日銀貴族が国を滅ぼす 上念 司著 光文社新書

 日銀の白川総裁が悪者になっている。年収3492万円で金融政策を景気に結びつけない総裁への批判である。確かに日銀も今日のデフレに対して責任がある。というより、デフレを結果的に誘導している。資金供給量が足りないのだ。著者によると30兆円にのぼるという。それは日本の国債発行残高が800兆円を超え、国が債務超過に陥るという危険をお題目に、金融政策をサボって来たからだと言う。日本破産のストーリーは次の6ポイントだ。

①日本の巨額な国債は郵貯や銀行によって無理矢理買い支えられている。
②国債残高が大きくなり過ぎて返せないと考えると誰かが市場で国債を売り浴びせてくるだろう。
③売り浴びせが始まると市場がパニックになり、国債価格が大暴落
④国債が暴落するので金利が急上昇
⑤ハイパーインフレ
⑥日本経済の崩壊

 という筋道。日銀はこれをハルマゲドン、末法思想として貨幣供給を増やそうとしない。日本のバランスシートは債務超過寸前というのがマスコミや日銀の主張だ。しかし、これは金融政策、日銀の貨幣供給で防止できると言う。国のバランスシートを企業会計にあてはめてみると、資産部分、非金融資産491兆円、現金・有価証券504兆円で、負債は984兆円もあり、正味資産は11兆円しかないため、債務超過寸前という考えだ。非金融資産のうち、道路や公園、ダムなどは売却できないから、実際は返済資金ではないという。これは企業会計原則の悪用である。ところが、国には無形資産がある。日本には徴税能力が50兆円/年あり、これが資産評価されていない。これを無視してギリシャやアルゼンチンと比較すること自体無理がある。さらに貨幣発行権も入れると、我が国は資産として50兆円の徴税権をベーズに金利1.5%で割り戻すと、3,333兆円、さらに厳しい条件で金利が3%、行政サービスに40兆円使ってしまい、のころ10兆円しか利払いにまわせないとしても333兆円の資産を加えなければならない。これを「だんまり」して危機だけを叫んで金融政策を実行しない日銀が、その独立性を盾に不作為の作為を行っている。
 アルゼンチンの破綻やギリシャの例をマスコミはその差を語らずに恐怖感を煽るような形で喧伝し、日銀もそうした末世的な見方にこだわっている。日本の中央銀行は戦後長い間1ドル360円の固定相場に保護され、国際的な金融情勢や、経済の活性化に責任ある意思決定を行うだけの機能や情報にもとづく意志決定を行わない、お役所としてよくある不作為の作為を行って来たようにもみえる。
 中央銀行の独立性は重要である。我が国は司法の独立も堅固に守ってきたが、時として、我々の無知をいいことに時として過剰な政治介入をしている。司法よりも権限の弱い日銀には政治家も、財務官僚も虎視眈々と日銀に介入し縄張りをのばそうとしてきた。今、政治家が最も支配したいのが日銀だ。しかし、中央銀行が支配されたとき、ろくなことは起きない。かつて、ドイツがシャハトを利用してナチスの政策を成功させ、戦時経済に突入し、これに反対したシャハトを追放して、さらにはゲーリングが戦争に突入する時にドイツ帝国銀行を我がものにし、財政出動により軍事費を青天井にした。司法も握ったナチスは横暴の限りを尽くした。ソ連のスターリンも警察権力を一手に握り、粛清、恐怖政治を行って、国民の不幸を招いた。その反省から、中央銀行は独立したそんざいでなければならない。日本は高度成長期においては、大蔵省に支配されたが例のモフタンとか、ノーパンしゃぶしゃぶ事件以来手を出せなくなった。その結果が日銀の専横を招いているという。
 著者がいうように日銀法まで改正して、かつ、中央銀行の独立性を損なってまで清治の介入を認める事態なのだろうか。無能、又は、アメリカの言いなりになっている日銀総裁を更迭すれば済むむことではないのだろうか。
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by katoujun2549 | 2010-07-23 16:37 | 書評 | Comments(0)