病院がトヨタを超える日 北原茂美著 講談社α新書

「病院がトヨタを越える日」北原茂美 講談社α新書

 日本の医療法人には、投資や広告宣伝、海外進出は認められていない。著者はNPO法人、日本医療開発機構という団体を設立、これに加盟する医療関連産業(医療機器メーカー、医薬品、ドラッグストア、化粧品、人材派遣会社、商社、ゼネコンなどを組織し、手始めにカンボジャに医療産業を育成し、理想の医療システムを構築するという壮大な構想を抱いている。彼は、カンボジャに医大とその付属病院をつくることに情熱を注いでいる。日本の、トヨタを代表とする自動車産業に匹敵する、産業としてのポテンシャルを持っていると主張している。医療を産業として捕え直してみると、今日35兆円の市場であり、従業者は300万人、これは自動車産業の製造販売営業人口200万人を上回っている。さらに将来は50兆円を超える事業規模になるという。

 この北原氏の日本の医療に関する俯瞰的な概略説明はその全てを語り尽くしている。日本の医療は健康保険制度の制約の中で、フリーアクセス、ローコスト、ハイクオリティを実現しつつあったが、今やこれは過去の幻想となりつつある。医療の崩壊、医師不足、財政の行きづまり、そして高齢社会である。しかし、先進諸国よりもコストパフォーマンスがよく、世界最高の長寿国を達成した丁寧な日本の医療を再構築する機会を模索すべきである。株式会社による医療産業化がそのポイントである。病院経営からさらに医療の抱える様々な事業を株式会社で運営し、病院経営者はCEOによって経営されねばならない。アメリカでは病院長はMBAである。

 氏は、タイやインドのメディカルツーリズムをモデルとすることには慎重な姿勢である。むしろ、韓国が済州島を医療特区として、世界中から患者を呼び込もうと言う戦略を持っており、日本も巻き込まれるかもしれない。今は韓国は年間5万人を呼び込んでいるが、これは整形とかスキンケア美容であるし、タイの150万人を呼び込むメディカルツーリズムは自国の医療の崩壊につながることを指摘している。インドは最もその歴史もあり、シンガポールでも政府が振興しつつある、この医療産業の傾向は実はアラブやイギリス、アメリカ、スゥエーデンの医療制度の失敗から来ていることも明らかにしている。彼は、こうした既存の医療産業の国際化に対して、日本独自の形を提言している。それはカンボジャをモデルに、新しい日本的医療モデルを構築し、これを日本に持ち込むというのである。

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by katoujun2549 | 2011-01-30 20:19 | 書評 | Comments(0)