「難治がんと戦う」 足立倫行著 新潮新書

大阪府立成人病センターの医師へのインタビューをもとに編集されている。
今や国民の半分が人生のどこかで癌に罹る。癌で死ぬ人は30%。3年前にようやく、癌基本法が制定され、地域癌登録が制度化された。先進諸国に比べて、何で今頃という感じがあるが、とにかくスタートしたのだ。しかし、大阪府では1962年から癌登録事業を薦めて来た。ところが、今なお地域がん登録事業に取り組んでいる自治体は35でしかない。特に、東京都はまだである。これは東京という1,300万人の人口と、880万人の差ということもあるし、東京との場合、埼玉、千葉、神奈川から県をまたがって治療にくるから、地域統計を取るのが難しいという事情もある。しかし、癌の罹患率、5年目、10年目の相対生存率、どんな性の人が、そのステージで癌に罹り、どう診断され、治療されたか。これが地域毎に統計的に整理されなければ、医師は正確な判断を下せないだろう。大阪府立成人病センターはこの大阪の癌統計事業の中核としてデータの蓄積を行なって来た。近年、胃がんで死ぬ人は減っている。これが、癌になる人が減ったのか、早期発見やピロリ菌除去によるのか、手術の成果なのかは統計によらなければ分らないだろう。実際、大阪府の統計では癌に罹る人が減っているのである。これは冷蔵庫の普及により、長い間に塩分の多い食品の摂取量が減った事の影響が大きいと言う。これは世界的な傾向なのである。東京では結局、大きな病院で、癌毎の治癒率の高い病院を選ぶしかないだろう。胃がんに関しては、病院格差が下がっているそうである。国を挙げてがんと戦うといってもこうしたデータもなく何を戦うのだろう。相手の戦力や自分達の成果も分らないまま、国が何を出来るのか。この国之の政府のやる事は泥縄式だ。
この本では、難治癌といわれるステージ、膵臓、胃がん、乳癌、白血病、肺がん、子宮がんなどの府立病院の医師達の奮闘による治療の歴史と成果が語られる。癌治療もここまできたのかと思わせてくれる。心強いルポである。決して、先端医療機器や技術の紹介にとどまらず、長い医師達の奮闘の結果が語られ散ると言う点、著者のルポの力量であろう。
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by katoujun2549 | 2010-08-19 15:39 | 書評 | Comments(0)