教科書問題

 4月からの国の施策で画期的なことが始まる。高校の無償化と子育て支援金、教科書の改訂である。結論から言えば、個人に支援金が給付されるというのはこれまでの政策には無かったことだ。かつて、定額給付金などバラマキ的な景気刺激策として効果が疑問視されたものは2度程あった。しかし、今回は、世帯中心ではあるが、国民に現金や具体的な負担軽減措置が行われるということで、この効果は消費にも速攻効果が期待される。これまで現金給付を避けてきた日本官僚による提案では絶対に出てこない方法だ。農業に関しては今回は言及を避ける。

 先は教科書の内容が豊富になった。これまでの薄っぺらい教科書では何も理解できない。円周率が3.14も復活した。3では何も出てこず、算数?数学にならない。小学生に算数という概念自体自分には良くわからない。子供が幼稚で頭が悪いという前提がそのような低レベルの発想になるのだろう。あの鶴亀算とか、植木算、追い越し算のような数とか時間計算が何の意味があるのか全く無意味だ。あれはあれで、教えるのも、問題を解くのも結構難しい。

 そもそも、教科書というのは万能ではない。一種の白書のようなもので、これで何かが分ると思わない方がよい。時々、自分は教科書の勉強だけで東大に入ったという嘘っぱちを言う東大生がいるが、こんな出鱈目を信じる人は誰もいない。教科書しか勉強しなかったために東大はおろか、何処にも入れない学生は山ほどいるのだ。勿論、入学試験の主なものは教科書から出るが、その程度が問題だ。最初に円周率の話が出たが、この円周率を算出する原理を証明する問題が東大の入試に出ている。だから、小学校の円周率の事が理解できれば東大に入れるという訳はない。教科書の内容を理解するにはその背景を含め、膨大な情報が必要だ。少なくとも、学校の授業を100%理解するには、自宅学習とか、塾の学習が無ければ無理なのだ。はっきり言って、教科書の内容を授業できちんと教えられる先生は殆どいない。先生が無能というのではなく、そこに織り込まれている内容の奥行きが深いのである。そして、教科書の内容を簡単にすればする程、抽象的で理解からは遠ざかる。そのことを前提に学習計画を作れる家庭というのは相当に教育程度が高くなければ無理なのだ。
 高校の生物学教科書を見ると、例えばDNAの構造、セントラルドグマの事が書かれている。しかし、それを暗記するだけでは理解できない。人間は何故という疑問が解決されないと理解できない。だから、これを解決するには最低、本2冊は読まないと分らないほどの内容が教科書には書かれている。この内容を説明するとmoreに補足説明したのでご参照いただきたい。この説明ですんなり理解できる人は少ないだろう。これだけの基礎知識を前提に初めて理解できる事だという事だ。

 従って何が起きるかというと、家庭学習の負担が増すという事だ。我が国の子供は、塾には行くが、家庭で勉強しないので有名だ。勉強というのは自分で目標を持って行うもので、受動的なものではない。塾も学校の授業も、先生から教えてもらおうと構えている限りは学習効果はないのだ。今回の個人の教育負担の軽減措置が塾や模擬テストに流れるのではなく、家庭学習の機会増加に回らなければ日本の教育は良くならない。何を言いたいかというと、この給付金を機会に、自主的な勉強の意欲を増し、その余裕を家庭の中で子供が勉強する環境を向上させる方法は何かを、学校も、受給世帯も考えるという事だ。一流校受験において、私立中学校や高校、さらに大学でも、共通しているのは、家庭が混乱している場合は何をやっても子供は勉強の意欲を失うから目標達成は不可能なのだ。
 



 DNAが遺伝子を構成し、その二重螺旋構造において塩基配列の転写コピーが行われている事を、クリックとワトソンが1958年に発表して以来、この仕組みは不動の地位を得て、セントラルドグマと言われている。しかし、その後、次々とこの構造を支える仕組みが発見されて、そのメカニズムは益々複雑で、神秘性を増している。遺伝子の情報がmRNAに転写される時、多くの、実に複雑な酵素の作用が働き、たんぱく質の形成に至るまでの関係物質の役割が分れば分る程驚きは増すばかりである。RNAポリメラ–ゼという酵素がその転写活動に関わっており、このメカニズムが実に複雑である。
 転写は基本転写因子(transcription factor)TFⅡA、B、D、F、E、Hが転写の作業にかかわり、更にこれらを「メディエーター」という30種類ものたんぱく質がこれに作用しながらmRNAの複写を支えている。mRNAの転写には単純化して整理すると、次の段階を経たシナリオが用意されている。RNAポリメラーゼはDNAに絡み付き、二重螺旋を切り離して転写を行い、転写された情報の鎖を鉋のように切り離して行く。DNAはすぐに復元される。これは①転写前複合体の形成(プロモーター:転写のきっかけづくり役、RNAポリメラーゼ呼び込み役、転写開始促進役 ②RNAポリメラーゼⅡによるmRNA合成開始 ③スプライソゾーム形成(エクソンの集約とイントロンのラリアット化)④プロモーターのリセット⑤転写伸張と⑥7-メチルグアニル酸による先端部キャップ取り付け ⑦RNAポリメラーゼⅡのC末端ドメインの尾尻CTD(YSPTSPS×52)におけるポリA付加因子による200個のA,ポリA結合たんぱく質の結合 といった流れである。終了するとこれが核から出てリボゾーム上でたんぱく質を合成するのである。ところが、これとは全く逆の現象も発見された。レトロウィルスによるRNAによるDNAの逆転写である。これはDNAポリメラーゼの特異形であり、エイズウィルスがこれにあたる。レトロウィルスは感染した宿主の細胞の中で自身のRNAからDNAを合成して宿主のDNAに組み込んでしまう。この発見チームのハワードテミンとディビッドボルチモアは75年にノーベル生理医学賞を受賞した。

mRNAからtRNA、さらにミトコンドリアのmtRNAなど、たんぱく質を作る転写機能がますます複雑な機能を持っていることがわかってきた。さらに、RNAに結合してコドンという仕組みでたんぱく質を製造して行くが、そこにも、また様々な酵素が作業をしている。遺伝子の複雑な動きは、まさに誰かがドラマの筋書きを書いてあるからできているように見える。それは結果論かもしれない。しかし、こうしたメカニズムが30億年という長い時間をかければ、偶然の積み重ねで可能であろうか。進化論とか、自然淘汰といった単純な論理でこれらが可能になるとは到底思えない。神秘の彼方を全て神のせいにするのは思考停止だが、そうならざるを得ない領域は必ずあるのだ。神の計画で作られた生命の仕組みと言わざるを得ない。
[PR]
by katoujun2549 | 2010-04-02 12:12 | 国際政治 | Comments(0)