「病気にならない脳の習慣」 生田 哲著 PHP新書

 1.病いは気から プラシーボ効果
 
 人間には自然治癒能力がある。また、心と免疫力には強い関係があることは以前から分っている。先般、ホメオパシーが医学的に根拠が無いことが医学会で公表された。これは現代医学で治療すべき患者が、ホメオパシーにこだわった為に重体化したことがきっかけである。ホメオパシーが、全く何の効果もないかというと、無いとは言えない。たしかに、薬効は無いかもしれないが、人間は暗示によって身体の状態が変わることがあるので、これをプラセーボ効果と言って、薬理試験でも統計的解析の要素となっている。

 人間笑って毎日暮らすことが出来れば言う事ないだろう。しかし、そうはならない、様々なストレスが我々を取り巻いている。また、全て病気がストレスを原因とし、精神力で解消すれば何でも良くなるなら医者も楽か、失業するだろう。しかし、プラセーボ効果というのは長続きしない。幸福は人から病気を守る効果がある。しかし、不幸は突然襲ってくるのだ。不幸は病気ばかりではない。リストラ、離婚、親との死別などだ。これらは強い精神的ストレスになる。そして病気の原因にもなる。

2.ストレスや精神と身体の関係を科学的に立証するのは難しい

 人間にはホメオスタシスといって、身体のバランスを形成する機能が脳ー内分泌系ー免疫系が三位一体となって機能する精巧な仕組みを持っている。風邪をひいた時に熱を出す事もその一つだ。ウィルスは熱に弱いため、発熱によってウイルスを攻撃する仕組みがあるのだ。これらはホルモンとか、サイトカイン、コルチゾールなどの伝達物質が働き、脳や副腎それぞれの分泌を促している。しかし、それが、科学的にどのように作用しているかは、ネズミ等の動物実験で立証するしかない。人間を生体解剖しなければ数値は掴めない。だから、現代医学ではこの領域が最も苦手なのだ。統計的に処理する上で、数量や複合的な原因によるバイアスがかかり易い。例えば、マラソン選手など、毎週96㎞走る選手は32㎞走る選手より2倍風邪を引き易いという研究結果があるが、これも医学的には何人を調査したかを問われるだろう。ストレスが引き金になる病気は、風邪、心臓疾患や脳疾患などの血管障害、癌、精神障害、パーキンソン病、アルツハイマーなどがストレスとの関係性が高い。しかし、医師として、病気の原因を説明することは難しい。どのストレスが個々の病気との関係につながるかが判明しない。育児ストレスもあれば、怪我のストレスもある。個人差も大きいのである。これは何でもストレスのせいとするならば、いい加減だな説明だ。あらゆる病気は関係しているともしていないとも言えない。説明していないと同じである。これはむしろ医師に頼ることではなく、患者自身が努力する事で身体の状態を改善できる要素なのだ。ストレスの原因は何かを理解できるのは自分自身であり、それを改善出来る人も自分である。例えば、タバコをやめるとかだ。医師に言われてタバコを止める人は少ないのだが。

3.脳との関係

 ストレスー恐怖、仕事や人間関係の軋轢などは脳の扁桃体や視床下部に作用し、コルチゾールの分泌に作用する。コルチゾールは海馬の働きを左右する。視床下部から脳下垂体に作用し、副腎からコルチゾールを分泌させるのである。また、免疫系にも作用する。また、危険を察知するとアドレナリンが放出され、これが不足したりするとコルチゾールが補うといった補完関係がある。そして、これらはリンパ系に作用し、人間の抵抗力にも大きな影響を与えるから、因果関係から見て、強いストレスに曝されると、癌とか、血管の収縮などにも影響するであろうことは想像がつく。しかし、癌というのは発生の仕組みが多様であって、免疫で制御できる部分は一部である。サイトカインのインターフェロンとか、最近は免疫療法も生まれているが残念なことに常に決定的な効果があるわけではない。癌に効く健康食品とか、療法というのは、僅かに効く人もいるのだろうが、殆どは効果はない。プラセーボという意味である。何にでも効くという療法は医学的には何も効かないということでもある。

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by katoujun2549 | 2010-10-25 10:07 | 書評 | Comments(0)