れをどう調整するかが、国家の存亡に関わっている。
 
 エジプトはスエズ運河の莫大な利権、石油、綿花、遺跡観光などの資源を抱え、経済成長も6.5%を越えるのに、10%を越える失業率、低所得に庶民は喘いでいる。ところが、ムバラク一族は海外に5.8兆円といわれる資産を保有するという富のアンバランスが象徴的に存在している。石油資源等の富を一部が独占するという構図は、北アフリカからサウジアラビアに至る北アフリカ、中東共通の問題である。ムバラク政権下30年の間に人口は2倍になり、今や8400万人となり、かつ、24歳以下が53%という。この若い人々に失業が23%と集中し、都市部においてはさらに大きい。2010年7-9月の実質GDP成長率は、前年同期比5.5%。GDPの76.0%を占める民間最終消費支出が4.2%と好調、さらに固定資本形成が20.3%と大幅に増加。輸出、輸入はそれぞれ、8.6%、7.2%の伸び。産業別では、製造業(石油精製を除く、前年同期比6.2%)、建設(12.5%)、卸・小売(7.2%)、観光(12.1%)などが牽引。ところが、インフレが進み、昨年10月で13%を越え、食料品などが高騰、生活は苦しい。

 若者の失業に一番対応しやすいのが軍隊である。失業を吸収する仕組みとなるからである。今回も軍は大きな役割を果した。国家機能の中で最も組織論理と生活の安定した集団が軍である。かつて王制だった国が近代化するには軍事政権が重要な要素となる事が多い。第二次大戦に至るドイツや日本もその仲間である。ソビエトもそうだし、今中国が危険な軍事国家の道を歩んでいる。エジプトの大統領はナセル以来全て軍人である。今回の政権崩壊がエジプトを真の民主国家に発展する可能性はあまりないかもしれない。再びムバラクのような独裁者がさらに巧妙な仕組みをつくるだけではないか。フェイスブックもツイッターも政治構想力を持っているわけではない。いくらエルバラダイが民主的な思想を持っていようと、国内に権力基盤が無ければ理想は実現できない。単なる評論家でり、扇動者にすぎない。失業者を吸収して巨大化する軍隊こそがエジプトを変革する原動力である。これは歴史の定石である。チュニジアはいまだに混乱が続いている。こうした国では組織運営能力のある仕組みが乏しい。だから、個人の独裁者が生まれ易い。組織を支配する能力社を育てられるのは企業でもなければ学校でもない。宗教集団は海外からのテロリスト介入の危険に満ちている。国を治めることのできる唯一の組織が軍隊だというの
が不幸の源である。軍は組織をマネージできるが、人権や人々の自由からは最もほど遠い仕組みなのだ。


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by katoujun2549 | 2011-02-14 11:04 | 国際政治 | Comments(0)